GE Smart Mail vol.136


Voice and Image
 核医学検査装置カスタマーボイス
 Optima NM/CT 640の使用経験






 独立行政法人 地域医療機能推進機構
 徳山中央病院
 福本 正理 先生

 【導入の経緯】

日本アイソトープ協会の調べによると全国の昨年SPECT装置は1099台、SPECT/CTは122台が稼働しています。SPECT装置では機能画像のみですが、SPECT/CTではSPECTの機能情報とCTの形態情報のFusionが可能であり診断能の向上が期待されます。当院ではSPECT単体装置のMillennium VGを2001年に導入し14年間使用しました。装置の旧式化に伴い、機能、形態情報の重ね合せの可能なSPECT/CT装置を導入することになりました。定量評価のできるSPECT/CTの中でもコストパフォーマンスの良いGE社製 Optima NM/CT 640を導入し今年の3月から稼働しています。

 【Millennium VG】

Millennium VGの廃棄の前に普段行うことのできない実験をいくつか行いました。左がコリメータにドライバーでTCH(Tokuyama central hospital)となぞった写真で右が収集した画像です。(図I)

 図I

傷の入ったコリメータにガンマ線が入りにくくなり画像にTCHと抜けているのが見えているのがわかると思います。二つ目が左がコリメータの検出器一つにドライバーで傷をつけた写真で、右が収集した画像です(図II)

 図II

画像の中央部に抜けが有るのがわかると思います。もし臨床でこのようなことが有れば、誤診につながるかもしれません。日頃からコリメータの扱いに注意し、日常点検などで欠損像などが無いか確認することが大切であると感じました。最後にNaIシンチレータに亀裂を入れたときの画像です。(図III)

 図III

亀裂が入ると画像に大きな欠損像ができました。NaIシンチレータは温度や衝撃に弱いと思っていましたが、保冷剤を長時間あてても、たたいても変化は無く、鉛で力強くたたかないと亀裂が入らず、意外と温度や衝撃には強いと言うことがわかりました。
当院のMillennium VGの最後の写真です。(図IV)

 図IV

Millennium VGの搬出風景です。(図V)

 図V

少しづつ分解しクレーンで引き上げ、トラックに積まれあっという間に搬出されました。Millennium VGの無くなった部屋は床、壁、電源の工事が行われて約一週間後に新しく導入したOptima NM/CT 640が搬入されました。

 【Optima NM/CT 640】

この写真がOptima NM/CT 640の搬入の風景です。(図VI)

 図VI

ガンマカメラ、CTガントリとパーツごとに運んで行き、少しずつ組立てて行きました。完成したOptima NM/CT 640です。(図VII)

 図VII

従来の装置比べて短いPMTを使用しており、カメラの厚みが薄くなりました。また新たなシステムの採用によりMillennium VGよりも画質が向上しています。検査時間の短縮ができます。多軸駆動による素早く軽快なガントリの稼働によりコリメータの交換やモードの切り替えが素早く行えます、ポジショニングにかかる時間を短縮できます。ベッドサイドにあるテーブルルーラを使うことにより骨シンチなどの撮影で撮影位置を入力することができ、自動でベッドが動いてくれます。また心筋シンチなどのSPECT撮影時にはEarly Scanのガントリの回転位置や回転半径を記憶することができ、Delayed Scanでのポジショニングを簡便に済ますことができます。多軸駆動によりHモードからLモードに変わる画面をご覧ください。(図VIII)

 図VIII

以前使用していたMillennium VGでは回転・上昇・横移動、コリメータのモード変換が別々に動いていました。時間もかかっていました。一方、Optima NM/CT 640は回転しながら、上昇し、横移動、コリメータのモードも変わっています。Millennium VGではコリメータの交換に5分以上かかっていましたが、今では2~3分で終るため検査間の時間のロスが少なくなりました。

