(図1)
前回のカスタマーボイスで、Q.Metrixの臨床可能性について述べさせていただいた時に、DatSPECTを用いて、線条体SUV(STANDARDIZED UPTAKE VALUE)とSBR(SPECIFIC BINDING RATIO)の間には、低い直線相関しかないことを、お示ししましたが、この関係について検討を加えてみました。
DatSPECTの定量指標であるSBRは、パーキンソン症の評価に有用ですが、非特異的結合領域のカウントは散乱線やノイズの影響を受けやすくSBRの値の不確かさの原因と考えられます。
そこで、線条体の集積率をQ.Metrixを用いて SUVを算出し、直接定量評価することにより、DatSPECTの診断能向上に繋がるのか検討しました。また、合わせて小脳のSUVについても検討しました。
(図2)
対象は、当院物忘れ外来で、パーキンソン症が疑われ2015年4月から2016年3月にDatSPECTの施行された26例で、男性11名女性15名です。平均年齢は75.2歳、SUVの値に大きな影響を与えるような肥満体型の方はおられず、平均体重52.2㎏でした。イオフルパン診療ガイドラインに記載されている薬品の投薬はされていませんでした。
(図3)
DatSPECTの収集条件・再構成条件は臨床一般的なものを使用しています。SPECT収集条件に特筆することは、ありません。再構成条件で、SBR測定にはFBPの減弱補正なしの画像を、Q.MetrixによるSUV算出にはOSEMによる、減弱・散乱・分解能補正を行った画像を使用しました。(図3)
(図4)
改めて、Q.Metrixの原理と特徴を簡略に説明しますと、SPECTとCTのSEGMENTATIONツールを利用して、VOLUMEデータとして臓器・病変毎に放射性医薬品の摂取量をBq/mlや% INJECTION DOSEで表すことができます。さらに、患者様情報(身長、体重など)を入力することで、PET検査のようなSPECT SUVも算出できます。(図4)
(図5)
Q.Metrixから、集積した放射能濃度や、SUVを求めるには、通常の撮影画像に加え、投与された放射能量・投与時間・各種補正・患者体重などが必要となります(図5)
(図6)
解析に用いた線条体と小脳のROIの位置を図6に赤の塗りつぶしで示します。
小脳はダットスキャンが集積するセロトニントランスポータの密度が小さいと言われています。
(図7)
SBRと線条体SUVmeanの結果を図7に示します。
y=0.5402x+3.0943(R2=0.3692)の弱い相関でした。
(図8)
図8でパーキンソン症の閾値とされるSBR4と直線の交点 SUV5.4 の直線で4つのエリア分けをしてみます。グレーの部分は、SBRもSUVも正常か異常か結果が合致した症例、青○で示したのは、パーキンソン症が疑われたが、画像診断上は正常であったいわゆるSWEDDs(Scans Without Evidence of Dopaminergic Deficit)と考えられる症例と考えられます。
ここで、今回注目したのは、赤○で示した症例で、SBRは4以下でパーキンソン症と診断されますが、RIのトレーサーとしては、高い集積率を示した症例です。
これらの症例を図9に示します。
(図9)
(図9)上段と下段左が対象症例で、下段右は正常例です。
右下隅にそれぞれのSBRを提示しています。対象症例は、線条体周囲の非特異的結合能カウントも高いのでSBR低値となったはずですが、画像的には正常例との差が明らかではありません。
(図10)
図10に、SBRの式と線条体周囲のカウントに影響を与える因子を示します。
このような言い方は、言い過ぎかもしれませんが、SBR=線条体カウント/バックグラウンドカウントで、分母のバックグラウンドカウントは、自立神経の状態・投薬・散乱線(コリメータ等)などにより大きく変化します。
(図11)
図11は、線条体SUVmeanと小脳SUVmean(グラフ上はBG表示)の分布を示します。
SBR計算の分母となるBGのトレーサー集積率にバラつきがあることがわかります。
(図12)
この、小脳SUVmeanを、SBR4で2群に分けて、小脳SUVmeanの違いを見てみました。(図12)
SBRが高い群では小脳SUVmeanも高い関係にありました。非特異的結合能領域のカウントと小脳のカウントを直接比較検討していませんが、この二つの間に相関があるとすれば、SBRは過少評価される傾向にあると言えます。
Lancet Neurol. 2007 Apr;6(4):305-13.
(図13)
DLBのフェーズ3 海外他施設試験では、感度が平均77.7%と低めなのも、この関係が影響しているのかもしれません。平均値の仮定であって、逆のパターンもあり得るので、Q.Metrixを用いて、ダットスキャンの集積率を定量値として算出することは、有用であると考えられます。(図13)
(図14)
まとめますと、SBRと線条体SUVの間には、中程度の相関が認められました。ダットスキャンの線条体以外の脳内の集積は、投与量と直線回帰しない因子も考えられるのでSBRの評価に注意が必要です。(図14)
(図15)
また、線条体の定量には、部分容積効果が完全に補正されないことなど、注意が必要です。非特異的結合領域のカウント(SBR算出の分母因子)は低いので、散乱線補正や減弱補正によって、ノイズが増幅される可能性も考えられるので注意が必要です。(側頭錐体骨の高度集積など)
以上、第56回 日本核医学会 学術総会で発表させていただきました。
Sensitivity and specificity of dopamine transpoter imaging with 123I-CIT SPECT in dementia with Lewy bodies:a phase
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