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 核医学検査装置 お客様の声
 全身PET/CT検査における最適オーバーラップの検討

 

松江市立病院 放射線部
実重 英明 先生

 【はじめに】

画像

松江市立病院は昭和23年に開設され、当初病床数は30床でした。年々病床数や施設の拡張を行い、平成17年に今の乃白町に新築移転しました。現在では病床数470床、(一般416床、精神50床、感染症4床)診療科目27科を有する地域の中核病院として市民をはじめ山陰地域の医療に貢献しています。消化器病センターを設立し、緩和ケア病棟・ICUを設置、免震構造のため大規模災害時の拠点施設としての機能も有しています。さらに、宍道湖を眺める環境を生かし、最上階のレストランからはその眺望を眺めることができ、患者さんのQOLの向上に配慮しています。日本医療評価機構からの認定や、地域がん診療拠点病院、臨床研修指定病院の指定も受けております。

患者さんへ提供する医療の充実を目指す病院機能の向上の一つとして平成29年3月がんセンターが開設されます。PET/CTは本院の医療の充実に大いに貢献することが期待されています。

 

 【オーバーラップについて】

PET/CTの頭尾方向の視野は装置によって異なるが約15㎝~20㎝程度であり、全身撮影(多くの臨床現場では頭頂から鼠蹊部までの約1m)において分割撮影が必要になります。またPETの検出器は中心で感度が高く検出器の辺縁に行くにしたがって感度が低くなります。分割撮影の際のオーバーラップはPETの検出器の特性上必須ですが、オーバーラップを減らすことは有効視野を広げることになり、オーバーラップを減らしても画像が劣化しないことを確認するために、検討を行いました。

 

 【Discovery PET/CT 710のオーバーラップ】

当院では2015年10月からDiscovery PET/CT 710を導入し稼働させています。 画像収集の際に、検出器のオーバーラップを任意に設定することが出来ます。 1Bedの再構成数は47スライスあり、オーバーラップ数を1(2.1%)sliceから23(48.9%)スライスまで変更 することが出来ます。オーバーラップ数を変更することにより1Bed分追加することなく、検査時間を短縮することも出来ますが、少ないオーバーラップ数は画像の低下に繋がります。

今回、オーバーラップ数の違いによる画質に与える影響 をファントム実験により検討をしました。

使用機器及び画像処理条件は下記に示す通りです。


Phantom:  NEMA IEC BODY PHANTOM
   円柱PHANTOM
解析ソフト:  Xeleris Ver3.1
再構成方法:  OSEM iterations2/subsets12
   Matrix size 192×192
   Gaussian Filter 4mm
   TOF(+) PSF(+)
使用薬剤:  18F-FDG

 

方法
(i)各スライスでの画質の不均一性
円柱ファントムにFDG(3.54kBq/ml)を封入し、ファントムの中心を1Bed、2分間収集しました。 各スライスの再構成画像に関心領域(ROI)を設定し、最大値(Max)・最小値(Min)・平均値(Ave)・標準偏差(SD)の平均を求め、下記式より各スライスのB.G領域 の画質の不均一性(NU)、%バックグランド変動性(%CV)を求めました。
・NU+=+100×(Max-Ave)/Ave
・NU-=-100×(Ave-Min)/Ave
・%CV=SD/Ave

(ii)オーバーラップによる画質の不均一性の変動
方法(i)と同様に、円柱ファントムの1Bed目を固定し、2Bed目のオーバーラップ数を1スライスから順次増やし最大 23スライスまで収集を行い、方法1と同様にB.G領 域のNU値を求めました。 収集時間は18Fの減衰を考慮し、同じカウントとなる 様に収集時間を延長しました。

(iii)オーバーラップによるコントラスト比、%CVの変動
収集方法は(ii)と同様に、NEMA IEC BODYファントムのホット球(37、28、22、17、13、10mm)に B.Gとの比が4:1になるようFDGを封入しました。
オーバーラップの中心がホット球の中心になる様に設定し、オーバーラップ数を1から23スライスまで順次収集しました。収集時間は方法2と同様に収集時間を延長していきました。各スライスの再構成画像にROIを設定し、各ホット球のコントラスト比、%CVを下記式より求めました。
コントラスト比=(各ホット球の平均値-B.G)/(各ホット球の平均値+B.G)

 

結果
(i)
・検出器の両末端にいくほどNU値は大きくなり、画質が悪くなっていく傾向でした。(図1)
・「がんFDG-PET/CT撮像法ガイドライン」の第1試験では、%CV<5.6%を基準値としており、今回の実験では11~37スライスが基準値以下となりました。(図2)

(図1)
図1

(図2)
図2

(ii)
図3・4は中心slice23で正規化し23~47スライスまでをグラフにしました。 グラフの0はオーバーラップ無しのグラフです。
オーバーラップ数10以降からバラツキの程度が減少していく傾向でした。
23スライスから47スライスのNU値のAveとSDをオーバーラップ数23スライスを基準にして比較すると、NU+でオーバーラップ数9スライスで43.9%±23 オーバーラップ数10スライスで0.7%±17。NU-でオーバーラップ数9スライスで27.4%±16.1オーバーラップ数10スライスで5.4%±12.2の差がありました。

(図3)NU+
図3

(図4)NU-
図5

(iii)
・「がんFDG-PET/CT撮像法ガイドライン」で示されている基準値、5.6%以下となるオーバーラップ数は9以上となりました。(図5)
・オーバーラップ数の増加によるコントラスト比 の改善はみられませんでした
。ホット球の径が大きくなるにつれ、バラつきの程度は軽減していきました。(図6)

(図5)
図5

(図6)
図6

今回の実験で、スライス位置及びオーバーラップ数を変化させた場合に画質の不均一性、%バックグランド変動性から最小オーバーラップ数は9または10程度でもいけると思われます。
また、再構成時の感度補正の効果もあり、少ないオーバーラップ数でも画質が担保出来ていると思われます。
しかし、臨床では体型、投与量などにより許容できる最小オーバーラップ数も変わってくることが考えられるため、余裕を持ったオーバーラップ数の設定が望ましいと思われます。

 

所見
スライス位置では、検出器の中心から端にいくにつれ、各sliceの同時計測線(LOR)が減少しカウントが少なくなるためNU値が大きくなり画質が悪くなっていたと思われます。
しかし、オーバーラップをし、オーバーラップ数が増えるにつれ、オーバーラップ部分はLORが2倍となりカウントが増えNU値が改善され画質も良くなっていったと思われます。

 

まとめ
当院のDiscovery PET/CT 710ではオーバーラップの数は9(19%)程度で問題ないことが確認できました。{メーカー推奨は13(27.7%)}

 

 

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