GE Smart Mail vol.135


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 核医学検査装置カスタマーボイス
 ドパミントランスポーターシンチグラフィに対する解析方法
 -DaTQUANTの使用経験-

松江赤十字病院 放射線科部 陰山 真吾 様

(松江赤十字病院 外観)

ドパミントランスポーターシンチグラフィの診断方法は大きく分けて視覚的評価と定量的評価がある。視覚的評価はSPECT画像から線条体の集積を見た目で評価を行う。一方、定量的評価は線条体にバックグラウンドと比べてどれだけ集積しているか、そのカウント比を数値として求め評価を行う。その定量的評価の解析方法は国内多くの施設で用いられているアプリケーション(以下、アプリケーションA)と当院が導入したGEのDaTQUANTがある。今回DaTQUANTの解析方法を説明し、画像再構成時の傾きが解析結果に与える影響といった検討や実際の症例を交えて、その使用経験を述べる。

 【DaTQUANTの解析方法】

DaTQUANTの解析方法を、解析ROI、計算式、解析過程、データベースと比較可能な点をアプリケーションAと比較しながら説明する。

・解析ROIおよび計算式の違い
解析ROIのうち線条体ROIの設定として、アプリケーションAは線条体だけでなく線条体の周りを含めて広めの設定となる。一方、DaTQUANTはアプリケーションAと異なり、線条体の中を尾状核部、被殻の前部と後部の三か所に分かれた設定となる。したがって線条体全体の定量値だけでなく、尾状核部や被殻部も算出可能となり、その各値が算出可能な点が重要となる。またバックグランドROIの設定として、アプリケーションAは線条体ROIの箇所を除いた脳全体を、DaTQUANTは後頭葉をバックグランドとして解析が行われる。(図.1)

図.1 解析ROIの違い

計算式については、アプリケーションAは特異的結合濃度と非特異的結合濃度を除して算出する。つまり線条体とバックグラインドの濃度比を見ている。一方DaTQUANTは線条体の各ROI内の平均カウントからバックグランドを減算、バックグランドで除して算出している。こちらは単純なカウント比を見ている。(図.2)

図.2 計算式の違い

・解析過程の違い
解析はSPECT撮像した投影データに対して、まず画像再構成を行う。その際矢状断、冠状断、横断の三軸全てを用いて、頭部の傾きを補正した横断像を作成する。アプリケーションAは、その後ROIの設定、VOIの位置設定、頭部輪郭設定等を全て手動にて行う。一方DaTQUANTは、投影データに対して頭部の傾きを補正した横断像を作成するところまではアプリケーションAと同じであるが、(図.3)

図.3 解析過程の違い

その後のROI設定等の解析は全て自動で行う。よって自動解析であるため再現性に優れている。実際には頭部の傾き補正した横断像のデータを用いて、30秒~40秒程度で自動的に解析が完了する。(図.4)(図.5)

図.4 DaTQUANTの解析過程

図.5 DatQUANTの解析結果

DaTQUANT内での処理は、ROI設定された標準脳を有しており、撮像した患者データをその標準脳に合わせ込むことでROI設定を自動的に行う。また標準脳に合わせ込む際に頭部の傾きの補正も同時に行う。そのため、たとえ画像再構成の際に頭部の傾きを補正していなくてもある程度適切な解析が行われる。

・データベースと比較可能
DaTQUANTの特長にデータベースと比較可能な点がある。それは尾状核部、被殻の前部、後部の三箇所に分かれたROIに合わせて、正常データベースをもとに集積差の標準偏差をスケール化しカラー表示する(図.6)。よって青色になればなるほど正常との集積差が小さい、つまり集積低下はわずかである。一方、赤くなればなるほど正常との集積差が大きい、つまり集積低下を示している。これらカラー表示することでデータベースとの集積差が視覚的に分かりやすい。ただ注意点はデータベースと比較するためSPECTの収集条件や画像再構成条件をデータベースのそれと同様にする点である。

図.6 DaTQUANT データベースとの比較

DaTQUANTの特長は三点あり、解析ROIが尾状核部、被殻の前後部と分かれている点、標準脳を用いた自動解析が可能な点、データベースと比較が可能な点となる。

 【画像再構成時の傾きの影響についての検討】

DaTQUANTによる解析時の画像再構成時の傾きが解析結果に与える影響について検討を行った。使用した臨床データは線条体の集積が正常、軽度低下(被殻でやや集積低下)、低下を示した3症例を用いた。検討方法は各データに対して画像再構成時の頭部の傾き補正の際に0度を基準に矢状断面のみ+5度から+15度、-5度から-15度と各5度ずつ変化させて画像再構成後、DaTQUANTにて解析した。0°における値との各ROIの変化率を求めた。(図.7)

