GE Smart Mail vol.135


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 一般X線撮影装置 お客様の声
 Discovery XR656を用いた全脊椎撮影の工夫
fig07 東海大学医学部付属八王子病院
由地 良太郎 様
 【はじめに】

当院は、八王子市の誘致を受け、八王子市および南多摩地域の住民の医療を担う事を目的に2002年に開院された総合病院であり、八王子市が定める「八王子中核病院」にも位置づけられています。現在は、31科の診療科目を配置した500床の病床数を有し、24時間の二次救急体制を整え、東京都災害拠点病院、東京DMAT指定医療機関です。

開院当初より、電子カルテシステムを導入し、CRによるフィルムレス運用を行っていましたが、2012年からCRに代わり、GE社製の間接変換型FPDシステムである「Discovery XR656」を導入しました。当院は外来用一般撮影室が3部屋ありますが、すべて 「Discovery XR656」であり、外来一般撮影の全てを行っています。

FPDシステムに移行し、運用が大幅に変更されたのは全脊椎撮影です。以前はCRによる撮影を行っていましたが、FPDによる全脊椎撮影は初めてでしたので、撮影する際に工夫した点をご紹介させて頂きます。

 【「Discovery XR656」による全脊椎撮影の方法】

以前の全脊椎撮影はIPが複数枚セットされた長尺カセッテがあったため、撮影方法に関しては特に苦慮する事がありませんでしたが、FPDになると一回の曝射で全脊椎を収めることができないため複数回の曝射が必要になります。FPDによる全脊椎撮影は各メーカーから様々な方法が用いられていますが、「Discovery XR656」はX線菅回転方式を用いており、検出器から目標物の距離、撮影上端、撮影下端を設定するだけで撮影が可能です(Fig.1)。

Fig.1 全脊椎撮影の設定方法

「Discovery XR656」は一体型のシステムであるため、SIDと上記の情報から目標物の長さを推定し、撮影長を決定します。撮影枚数は撮影長によって異なり、合成のために必要なオーバーラップ部分は5cm程度と固定です(Fig.2)。撮影時間は枚数によって異なりますが、全脊椎撮影はほとんどが3枚撮影になり約10秒です。

Fig.2 全脊椎撮影の分割方法

FPDによる全脊椎撮影の場合、撮影された複数枚の画像を合成する必要がありますが「Discovery XR656」の場合、オーバーラップさせた部分のラインプロファイルを解析し、最も一致した部分で合成を行います(Fig.3)。合成は撮影後に自動で行われ、合成部分に濃度ムラがない画像を約10秒で得る事ができます。

Fig.3 全脊椎撮影のヒストグラム解析を用いた合成方法

 【全脊椎撮影時の注意点】

全脊椎撮影時には手すりに捕まらせてしまうと、余計な力がかかり自然な状態を把握することができないため、自然位の状態で撮影する必要があります。当院では立位正面は両手を体の横の置いて「気をつけ」の状態にし、立位側面は両手を交差させて対側の肘を触る程度にし、肘は極力上げないようにしています。

しかし、FPDによる全脊椎撮影は複数枚撮影しているため、撮影時間が長くなり、撮影中に患者さんが動いてしまうことがあります。全脊椎撮影で横方向へのズレは角度計測や距離測定に影響がでるため、合成画像にズレがないか注意が必要です。

 【全脊椎撮影時の補助具と工夫点】

「Discovery XR656」では合成の際、ラインプロファイル解析を用いているため、多少の動きは補正して合成してくれます。しかし、合成を失敗することもあるので、ズレが動きによるものなのか見極める必要があります。

当院で用いている方法は、まず地面に対して垂直な位置がわかるように銅線を垂らします(Fig.4)。次に合成の際に誤った位置で合成していないか確認するために、患者さんに了承を得て、定規を患者さんの身体に貼っています。貼る位置は肩部が上縁になるように貼るとオーバーラップする部分に定規が入るようになります。側面の場合、手が動いてしまうことがあるので無理に肘を上げず、肩部から腹側にかけて貼ります。(Fig.5)

Fig.4 全脊椎撮影時の銅線の位置                     Fig.5 全脊椎撮影時の撮影体位と定規の位置

定規の位置は測定に必要な部分にかからないようにし、身体の中にいれることで定規が飛んでしまうのを防ぐことができます(Fig.6)。また、合成画像の銅線と定規を見れば、患者さんが動いたかどうか知ることができます。銅線がまっすぐ繋がっていて定規がズレている場合は、患者さんの動きを合成で補正できなかったことが予想でき、銅線がズレていて定規が合っている場合は、患者さんの動きを合成で補正できたことが予想できます。

Fig.6 全脊椎撮影画像と定規の位置
Fig.7 銅線と定規のズレ
上図:銅線は一致、定規がズレ→動きの補正失敗
下図:銅線がズレ、定規が一致→動きの補正成功

 【おわりに】

「Discovery XR656」による全脊椎撮影の運用の方法を紹介させていただきました。
当院では小児の特発性側彎症より脊柱管狭窄症の患者さんに対しての全脊椎撮影の方が多く、普段は車椅子で杖なしでは立つこともできない患者さんの撮影には苦労しています。その場合はまず自然位になってもらい、撮影時は数人で自然位を保てるように支えて撮影しています。

近年、脊椎矢状面バランスの重要性が高く、全脊椎撮影の有用性は高い。主な臨床目的は計測であるため、画像処理を工夫すれば撮影線量を減らすことが可能な撮影だと考えています。今後、検討を重ねさらなる被ばく線量の低減につなげていきたいと考えています。

薬事情報

※お客様の使用経験に基づく記載です。仕様値として保証するものではありません。

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