当院では2015年10月からDiscovery PET/CT 710を導入し稼働させています。
画像収集の際に、検出器のオーバーラップを任意に設定することが出来ます。
1Bedの再構成数は47スライスあり、オーバーラップ数を1(2.1%)sliceから23(48.9%)スライスまで変更 することが出来ます。オーバーラップ数を変更することにより1Bed分追加することなく、検査時間を短縮することも出来ますが、少ないオーバーラップ数は画像の低下に繋がります。
今回、オーバーラップ数の違いによる画質に与える影響 をファントム実験により検討をしました。
使用機器及び画像処理条件は下記に示す通りです。
Phantom: |
NEMA IEC BODY PHANTOM |
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円柱PHANTOM |
解析ソフト: |
Xeleris Ver3.1 |
再構成方法: |
OSEM iterations2/subsets12 |
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Matrix size 192×192 |
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Gaussian Filter 4mm |
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TOF(+) PSF(+) |
使用薬剤: |
18F-FDG |
方法
(i)各スライスでの画質の不均一性
円柱ファントムにFDG(3.54kBq/ml)を封入し、ファントムの中心を1Bed、2分間収集しました。 各スライスの再構成画像に関心領域(ROI)を設定し、最大値(Max)・最小値(Min)・平均値(Ave)・標準偏差(SD)の平均を求め、下記式より各スライスのB.G領域 の画質の不均一性(NU)、%バックグランド変動性(%CV)を求めました。
・NU+=+100×(Max-Ave)/Ave
・NU-=-100×(Ave-Min)/Ave
・%CV=SD/Ave
(ii)オーバーラップによる画質の不均一性の変動
方法(i)と同様に、円柱ファントムの1Bed目を固定し、2Bed目のオーバーラップ数を1スライスから順次増やし最大 23スライスまで収集を行い、方法1と同様にB.G領 域のNU値を求めました。 収集時間は18Fの減衰を考慮し、同じカウントとなる 様に収集時間を延長しました。
(iii)オーバーラップによるコントラスト比、%CVの変動
収集方法は(ii)と同様に、NEMA IEC BODYファントムのホット球(37、28、22、17、13、10mm)に B.Gとの比が4:1になるようFDGを封入しました。
オーバーラップの中心がホット球の中心になる様に設定し、オーバーラップ数を1から23スライスまで順次収集しました。収集時間は方法2と同様に収集時間を延長していきました。各スライスの再構成画像にROIを設定し、各ホット球のコントラスト比、%CVを下記式より求めました。
コントラスト比=(各ホット球の平均値-B.G)/(各ホット球の平均値+B.G)
結果
(i)
・検出器の両末端にいくほどNU値は大きくなり、画質が悪くなっていく傾向でした。(図1)
・「がんFDG-PET/CT撮像法ガイドライン」の第1試験では、%CV<5.6%を基準値としており、今回の実験では11~37スライスが基準値以下となりました。(図2)
(図1)
(図2)
(ii)
図3・4は中心slice23で正規化し23~47スライスまでをグラフにしました。
グラフの0はオーバーラップ無しのグラフです。
オーバーラップ数10以降からバラツキの程度が減少していく傾向でした。
23スライスから47スライスのNU値のAveとSDをオーバーラップ数23スライスを基準にして比較すると、NU+でオーバーラップ数9スライスで43.9%±23 オーバーラップ数10スライスで0.7%±17。NU-でオーバーラップ数9スライスで27.4%±16.1オーバーラップ数10スライスで5.4%±12.2の差がありました。
(図3)NU+
(図4)NU-
(iii)
・「がんFDG-PET/CT撮像法ガイドライン」で示されている基準値、5.6%以下となるオーバーラップ数は9以上となりました。(図5)
・オーバーラップ数の増加によるコントラスト比 の改善はみられませんでした
。ホット球の径が大きくなるにつれ、バラつきの程度は軽減していきました。(図6)
(図5)
(図6)
今回の実験で、スライス位置及びオーバーラップ数を変化させた場合に画質の不均一性、%バックグランド変動性から最小オーバーラップ数は9または10程度でもいけると思われます。
また、再構成時の感度補正の効果もあり、少ないオーバーラップ数でも画質が担保出来ていると思われます。
しかし、臨床では体型、投与量などにより許容できる最小オーバーラップ数も変わってくることが考えられるため、余裕を持ったオーバーラップ数の設定が望ましいと思われます。
所見
スライス位置では、検出器の中心から端にいくにつれ、各sliceの同時計測線(LOR)が減少しカウントが少なくなるためNU値が大きくなり画質が悪くなっていたと思われます。
しかし、オーバーラップをし、オーバーラップ数が増えるにつれ、オーバーラップ部分はLORが2倍となりカウントが増えNU値が改善され画質も良くなっていったと思われます。
まとめ
当院のDiscovery PET/CT 710ではオーバーラップの数は9(19%)程度で問題ないことが確認できました。{メーカー推奨は13(27.7%)}
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