図.7 方法1

ROI尾状核部はどの症例でも変化率は小さかった。一方、ROI被殻前部になると補正角度が大きくなるにつれて正常例に比べ軽度低下例で変化率が大きくなり、さらに低下例で変化率が大きくなった。またROI被殻後部はさらに変化率が大きくなり、特に低下例での変化率は著しく大きくなった。(図.8)

図.8 結果1

低下例は矢状断面のみ傾きを変えるだけで、変化率が大きくなることが示されたため、正常例、軽度低下例についてはさらに追加検討を行った。検討方法は正常例と軽度低下例に対して画像再構成の頭部の傾き補正の際に0度を基準に矢状断面だけでなくて、冠状断面と横断面も5°から15°、-5°から-15°と各5度ずつ変化させて画像再構成後、DaTQUANTにて解析し同様の変化率を求めた。(図.9)

図.9 方法2

ROI尾状核部は角度を変化させても正常例、軽度低下例ともに変化率は小さかった。一方ROI被殻前部や被殻後部については補正角度が大きくなるにつれて正常例に比べ軽度低下例で変化率が大きくなった。(図.10)

図.10 結果2

今回、DaTQUANTによる解析時の画像再構成時の傾きが解析結果に与える影響について検討を行った。使用したデータの中で正常例は変化率が小さく、軽度低下例や低下例と集積低下がするほど変化率が大きくなった。その中でもROI被殻後部や前部において変化率が大きくなった。この理由は集積低下に伴ってROI内のカウントが少なくなると、画像再構成時の傾きの影響によりROI内の集積誤差が大きくなり、変化率が大きくなったと考えられた。よって、自動的に頭部の傾き補正を行うDaTQUANTにおいても、解析の際は頭部の傾き補正は必要である。特に軽度低下例ではわずかな集積変化をとらえる必要があるため、傾き補正が重要になると考えられた。

 【症例の紹介】

症例1 左右差のある症例
被殻の集積が若干低下した軽度低下例である。左右の集積差にも違いがみられ、左側に比べて右側で集積低下を示した。DaTQUANT(定量値)の結果を見ると、左側に比べ右側で集積低下していることが分かる。さらにデータベースと比較した結果を見ると、尾状核は正常集積で被殻は集積低下という結果や、左側に比べ右側で低下している結果がSPECT画像の視覚的評価と適合し、しかもカラー表示で視覚的にわかりやすい。(図.11)

図.11 症例1 左右差のある症例

症例2 解析ROIが影響した例
アプリケーションAの結果は約4.3を示し、当院の条件では正常と判断した。一方、DaTQUANTの結果は線条体全体で約1.1を示し軽度集積低下と判断した。さらにDaTQUANTのROI別の結果は尾状核において正常、一方被殻は集積低下であった。アプリケーションAとDaTQUANT とで結果に違いが生じた症例である。SPECT画像を見ると尾状核のみ強い集積を示した症例であった。(図.12)

図.12 症例2 解析ROIが影響した症例

定量的評価の際の解析方法において、結果に違いが生じた要因は解析ROIの違いが影響したと考えられた。(図.13)線条体ROIの設定において、アプリケーションAは線条体の周りを含めて広めに設定する。一方、DaTQUANTは線条体の中を尾状核部、被殻の前部と後部の三か所に分かれた設定となる。よって尾状核の集積が非常に高い場合、アプリケーションAはあたかも線条体の集積は正常であるかのような結果となった。一方、DaTQUANTは細かく分かれているため尾状核部は正常値を示すが、被殻前後部は集積低下を示した。つまりROIが細かく分かれているDaTQUANTは適確に線条体部の定量値が算出可能となる。

図.13 解析ROIの違いによる影響

症例提示をまとめると、データベースと比較可能なDaTQUANT はSPECT画像の視覚的評価と適合していた。特に軽度低下例といったわずかな集積の変化を捉えるにあたり、診断の補助にDaTQUANTが有用であると考えられた。実際に当院において読影医は始めにSPECTの画像を視覚的に評価し、加えてDaTQUANTの結果と照らし合わせることでより確信を得た読影につながると述べている。

 最後にDaTQUANTの特長のまとめ

・解析ROIが尾状核、被殻(前後)に分かれている点
→適確に線条体部の定量値を算出可能。
・標準脳を用いた自動解析が可能な点
→かなり精度は良いが傾きの調整は必要。再現性の面に優れる。
・データベースと比較可能な点
→SPECT画像の視覚的評価と適合し、診断の補助となる。

※お客様の使用経験に基づく記載です。仕様値として保証するものではありません。

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