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 核医学検査装置 お客様の声
 速報:アジア初、GE製Digital PET/CT Discovery MI稼働 ~技術編~

 

 

 

 1.はじめに

南先生
厚地記念クリニック PET画像診断センター
診療放射線技師 技師長
南 哲也 先生
PETに携わらせていただいて最初のPETカメラがAdvance NXi(2002.4稼動開始)でした。PET専用機で当初は2D収集のみでした。後にバージョンアップにて3D収集も可能になりましたが、まだ当時の処理系機器の能力では処理に時間がかかり臨床ではあまり使いませんでした。Transmission ScanはGe-68のピンソースで行なっており、ピンソースの使用記録、管理、発注は非常に煩雑で大変でした。撮影はEmissionに2分、Transmissionに1分がスタンダードで通常7Bedで収集に21分かかりました。初めて自施設で、自前で合成したFDGを使って撮影されたAdvance Nxiの画像をみたときの感動は忘れられません。また自分の少ない見聞で見知っているPET画像と比べてはるかに綺麗な画像で驚いた記憶があります。

その2年後には待望のPET/CT、DiscoveryST(以下、DST 2004.11稼動開始)が導入されました。吸収補正にCTデータを使うことでTransmission Scan分の検査時間が短縮でき、患者さんにもやさしくスループットもあがりました。画質の向上はいうまでもなく、さらに後にバージョンアップし再構成にVuePointが使えるようになってからの綺麗な画像は衝撃的でした。

その5年後に呼吸同期機能が搭載されたDiscovery600(以下、D600 2009.8稼動開始)が導入されました。これも当時、日本初号機でしたが、呼吸同期で実際に動く肺の腫瘍を見た時もその動きに感動しました。また再構成にVuePoint HDが使えるようになり、さらにノイズの少ない綺麗な画像になりました。D600設置時から性能評価試験をGEの協力を借りながら自分たちで行い、数値としても性能の向上を確認できるようになりました。

D600も今回バージョンアップを行いDiscovery 610(以下、D610)となりました。Q.Clearが使えるようになり、体幹部での画像は今回導入したDiscovery MI(以下、DMI)のものと遜色ない画像が出せていると思います。

以下、DMI本体、コンソール、撮影・再構成条件、D610との使い分けについて述べます。

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Advance NXi
(2002.4稼動開始)
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Discovery ST
(のちにDiscovery ST
Elite performance)
(2004.11稼動開始)
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Discovery 600
(のちにDiscovery 610)
(2009.8稼動開始)
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Discovery MI
(2016.12稼動開始)

 

 2.Discovery MI本体

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チラー
 
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トンネルの天井
そして今回、アジアでは初、世界でも4台目となるSiPM半導体PET検出器を搭載したDMI(2016.12稼動開始)が導入されました。これまでも毎回綺麗な画像に驚かされていましたがさらにそれを上回るようなインパクトと驚きがありました。体幹部ももちろん綺麗ですが脳(10分収集、FOV30、Matrix256 β値120)の画像はこれが機能学的写真か?解剖学的写真と見紛うような画像が出せています。

当初心配していたチラーでの水冷式のクーリングシステムですが、定期的にクーラント液の量を確認するぐらいで全く安定稼動しています。また全く新しいシステムであったので故障の心配をしていたのですが稼動開始以来、臨床を止めるような故障は1回も起こしていません。

これまで、PET装置の時から頭尾方向の視野は約15㎝でしたがDMIは約20㎝あります。PETの場合は全身撮影においてオーバーラップがあるので、これまでは実際の有効視野は1bedあたり12.5㎝でした。DMIも従来と同じオーバーラップ21%(オーバーラップは可変)で撮影できますので有効視野は15.8㎝になり1mを撮影するのに従来9bedでしたがDMIは7bedになりました。

これまで、患者さんの入る本体の円柱のトンネルの天井は真っ白で患者さんの目の焦点が合わせられなくなり気分が悪くなられる方もいましたが、DMIの天井には患者さんの目の焦点が合うように模様が描かれています。

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校正線源
DMIの校正線源は、DSTやD600と異なり環体ファントムで行います。DSTやD600に比べてキャリブレーションが早くなりました。導入後半年たちますが約3分で終わります。表示付き認証機器になり予防規程からはずせるため、発注や管理も楽になりました。また、環体ファントムは非常に軽く、扱いも簡単です。

 

