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 核医学検査装置 お客様の声
 DATQUANTにおけるパーキンソン病と正常者のカットオフ値の検討

 

先生   先生
岡山大学病院 神経内科
助教 佐藤 恒太 先生
  岡山大学 大学院
医歯薬学総合研究科
放射線医学
准教授 佐藤 修平 先生
 ◆はじめに◆

123I-FP-CIT SPECTが本邦で保険収載されて以降、パーキンソン病(以下PD)におけるドパミン神経の脱落を鋭敏に定量画像化する手段として、日本全国の病院で123I-FP-CIT SPECTが利用されるようになった。臨床現場においては、本態性振戦や薬剤性パーキンソニズム、特発性正常圧水頭症など病理学的にドパミン神経が脱落しない疾患とPDを区別するために特に有用である。

しかしながら、一般的に多く利用されている線条体全体の集積カウントを指標とした定量的解析においては、軽症なPDや被殻のみの集積が低下している症例において、正常値と判定されてしまうことを経験している。

そこで我々は、DATQUANTを用いて、健常者とPD患者の鑑別に最適化したカットオフの検討を行った。

 

 ◆研究の対象と方法◆

<対象>
岡山大学神経内科外来もしくは入院した患者のうち、下記の患者を対象とした。

  • 対照(心因性振戦など非変性疾患) : 12名(31−83歳)
  • PD患者 : 29名(40−79歳、Hoehn-Yahrの重症度1−4度)

<方法>
対象患者に対して、123I-FP-CIT SPECTを行った。
また以下の各パラメーターについて、対象(control)とPD患者について検討し、PDにおける線条体での123I-FP-CIT集積低下を検出するための最適なパラメーターをROC解析(Receiver Operating Characteristic analysis)とROC曲線下面積(AUC: area under the curve)を用いて検討した。次にPDの重症度と各パラメーターの関連を検討した。最後にROC解析結果から2群間の鑑別のためのカットオフ値の設定を行った。

<検討パラメーター>
DATQUANTの4つの定量値(バックグラウンドとの比率)を低値側同士について検討した。

1.Striatum全体 2.Caudate 3.Anterior Putamen 4.Posterior Putamen

 

 ◆結果◆

<結果1:患者背景>
表1
表1:患者背景

患者背景においてControlとPDの2群間で有意差はなかった(表1)。

<結果2:ROC解析によるAUCの検討>
各パラメーターにおいてControlとPDを鑑別するためのROC解析を行った
図1
図1.ControlとPDの鑑別のためのROC解析

各パラメーターにおけるROC曲線下面積(AUC)は下記の通りとなった。

  • Striatum全体: 0.993
  • Caudate: 0.964
  • Anterior Putamen: 0.994
  • Posterior Putamen: 0.983
以上からStriatum全体の低値側と、Anterior Putamenの低値側がカットオフ値設定に有用と考えられた。

<結果3:PDの重症度との関連>
PDの重症度とStriatum全体の低値側と、Anterior Putamenの低値側の集積の関係について検討した。

図2
図2.PDの重症度とStriatum全体
図3
図3.PDの重症度とAnterior Putamen

上記の結果より、PDの重症度と123I-FP-CITの集積との相関関係が得られた。

<結果4:カットオフ値の推定>
ROC曲線からカットオフ値を推定した。その結果、 Striatum全体の低値側:
2.21(感度93.1%、特異度100%)
2.81(感度100%、特異度83.3%)
Anterior Putamenの低値側:
1.97(感度96.6%、特異度100%)
2.745(感度100%、特異度83.3%)
と計算された。

 

 ◆結論◆

以上の結果より、当施設においては、下記の条件を123I-FP-CIT集積低下の判定基準に利用している。

  1. DATQUANTのStriatum全体の定量値の低値側において、2.21以下であれば有意に低下しており、2.81以上であれば有意な低下がない。
  2. DATQUANTのAnterior Putamenの定量値の低値側が1.97以下であれば有意に低下しており、2.745以上であれば有意な低下がない。

海外の臨床試験においては臨床的にPDと診断されたにもかかわらず123I-FP-CIT SPECTでは異常のないScan without evidence of dopaminergic deficit (SWEDDs)が5-20%程度あると報告されているが1)、臨床現場においてはそれほど高い率ではない印象もある。今回得られた研究結果からも、より感度・特異度の高い適切な指標を用いることでSWEDDsの割合を減らすことは可能であり、123I-FP-CIT SPECTが臨床現場において、より有用な検査になると考えている。

 

※お客様の使用経験に基づく記載です。仕様値として保証するものではありません。

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References:

  1. Kägi G, Bhatia KP, Tolosa E. The role of DAT-SPECT in movement disorders. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2010 Jan;81(1):5-12.