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 核医学検査装置 お客様の声
 SPECT/CTを用いたSUV定量ソフトQ.Metrixの臨床可能性

 

 

独立行政法人地域医療機能推進機構 徳山中央病院
吉永憲正先生

 

今回は、SUV定量ソフトウェア「Q.Metrix」の臨床適用について
第3回Q.Metrix RoundTable Meetingで発表した内容を報告します。

前回のミーティングでは、ファントムを用いたQ.Metrixの基礎的な検討、SUV評価の限界について報告させていただきましたが、今回は、臨床において、Q.Metrixから算出した SUVが活用されるためには、何が必要なのか検討してみました。
ひとつは、放射性医薬品のトレーサーとしての安定性、つまり臓器ごとに安定したアップテイク(取り込み) が保たれていることだと考えています。SUVが臨床に有効利用されているFDG-PETの場合、PET装置の機種が違っても肝臓のSUVは3前後の安定した値になります。腫瘍の鑑別診断においてもSUVmax2.5前後の閾値がどこの施設でも用いられていると思います。ところが、IMPのように肺のトラップ率が肺の機能によって左右し、脳へのインプットが変わるものには適正ではないと考えられます。
ふたつめは、臓器の大きさがもたらす、パーシャルボリュームエフェクト(PVE)です。数センチφ以下の物体において、カウント過小評価が起こることは、SPECTにおいて避けられないことです。心筋は臓器自体や心筋壁の厚さによるPVEの影響でカウントが変化し、定量に不向きと考えています。もちろん、ガンマカメラの開発によりPETに匹敵するような分解能が得られることがあれば、見解は変わると思われます

図1 図2
(図1) (図2)

では、Q.MetrixのSUV定量を臨床に使う可能性を探ってみました。
ガンマカメラの物理特性を無視できるようにSPECT回転半径等の条件を一定にする、対象臓器の大きさに個人差がない臓器であること、放射性医薬品の代謝が安定していること、などを踏まえていくつかの検討をしてみました。

 

 [心筋シンチ]
図3
(図3)

Q.Metrixが導入されてまず期待したのが心筋シンチでした。
SUV定量によるアップテイク値評価によって三枝病変がわかるのではないかと言う期待があり検討した所 、骨シンチと比較して、正常心筋のSUVにばらつきがあることがわかりました(図4)。

図4
(図4)心筋で当院の正常例で 2倍以上のSUVの差が出ました。(骨は腰椎で計測)

図5はマツダ病院の森広先生から頂いたデータですが、テクネシウムの安静時で一定放射能量を投与していますが、BMIや体重と心筋カウントの関係を見たときに、例えば体重の60㎏ぐらいのところで下は50カウントから上は120~130、つまり2.5倍くらい差が出ます。正常と思われるところでこれほどのばらつきがあります。 三枝病変例でのSUVの分布に関しては今後の検討事項ですが、SUVだけで、虚血を判断するためには青で示したバンドぐらいに収まる必要があると思われます。
あともう一つはMIBGの定量です。2次元のH/Mで求めている分母のM(縦隔)のカウントは、減弱や散乱の影響を大きく受けます。減弱・散乱・分解能補正を行ったSPECT画像から、心腔内(心筋)のSUV定量で集積低下がわかるのではないかと期待していますが、今後の検討課題です。

図5
(図5)

 

 [肺血流]

次に肺血流です。
理論的にはアップテイク(物理的なトラップ)率は100%に近いものですし、臓器の大きさも十分なものがあります。SUV定量には向いている検査と考えられました。症例を3例お示しします(図6A)。上段の肺のアップテイク 2Dで左から90%、93%、95%、シャント率では10%、7%、5%。一方3Dで書いたのがQ.Metrixを使用したアップテイク値ですが、75%、91%、87%という数値が出ました。よって、シャント率は25%、9%、13%となります。一番左側の症例は2Dでホールボディーにてシャント率10%ですが、Q.Metrixでは25%と言う数値になりました。 この症例は体系的にかなり大きな方で、減弱補正が問題と考えられ、さらなる考察が必要です。 全体的 に過小評価してしまう理由は、肺は空気 が含まれており、水とは等価でないのでPVEが影響してくるのではないかと思います。

