GE Smart Mail vol.147

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 MR お客様の声
 SIGNATM Explorer Newgrade 導入後の使用経験


一般財団法人神奈川県警友会 けいゆう病院
放射線科 五十嵐 太郎 様
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けいゆう病院様(神奈川県)は、2016年2月にこれまで12年ご使用頂いていた Signa EXCITE 1.5Tシリーズからマグネット以外の全てのコンポーネントを入れ替えSIGNA Explorerにグレードアップ*する、SIGNA Explorer Newgradeを導入頂きました。
その新しくなった外観、装置性能についての使用経験をお伺いしました。

 


けいゆう病院では2016年2月に12年間使用したSigna EXCITE 1.5T(以下「Signa EXCITE」という。)の機器更新に伴い、SIGNA Explorer 1.5T(以下「Explorer」という。)へNewgradeを行いました。以前使用していた装置から、既存のマグネット以外のコンポーネントがすべて変更となり、ガントリーカバーも一新されました(Fig.1)。インターフェイスも最新のバージョンへと変更されるとともに、新たなアプリケーションも導入されました。そこでNewgrade後の撮像プロトコールを含めたワークフローの変更点について、紹介したいと思います。

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 1.インターフェイスの変更

ExplorerではVer.25のインターフェイスが採用されております。新しいインターフェイスでは、作業領域の切り替えがタブで行われているため、検査を行いながらIVIやFunctool等の画像処理の作業を並列で行えるようになりました。今まで使用してきたインターフェイスと多少異なるため当初は惑いを感じる部分もありましたが、慣れてくると使い勝手の良さを感じます。
またSAR Displayにより、撮像中のSARの変化をリアルタイムに観測することが可能となり、安全に検査を施行することが出来ることは大きな利点であると考えております。

 

 2.受信コイル、アクセサリー

受信コイルは既存のものに加え、新たにHead Neck Spine CoilとGEM Flex Coilを導入しました。Head Neck Spine Coilは頭部から脊椎全領域においてカバーできる受信コイルで、コイル交換の手間が少なくなり、検査が滞りなく進行できるようになりました。GEM Flex Coilは、フレキシブルな形状の受信コイルで、様々な領域で活用できます。特に膝関節や肩関節等の四肢の整形領域で、その利便性を発揮しております。足関節や足底部などポジショニングに手間取るような部位は、付属のアタッチメントを利用することで、ポジショニングが容易になりました。また小児の脊椎や、拘縮が強く従来の受信コイルが使用困難である場合であっても、柔軟性の高いGEM Flex Coilで撮像を行うことが可能となりました(Fig.2) 。

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 3.New Protocols

3-1. PROPELLER 3.0

PROPELLERは、体動補正技術によりモーションアーチファクトが軽減する撮像法として、当院の先代機種であったSigna EXCITEで、すでに搭載されていたアプリケーションでした。当初のPROPELLERは制限が多く、撮像部位は頭部、コントラストはT2強調と拡散強調、撮像断面はAxialのみとなっておりました。また操作画面では、ダウンロードに時間がかかるため、スループットが低下することから、通常のルーチンプロトコールに組み込み難く、特殊なアプリケーションの一つとして使用されておりました。
PROPELLER 3.0では、Over sampling factorやPhase Accelなどのパラメータが導入され、部位や断面を問わずに撮像することが可能となりました。それによりPROPELLERが特殊な撮像法では無くなり、簡単にルーチン検査のプロトコールに組み込むことが出来るようになりました。

従来体幹部の撮像は、呼吸に伴う腹壁の動きや、消化管の蠕動運動によるモーションアーチファクトが出やすい部位です。骨盤部における巨大子宮筋腫や卵巣腫瘍など臍部まで広がるような病変は、呼吸による腹壁の動きによるモーションアーチファクトが発生しやすくなります。今までは呼吸の影響を少なくするために、ポジショニング時に腹壁を強く圧迫したり、撮像時には腹壁の脂肪組織にSaturation pulseを印加およびResp triggerを併用することで、モーションアーチファクトの対策を行っておりました。しかし腹壁の強い圧迫は被験者に大きな負担となります。またSaturation pulseの印加やResp triggerの併用は撮像時間の延長を伴うため、消化管の蠕動運動の影響を受けやすくなります。しかしPROPELLER3.0で撮像することにより腹壁の圧迫をすることなく、腹壁や消化管の蠕動に伴うモーションアーチファクトを抑制する事が出来るため、腹壁の圧迫も不要で、撮像時間の短縮と合わせて被験者の負担が大幅に軽減します(Fig.3)。