Optima NM/CT 640に搭載されているCTについて紹介します。低線量、高画質、高速スキャンを融合した吸収補正用のCTを搭載したSPECT装置です。最大管電流を30mAに抑え、CTDI 約2mSvと低被ばく。1秒で一回転のヘリカルスキャンが可能です。当院ではPET/CTにDiscovery ST Eliteを使用しており、そこでOptima NM/CT 640とDiscovery ST EliteのCT画像を比較してみました。Optima NM/CT 640に搭載されているCTは診断用ではなくSPECTのFusionと減弱補正用のCTです。撮影条件は両者とも120kVピークで単純撮影、Optima NM/CT 640は一回転1秒でピッチが1.25、Discovery ST Eliteは一回転0.5秒ピッチは1.375です。CT画像を比較するとX線量の差はあるのですが、右上のPET/CTの画像で肩関節のストリークアーチファクトを多く引いているのがわかると思います。(図IX)(PET/CTは0.5秒、NM/CTは1秒)

 図IX

画像の見え方からSPECT/CTのSNの良さが評価ができると思います。これは、Optima NM/CT 640のCTは、30mAの低線量用に設計された検出器を採用し画像再構成関数を使っているためです。

解剖学的位置の同定のメリットにつき副腎シンチを例に紹介したいと思います。(図X)

 図X

プラナー像では前面像、後面像で副腎あたりに淡い集積があります。しかし、これがノイズか集積かははっきりしません。SPECTを撮ると副腎あたりに集積があることがわかると思います。(図XI)

 図XI

しかし、これでは腰椎とか腎臓とかの位置関係がはっきりしません。そこで、CT像と重ね合せをすると、副腎に集積しているのがわかります。(図XII)

 図XII

コロナル像でも同様に副腎に集積しているのがわかると思います。(図XIII)

 図XIII

 【定量評価】

今回SPECT/CT Optima NM/CT 640を導入し機能画像と形態画像の重ね合せは可能になったのですが、更に定量情報を得ることができます。それを可能にしたのがQ.Metrixと言うアプリケーションです。Q.Metrixとは逐次近似画像再構成法に減弱補正、散乱補正、分解能補正を組み込みかつシステム感度を加えることによりSPECT値を放射能濃度に変換し定量評価を可能にした、SUV定量ソフトです。SUVから得られるものとして集積部位の比較、過去の検査との比較、治療効果判定や術後の評価、悪性度の評価などがあげられます。

臨床画像を供覧します。Q.Metrixを使い骨シンチのSUVを測りました。正常な骨シンチの症例で緑のVOIが囲ってあるのですがここはL5で、平均のSUVが4.17です。腸骨稜の右側で青いVOIで囲ってあるところでSUVの平均が4.66.腸骨稜の右側が黄色いVOIを囲っているところで平均のSUVが4.32となりました。(図XIV)

 図XIV

次に骨シンチでのスーパーボーンの症例です。緑がL3でSUVの最大が24.57、平均が10.49と大きな差があることがわかります。これは腰椎の皮質骨と海綿骨のSUVに差があるためです。それぞれのSUVについて解析が望ましいのですが、皮質骨は薄くてVOIの設定ができませんでした。(図XV)

 図XV

当院での骨シンチにおける閾値を出してみました。当院の透析患者は年に一回骨シンチやDEXA法による骨密度の検査を受けて頂いています。健常者の閾値は大体5前後になりました。腎不全群の閾値は8~9前後になりました。両者を比較すると優位な差が出ていることがわかります。腎不全群のDEXA法による骨密度との相関も調べましたが、優位な情報を得ることはできませんでした。(図XVI)

 図XVI

これはDATSCANのSUVの測定画像で。(図XVII)

 図XVII

SUVを測ってみると。健常者のSUVは17、パーキンソン患者のSUVは8.8.一方健常者のSBRは7.3。パーキンソン患者のSBRは1.4となりました。比較するとどちらの値も健常者の方が高いことがわかります。二つの数値の相関からSUVでも病変の識別ができるのではないかと考えました。今後症例を増やして検討をしていきたいと考えます。(図XVIII)

 図XVIII

 【今後の検討事項について】

腫瘍の悪性度の評価ができるようにしていきたい。また、Q.MetrixとGI Boneとの比較をしていきたいと考えています。

薬事情報
ミレニアム VG 承認: 21000BZY00331000

※お客様の使用経験に基づく記載です。仕様値として保証するものではありません。

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