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 核医学検査装置 お客様の声
 腫瘍FDG-PET画像におけるQ.Clearの有用性

 

近畿大学高度先端総合医療センター PET分子イメージング部
柴田 侑亮 様
渡邊 翔太 様
花岡 宏平 様
 【Q.Clearとは】

従来のPET画像における逐次近似画像再構成法であるOSEM法のデメリットは、繰り返し演算ごとに画像上にノイズが生じるため、十分に収束させるまで繰り返し回数を増加させると、画像中のノイズも増加してしまう。そのため、画質を優先し、収束に至る前に演算数を制限している。

Q.Clearでは演算数を十分に収束するまで繰り返してもノイズが増加しないように、逐次近似画像再構成法の計算アルゴリズム内にノイズをコントロールするための処理が組み込まれている。ノイズをコントロールするための係数βは任意に選択可能であり、最適な係数βを使用することで、従来相反関係にあった「画質」と「定量性」の両方が向上する。これにより、十分な収束を実現し、定量精度の高いSUVが提供可能となり、診断能向上や継時的な治療効果判定に役立つとされている。

当院では、腫瘍FDG-PET撮影は、体重1kgあたり3MBqを投与し、収集時間は1 Bedあたり120secとしている。画像再構成は全例Q.Clear法で行い、β値は800を使用している。
今回は収集時間を変化させたとき、病変のSUVmaxおよび肝臓のSNRがどのように変化するのか、従来の再構成法(OSEM法)とQ.Clear法で比較し、Q.Clear法の有用性について検討を行った。

 

 【方法】
  1. 対象は肺野に10-15 mm大の異常集積を呈した患者15名の臨床データを使用。
  2. 各患者のリストデータより、収集時間を20 、30、40 sec 、・・・120 secと変化させ、OSEM法およびQ.Clear法で再構成を行う。
  3. 得られたデータから各収集時間でのSUVmaxを測定する。
  4. 冠状断面で直径3 cmの2D ROIを肝門部およびドーム下など血流の多い部分を避け3スライス分にまたがって設定し、次式より肝SNRを求める。

SNR=ROI平均値Ave / ROI標準偏差Ave

 

 【再構成条件】

OSEM法の再構成条件は、

Matrix Size:192×192
Recon FOV:50 cm
Recon Method:VUE Point FX、Sharp IR(+)
Filter Cutoff:6 mm
Subsets:16
Iterations:2
Z-Axis Filter:Standard

とした。

一方でQ.Clear法として

Matrix Size:192×192
Recon FOV:50 cm
β:800

を使用した。

 

 【結果① SUVmax】

症例. 70歳代 男性 157.1 cm、55 kg 右上葉肺癌(10 mm大)

図1にOSEM法とQ.Clear法の収集時間と腫瘍におけるSUVmaxの関係を示す。

図1
図1. 収集時間とSUVmaxの関係について

図1より、1 Bed収集時間120 secのとき、SUVmax はQ.Clearが6.5、従来OSEM法では4.8を示した。
その他の収集時間について見てみると、Q.Clear法は60 secあたりまでほぼ一定の値を示しており、どれもOSEM法と比べ高い値を示している。

図2から図7に120 sec、60 sec、30 secの再構成法の違いによるFusion臨床画像を示す。

図2
図2. OSEM法(1 Bed 120 sec収集)
図3
図3. Q.Clear法(1 Bed 120 sec収集)
図4
図4. OSEM法(1 Bed 60 sec収集)
図5
図5. Q.Clear法(1Bed 60 sec収集)
図6
図6. OSEM法(1 Bed 30 sec収集)
図7
図7. Q.Clear法(1 Bed 30 sec収集)

視覚的にOSEM法とQ.Clear法を比較してみると、Q.Clear法の検出能がOSEM法よりも高いことが観察できる。今回は15例検証を行ったが全ての例においてQ.Clear法がOSEM法よりもSUVmaxは高い値を示した。
また、15例のQ.Clear法におけるSUVmaxの値は収集時間60 secから120 secの間で約5%の変動を示した。

 

 【結果② 肝SNR】

図8、図9に15症例における、収集時間と肝SNR値の関係を示す。

OSEM法
図8
図8. 肝SNR箱ひげ図(OSEM法)
Q.Clear法
図9
図9. 肝SNR箱ひげ図(Q.Clear)

OSEM法とQ.Clear法を比較すると、Q.Clear法は1 Bedの収集時間が60 secになるとSNRが10前後に達していることがわかる。一方の従来法は、収集時間60 secでSNRが10に達しているのはわずか2例であった。

図10から図15に120 sec、60 sec、30 secの再構成法の違いによるPET臨床画像を示す。

図10
図10. OSEM法(1 Bed 120 sec収集)
図11
図11. Q.Clear法(1 Bed 120 sec収集)
図12
図12. OSEM法(1 Bed 60 sec収集)
図13
図13. Q.Clear法(1 Bed 60 sec収集)
図14
図14. OSEM法(1 Bed 30 sec収集)
図15
図15. Q.Clear法(1 Bed 30 sec収集)

視覚的にOSEM法とQ.Clear法を比較してみると、OSEM法に比べQ.Clear法ではノイズが少なく、画質が良いことが観察できる。

 

 【まとめ】

結果1、2より、Q.Clear法では、1 Bedあたり60 secの収集時間で、病変部位のSUVmaxがほぼ一定に落ち着き、かつ肝SNR値も10前後となることが分かった。これらのデータより、当院では痛みの強い患者や長時間安静が困難な患者を撮影する際は、1 Bedあたりの収集時間を患者の容態に合わせ短縮撮影を行っている。また、呼吸同期収集における1Phaseあたりの収集時間の目安にも利用している。

Q.Clear法の特性を理解し臨床応用することは、患者にとって安心・安全な検査につながると考えている。

 

※お客様の使用経験に基づく記載です。仕様値として保証するものではありません。

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