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また、縦隔部の撮像は呼吸や心拍動の影響の大きい検査部位です。撮像時は呼吸に同期させるか、心拍動に同期させるか、もしくは両者に同期させるかと非常に迷いながら検査を行っておりました。しかしPROPELLER3.0の使用により、呼吸や心拍動に同期させなくても、モーションアーチファクトが抑制された画像を得ることができるようになったため、容易に検査を行うことできるようになりました(Fig.4)。

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3-2. FOCUS DWI

Explorerでは、局所選択励起による拡散強調画像の撮像を行うFOCUSが使用できるようになりました。拡散強調画像などのEPIシーケンスは、画像の歪みを軽減させるために、パラレルイメージング(ASSET)などを併用して、位相エンコードステップを間引いて撮像を行います。FOCUSではASSETを使用せずに、Phase FOVを縮小することにより位相エンコードステップを間引いて撮像を行います。局所選択励起であるため、Phase FOVにより位双方向のFOVを小さくしても、Aliasing artifactは生じません。小さなFOVで撮像ができるため、高い空間分解能で歪みの少ない拡散強調画像を得られることが可能となり、病変部の描出が向上します(Fig.5)。

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近年は、頭部のみならず体幹部領域の拡散強調画像の需要も増えております。2015年に発表されたProstate Imaging – Reporting and Data System : PI-RADS version 2における拡散強調画像の指標は、小さな撮像野による高空間分解能と高いb値での撮像が求められています。前立腺は背側に直腸が存在するため、直腸ガスの影響により拡散強調画像で歪みが生じやすくなります。また小さい撮像野で拡散強調画像の撮像を行うと、ASSETの展開不良によるアーチファクトが前立腺と重なるように出現してしまいます。しかしFOCUSではパラレルイメージングの展開不良や折り返しによるアーチファクトが生じないため、小さい撮像野による撮像であっても問題はありません。またPhase FOVを縮小することで、画像の歪みも軽減しPI-RADSの指標にあった撮像条件下でも問題の無い拡散強調画像を得ることができます(Fig. 6)。

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また女性骨盤において子宮軸に沿うようなスライス断面で行っても、高空間分解能で歪みが小さく、子宮内腔病変などの診断能が向上した画像を容易に得ることができます (Fig. 7)。

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3-3. SILENT SCAN

小児や乳幼児のMRI検査では自発的な体位保持が困難となってくるため、被験者を睡眠状態にして検査を行うケースが少なくありません。通常、乳幼児の検査では、自然睡眠下もしくはトリクロールシロップを使用して鎮静を行い安静状態で検査を行います。しかしMRIでは撮像時に大きな撮像音が発生するため、入眠のタイミングや睡眠の深さによっては、撮像中に覚醒してしまい検査を中止にせざるを得ないケースが少なくありませんでした。
しかしSilenzやSilent PROPELLERといったSILENT SCANは、撮像時の可聴ノイズを大幅に軽減できるため、検査中の覚醒が激減しました。導入後、5か月の間に、Explorerで施行した小児・乳幼児患者のMR検査25例の中、検査中覚醒したのは1例のみでした。昨年の同期間では35件中、検査中覚醒により中止となった例は7件となっており、SILENT SCANで検査を行うことにより乳幼児検査の成功率が格段に向上しております。静音モード(Acoustic Reduction Technology : ART)は通常シーケンスでも併用すること可能となっているため、Time of flight MRAやT2*強調画像(SWAN)等においても、可聴ノイズを低減させて撮像を行うことが出来ます(Fig.8 )。また睡眠状態にあっても、まれに動いてしまうこともありますが、PROPELLERは体動補正がされるため、診断への影響はほとんどありません。静音と体動補正技術の両者を兼ね備えたSilent PROPELLERは、乳幼児の検査にとって有用性の高いアプリケーションであると考えております。

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 4. 装置の周辺環境

装置のNewgradeに伴い、検査室のレイアウトも一新されました。新調されたコイル棚は、キャスター付きの小さいコイル棚が収納されています。キャスターが付いているため、コイル棚はベットサイドまで移動が可能となっており、受信コイルのアタッチメントやアクセサリーを置くことができます(Fig.9)。これによりポジショニング時の導線が格段に向上し、スムーズにポジショニングを行うことができるようになりました。

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今回のNewgradeにより、インターフェイスの変更や新たなアプリケーションが追加され、MRI検査の幅が格段に広がったと感じております。当院の理念に基づき、高度で良質且つ安全で信頼される検査を目指し、MRスタッフとともに取り組んでいきたいと思います。

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本カスタマーボイスのPDFダウンロードはこちらから。(605KB)

 

薬事情報

※本グレードアップでは、既存MRのマグネットを残し、その他のコンポーネントを交換しております。
 グレードアップ後は、製品の薬事販売名称・薬事番号なども変更になります。

※お客様の使用経験に基づく記載です。仕様値として保証するものではありません。

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