 3.コンソール

コンソールは左側に操作画面、右側に画像処理画面の二画面構成になっています。画像処理画面にはGE製ワークステーション AWの機能が搭載されており画像収集を行いながら画像処理ができます。当施設ではGE製 universal viewerを導入しuniversal viewer上で開設以来読影に使用されているGE製 核医学診断用解析装置Xelerisが動いています。

また、過去画像との比較の精度を上げるQ.Prepやコンソールから寝台の降下がコンソールからできる機能も付きました。ベッドごとに収集時間を変えられるのも、導入初期の撮影条件を決めるためには便利だと思います。

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 4.撮影・再構成条件

撮影条件:
1分でもきれいな画像が得られますが、スケジュール上の余裕もあるので通常は2分x7bedで撮影しています。受診者の体調の悪い場合には、1bed1分で撮影することもできます。脳は以前と同じ1bed 10分で撮影しています。収集時間の短縮も考えましたが、更なる画質の向上を求めてあえて収集時間は短くしませんでした。 頭尾方向の範囲が15cmから20cmに広がったので、脳の撮影範囲設定の際に、従来機では上下が切れないように留意していましたが、DMIではさほど気を使わなくて良くなりました。

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再構成条件:
Q.Clear
DMIには、逐次近似の繰返し演算を従来の10倍以上かけることができるQ.Clearが搭載されています。繰り返し演算を多くすればデータの収束が行われより真に近いデータとなりますが、従来の逐次近似ではノイズも増幅されて画像が悪くなっていました。ノイズを除く技術が有るには有りましたが、データ処理時間がかかるため臨床では利用できませんでした。Q.Clearはノイズを除いて十分に収束するまで繰り返し演算をしても2分以内に画像が出てくるので、2分の収集時間の間に画像処理が終わっています。同時に従来のpoint spread function補正やtime of flightを組み込んだ3D-OSEMの画像処理も行えるので、従来の画像とどれくらい良くなったのかも比べることができます。17/4のVPHDとQ.ClearのSUVにおいては従来に比べ約80%増加しています。SUVが高くでるので過去画像と比較するときは気をつけなければならないことが課題になると思います。

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全身と脳のβ値の検討から決定について:
DMI導入まではデータ量等を鑑みMatrix128を採用していましたが、今回導入にあたり再度Matrixについても再検討しました。DMIではMatrixは128、192、256、384、と選択できそれぞれ画像作成し検討しました。体幹部では192(FOV55)、脳では256(FOV30)としました。
β値についても、体感部ではGE推奨値である350を基準に100刻みで画像をつくり検討しました。陣之内院長の求められている「肝臓にノイズが無くそれでいてボケの少ないはっきりした集積画像」を追求し、β値は700としました。
脳でもβ値を100から300程度まで検討しましたが最終的にβ値は120としました。非常にシャープで高解像の画像が出せています。
Time Of Flightはもちろん採用、いろいろ賛否はありますがPSF補正についても採用しました。

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CT撮影:
CT側では、管電流値は従来から被ばく低減を考慮しMAX80mAのSmartmA(NoiseIndex28.50)で行い、頭部など低いところは15mAで撮影してきました。今回逐次近似再構成法であるAsir-Vが搭載されたことで、これまでと同じ条件でアーティファクトの少ないきれいなCT画像が出せています。
従来気になっていた下ろした腕からのストリークアーティファクトも軽減されmAsを上げることなくノイズの少ない画像が出せるようになりました。

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 5.DMIとD600の使い分け

D600は導入当初、非常にきれいな画像であると思いましたが、DMIと比較すると明らかに画質が落ちます。そのため、DMIとの使い分けが必要かと考えました。D610にUpgradeすることでQ.Clear画像処理ができるようになり、体幹部ではDMIに近い画像が出せています。FDGの腫瘍検査ではQ.Clearを搭載したD610でも十分にきれいな画像が出せていると思います。

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 6.まとめ

pic17 今回、アジア初となるSiPM半導体PET検出器搭載のPET装置であるDMIが導入されました。設置前は水冷式のチラーが必要である事、国内での稼動実績が無い事等不安要素がありましたが、いまのところ臨床を止めるような故障もありません。
画像に関してもこれまでのものと比べても圧倒的に良く、性能評価試験でもすばらしいスペックを確認しました。
これからの撮影側の課題としては、収集時間を短縮してスループットをあげる、現在オーバーラップを23.9%ほどとっていますがまだ少なく出来るか検討したいと思います。またこれだけの良いスペックを維持するよう精度管理、環境管理にもこれまで以上に気をつけたいと考えています。

 

 

※お客様の使用経験に基づく記載です。仕様値として保証するものではありません。

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