GE Smart Mail vol.140


Voice and Image
 核医学検査装置 お客様の声
 Discovery PET/CT 710の初期使用経験
 ~Q.Freezeが有用だった症例~


独立行政法人国立病院機構
呉医療センター・中国がんセンター
中央放射線センター  稲葉 護 先生

病院概要

呉医療センター・中国がんセンターは、1889(明治22)年に創設された呉海軍病院を前身としています。1956(昭和31)年10月に国立呉病院となり、さらに2004(平成16)年4月には全国の国立病院からなる独立行政法人国立病院機構に体制移行されました。現在は、700床の入院施設とともに、がんセンター、第3次救急センター、呉心臓センター、呉人工関節センター、周産期母子医療センター、緩和病棟、地域医療研修センター、医療技術研修センターなどを有し、35診療科が診療を行っています。また独立行政法人国立病院機構において、病院機能を高度または専門医療に特化し、その果たす役割を適切かつ効果的に遂行する観点から、政策医療分野における癌の基幹医療施設、循環器病、精神疾患、成育医療、内分泌・代謝性疾患、肝疾患の専門医療施設であり、高度総合医療施設に位置付けられています。さらに呉2次保健医療圏における地域医療支援病院の承認を受けるほか、救命救急センターなどを有し、遠隔地にいる患者さんがヘリコプター搬入されたり、ドクターヘリに当センター医師が同乗することもあります。当センターは中国地方のがん治療において重要な位置にあり、あらゆる種類の“がん”に対して積極的に取り組んでいます。例えば、最新の放射線治療機器(IMRT専用Helical Tomo Therapy)を中国地方で初めて導入し、緩和ケア病棟を早くから設置したことなどがあげられます。患者さんのQOL(生活の質)向上や“がん相談支援センター”を通した地域がん医療の向上にも努めており、呉医療圏における地域がん診療連携拠点病院に指定されています。

 

 【導入の経緯】

当院をはじめとする呉診療圏においては、PET/CT装置がなく、患者さんにはPET/CT検査のために、広島市内まで出向いてもらわざるを得ない状況となっていました。近年、デリバリーにて検査が行なえるようになっており、PET/CT装置を導入する病院も増えてきています。当院においてもPET/CT装置を導入することにより、遠方に検査を受けに行って頂いていた呉診療圏の患者さんの負担を軽減するとともに、がん診療連携拠点病院としての機能強化を図ることとなりました。また、当院では2001(平成13)年よりSPECT装置Millennium VGを使用してきましたが、導入後13年が経過し、経年劣化により故障頻度の増加や、検査の質の低下も懸念されてきていました。そこで、PET/CT装置の導入に併せてSPECT装置の更新を行い、問題の改善、診断精度の向上を図ることにしました。

pic2

 

 【SPECT/CT装置】

SPECT装置の選定として、精度の高い吸収補正とCT画像との重ね合わせが可能なX線CT組合せ型SPECT装置とし、X線被ばく低減も配慮をされた装置を要件としました。導入した装置はDiscovery NM/CT 670 Q suite Proです。ガンマカメラ部分は新設計の高分解能検出器を搭載し、CT部分は逐次近似画像再構成のASiRを搭載した診断用のCTで構成されています。ワークステーションのXelerisにはQ.Metrixが搭載されておりSPECTの定量評価、SPECT SUVを得ることができます。頭部以外のSPECTについては、CTによる吸収補正を行っていますが、患者さんの被ばくを抑えるために実効線量が1.0mSv 以下となる条件にて撮影をしています。ASiRで処理することでアーチファクトは気になりません。(図.1)

pic1
(図1)

 

 【PET/CT装置】

PET/CTはDiscovery PET/CT 710でtime of flight(TOF)収集が可能です。また、PETとCTの両方の呼吸同期ができPETとCTの高精度の位置合わせができます。PETだけの呼吸同期によりCT画像と位置ずれを起こし過補正になるなどの心配も無くなります。各位相ごとのPETとCTの重ね合わせはコンソール上にて自動で行い、手を加えることはなく、わずらわしさはありません。画像再構成は3D-OSEMのVUE Point、分解能補正のSharpIRを搭載し、CTは逐次近似画像再構成のASiRが搭載されています。

 

 【Q.Freezeの初期使用経験】

今回は初期使用経験としてQ.Freezeが有効であった症例を紹介します。

①肝右葉ドーム下(S8)の腫瘍を有する症例です。呼吸の影響を受ける位置にありました。当院では、胸部・上腹部病変の検査に対しては、Q.Static収集にて検査を行っております。Q.static収集は、ある特定の呼吸位相を選択的に抽出して、画像化することで動きの少ない画像を得ることが出来ます。しかしこの症例では、PET/CT融合画像において肝腫瘍のFDG高集積がCT画像上で一部肺野内に描出されており、融合画像にずれが生じていました。そこで、より高精度に短時間で呼吸同期ができるQ.Freeze収集を追加画像処理しました。その結果、明確に肝臓の腫瘍であることがわかる画像を得ることが出来ました。(図.2)(Q.Freeze:従来、長い時間をかけていた呼吸同期ですが、短時間で呼吸同期の効果を得られます。呼吸同期によって各位相ごとの分割を行い動きの影響がない画像を作りますが、収集時間が短いために各位相ごとのカウントが少なく、少ないカウントを補うために任意に決めた一つの位相にすべての位相を重ねて十分なカウントを得ます。)

pic2
(図2)※画像クリックで拡大します。

②両側肺下葉に腫瘤性病変を有する症例です。こちらもQ.Static収集において呼吸移動によるPET/CT融合画像の位置のずれが生じていましたが、Q.Freeze収集の追加撮影にてずれの少ない画像を得ることが出来ました。(図.3)

pic3
(図3)※画像クリックで拡大します。

また、いずれの症例も、MIP画像においてFDG高集積がより鮮明に限局して描出され(図.4~5)、SUV値もQ.Staticに比べQ.Freezeでは高値となりました。(図.6~7)これは、Q.Freezeにより1呼吸の間をQ.staticに比べてより細分化しそれぞれの位相で呼吸同期されたCTを用いて吸収補正を行い高精度に位置が合わせられたことでアーチファクトが抑えられ、また、カウントも無駄なく捉えることができ明瞭な画像と真値に近い定量値が得られたと考えます。

pic4
(図4)※画像クリックで拡大します。

pic5
(図5)※画像クリックで拡大します。

pic6
(図6)※画像クリックで拡大します。

pic7
(図7)※画像クリックで拡大します。

今回、初期使用経験としてQ.Freezeが有効であった症例を紹介しました。呼吸同期収集としては、Q.static収集にてほとんど場合は呼吸移動の影響の少ない画像を得ることが出来ますが、今回の症例のようにQ.static収集を用いても、融合画像にずれが生じてしまうことを経験しました。位置ずれの要因としては、検査中の患者さんの呼吸状態の変化(呼吸回数の変化・呼気/吸気ピークの変化など)の他に、Q.Static時のCT撮影は自然呼吸下における撮影のため、撮影タイミングによってはQ.Staticとの呼吸位相ずれが生じるなどの可能性が考えられますが、詳細な検討が必要と思います。

今後は検討を重ね、Q.Freezeの有効的な使用方法について把握し、呼吸同期プロトコールの見直しを行い、安定性・信頼性の高いSUVを提供できるようにしていきたいと考えています。

 

 

薬事情報

※お客様の使用経験に基づく記載です。仕様値として保証するものではありません。

資料請求などのお問い合わせがございましたら、
↓こちらまで

 
このページを印刷する