図6A 図6B
(図6A) (図6B)

(図7)SPECT評価ファントムで例えれば、同じ放射能濃度でも上段左の陽性像と上段右の均一評価像(プールファントム)のカウント差が出るように、肺の場合は左側の画像に相当し、カウントを過小評価しています。この辺りにSPECT分解能の限界を感じます。回転半径が最大に近いところで撮影していますのでPVEの補正においてはかなり不利な状態です。左側の下のグラフが示すように一番上に示されるものが均一ファントムのプロファイルカーブ、二番目の山並みになっているのが肺を模した陽性像ファントムからのプロファイルカーブです。SUVで20%ぐらいの差が出ても致し方無いと考えています。理想的な夢は右下のCTのプロファイルカーブですけどもここまでの矩形波が出ることは現在のアンガー型カメラでは難しいと考えます。

図5
(図7)

 

 [線条体シンチ]

線条体シンチ(DATSCAN)についても検討しています。
まずは、患者さんに撮影まで静注後3時間待ってもらわなくても早期像で何とかならないかなという考えがありました。また、SBR(Specific Binding Ratio)に代わってSUVで診えるのではないかと思い計測してみました。静注後30分SUVと静注後3時間SUVを比べたとき、数値が上がるものあり下がるものあり、ばらつきがあったので早期像での評価はあきらめました。このことは、PETのドーパミントランスポータの早期の集積の変化でも知ることができます(図8)。

図8 図9
(図8)(核医学 36:735-744,1999より引用) (図9)(東北大学 PET用放射性薬剤の製造および品質管理
-合成と臨床使用へのてびき-
http://www.cyric.tohoku.ac.jp/kakuyaku/public/petdrug4/PET-drug4webV402.pdfより引用)

ドーパミントランスポータのPETのデータでも線条体とBrainのウォッシュアウトがいろいろな結果を示しますので、
30分~1時間でのSUV評価は難しいと考えています。

次に通常の静注後3時間後のDATSCANについての定量について検討します。
PETのドーパミントランスポータの画像をいくつか調べましたが、SPECTのDATSCAN注は必ず尾状核が強く出ます(図10)。やはりPVEの影響だとは思いますが、PET製剤のドーパミントランスポータの画像は被殻の方が強く出る場合もあります。トレーサーの分布を正確に示しているのはPETだと思われます。また、コリメータの違いによってもこれだけ違いが見られ、低感度のLEHRを用いますとどうしてもバックグランドが安定しませんので差が出てしまいます。

図10
(図10)

 

図11
(図11)

SPECTにて線条体と小脳SUVを求めての関係をみてみました(図11)。
横軸が線条体のSUVmeanで縦軸が小脳(B.G.と表記)SUVmeanですが小脳に至っては0.4から1.5まで大きなバラツキを示しています。(非特異的結合領域と小脳は異なりますが)SBR4を閾値とした場合、小脳がもう少し安定してくれればSBRの値も信頼できるのではないかと思いますが、高い相関は得られませんでした。

図12
(図12)

SBRと線条体SUVmeanの相関ですが、低い相関でした。

 

 [内部被ばく線量計算]

最後に、臨床とは離れますが、一つ期待できるのが内部被ばく計算です。
現在はラットのデータからモンテカルロシミュレーション等を用いて計算されています。例えば201TlのデータをA社とB社で比較しますと、倍以上、最大5倍の評価がなされています。Q.Metrixを用いれば、内部被ばくを人の生体のデータから計算可能と思われます。非常に期待できるのではないかと思っています。これは引き続き検討していきます。

図13
(図13)
図14
(図14)

 

 

 [まとめ]

今大会の九州大学の佐々木先生のご講演で、定量とはいつでもどこでも誰がやっても何度でも同じ値が出ることが大事だと提言されていました。PETでもなかなかうまくいっていない部分もありますが、SPECTにおいても各メーカーSUV算出ソフトウェアが搭載されてきており、種々の検討を行い、得意不得意をわかったうえで使用していくことが大事だと考えています。

 

 

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