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【Digital PET/CTの導入に際し、PETセンターの運営につきお話を伺いました】
今月号掲載内容:
次号掲載予告:
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<脳神経外科医のPET導入の動機> |
当法人の厚地政幸会長は脳神経外科医で転移性脳腫瘍に関心がありました。脳腫瘍の治療に至る前に原発の腫瘍を早期で発見したいと考え、非侵襲性(non-invasive)ということに着目しPETを導入しました。PETを脳腫瘍の治療に役立てるというのではなく、悪性腫瘍が転移する前に早期に発見したい、脳腫瘍についても開頭手術をせずに放射線や化学治療、ホルモン療法等を用いて治療ができれば予後を良くできると考えました。厚地政幸会長の考え方の中には絶えず非侵襲性が有ります。PET導入当初、『進行がんを見つけて延命治療するような医療』は時代遅れで、21世紀の医療は「予防医療」であり、治療においても非侵襲性と言うことを考えました。外科医として治療をしてきたからこそ、患者さんの身体的・精神的・経済的負担を極力軽減したいという考えでありました。治療においてもピンポイント治療や血管内のプラークのステント治療も進化しています。非侵襲的な治療をするためにも早期の発見は重要と考えPETを導入しました。 脳領域では、O-15ガスのPET検査を通して機能診断に関心が有りました。九州では九州大学で行われていましたが大型のサイクロトロンが必要であり、合成も複雑でした。FDGの合成装置と超小型サイクロトロンの登場がPET導入のきっかけになりました。FDG-PETは、死亡原因のTOPである腫瘍の検査ができます。既に脳ドックで「くも膜下出血」の原因でもある未破裂脳動脈瘤など脳疾患の早期発見の有効性を体験していたここともFDG-PET導入の大きな要因になっています。
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<導入時の具体的対応> |
15年前は西日本の民間病院として初めて開設と言うこともあり、市民の方々のPETに対する認識・理解は全くと言って良いほど無い状況でしたので、市民の方々へ認識を深めていただく為に、県内外を問わず広報活動を行って来ました。 当初、多くの市民の方々は「動物(ペット)病院」の開設なのかと言う程度の理解でありました。 そこで、大小様々な会合等にも参加し、PETに対する認識と理解を深める活動を地道に行って参りました。この様な活動を当法人厚地政幸会長・厚地正道理事長他経営幹部も理解し、様々な展開を後押し頂きました。つまり、PETセンター職員に「新しい発想でイノベーティブなことにチャレンジ」出来る環境を与えて頂きました。
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<開設後の近隣へのPET施設の説明> |
近年、一般の方の放射線への関心意識が高まるとともに近隣の方やマンションの施工業者さんから住民への影響がないか?などの問い合わせを受けるようになりました。
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<FDGデリバリとビジネスモデルの変更> |
FDGデリバリは投資も少なく検査可能なので、当クリニックに限らず多額の初期投資を行ってきた医療機関は脅威であったと思います。同じ医療圏の中でそのような施設が開設する事を鑑み、ビジネスモデルを変化させる必要性が生じてきました。医療機関が持続するためには医療行政や福祉行政の変化に伴い早い段階で対応することが重要となり、検診内容は自ら新しい企画提案を絶えず考察して行く必要があると考えます。 例えば検診に市町村行政から助成をして頂くなど、その重要性を認識理解していただく為のアプローチがその一つであります。鹿児島県内の市町村が行うPET(がん検診)検診と言うのは他県には無いビジネスモデルであります。私どもが行った事は、行政側から与えられるのを待っているのではなく、行政側に積極的にアプローチを行いました。特にPET検診(がん検診)は、受診料が高額であり、受診者の経済的負担軽減の一つとして助成事業は大きなポイントとなります。また社会問題の一つである医療費の増加にも早期発見・早期治療を行う事で、将来歯止めをかける要因の一つとなればとの思いもあります。鹿児島県の場合、他県に比べ離島が多いと言うこともあり、検診と言う意識の高さは他県と違うところかもしれません。現在本県は43市町村で構成され内36市町村がPET検診(がん検診)で助成事業を創設していただいております。今この事を振返るとこの新しいビジネスモデルは、新参者だったこそ成し得たイノベーションだったと思います。 サイクロトロン施設として、医療の質の持続のためには短期ではなく次の更新までの長期的期間を視野に入れたキャッシュフローを考えることが重要です。今回のDiscovery MIの次の装置や市場動向を見据えた資金の調達ができないとPETセンターの継続はできません。これからも検査数を減らさないために常に対策を打ち続けることが必要です。
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<PET検診(がん検診)助成事業を作るにあたってのヒント> |
元来、当法人には厚地脳神経外科病院の自由診療の一つとして「脳ドック」の基盤が有り、各種共済組合・一般企業・市町村住民を対象とする助成事業を施策として実施しています。
この有用な検査を広く多くの皆様に受診して頂くためにはどうすれよいか? まず、既存の検診メニューやサービスがいつまでも存在し続けると言う常識を否定してみること、「提供する立場」から「利用(使う)する立場」に発想を転換することなど。小さなイノベーションから大きく膨らませて行く重要性を認識し、常に新しい情報をインプットしそれを行政に提供する。しかしながら、提供した担当者のアンテナの高さや感度、現状認識の深さなど各々によって違いますので、その状況に応じた対応を行うことが大きなポイントの一つであります。
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<自治体検診から企業検診へ> |
現在は市町村同様、企業にも情報発信しています。PETに助成をする企業は年々増加傾向にあります。企業によって受診料の負担割合は様々な状況ではありますが、受診時に一定の自己負担を拠出するのでは無く、社内規程の受診対象年齢前から積立をしたり、若い新入社員の時から積立を行う、残りを会社が負担する。若い年齢層から健康管理に対する意識付けを行う事や育児・教育費がかかる年齢層の方々の受診の機会など、極力経済的に負担にならないよう社内受診制度創設の提案を行っております。対象は地元企業だけで無く、鹿児島に支店があるような企業にも行っています。現在では、各種共済組合と集合契約を行い、検査を実施している企業もあります。 企業にとっては人材の確保が重要課題で、経営者の中には「人材のザイは、財産のザイである」と考え、「本人だけではなく家族の検診も行いたい」と言う考えの会社もあります。家族も含めた健康が無ければその企業の仕事も無し得ないと考える経営者もいらっしゃいます。検診を行う企業に対する優遇策として、福利厚生制度として必要経費にすることが考えられますので、制度上の優遇措置情報を発信して行きます。検診の紹介だけではなく、トータルのパッケージとして紹介する必要があるのです。
行政の場合のPET検診のメリット:
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<PET検診の変遷> |