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 核医学検査装置 お客様の声
 Discovery 610 Motion へのアップグレードと Q. Clear の臨床的インパクト

 

社会医療法人財団 慈泉会 相澤病院
放射線画像診断センター/PETセンター
小口 和浩 先生

 <はじめに>
当院では2010年に GE Discovery PET/CT 600(以下D600)と、Discovery PET/CT 600 Motion(以下D600M)を導入した。画質的にも機能的にも大変満足できる装置であるが、導入7年目を迎え、最新鋭のPETカメラと比べるといささか画質の見劣りは否めない。機器更新を望むところであるが、県内の基幹病院が次々とPET/CT装置を導入し院外からの紹介PET検査が激減する中、収支的に新しいカメラへの更新は困難であった。そこで、2台のPET/CT装置のうち1台をアップグレードすることを選択し、2016年10月にD600MをDiscovery PET/CT 610 Motion(以下D610M)にアップグレードした。これによりQ. Clearによる再構成が可能となったので、その使用経験を報告する。

 

 <日常診療における使用感>
Q. Clearは従来の VUE Point HD(以下VPHD)に比べ再構成に時間を要するが、D610Mは 24rings、Axial FOV 157mm と最新の装置よりもZ軸が短いため1ベッド毎の再構成時間は短く、1ベッド2-3分で撮像するとほぼリアルタイムに再構成が完了する。VPHDと同様の運用が可能であり、撮像直後の読影や遅延像撮像の指示などに支障をきたすことはない。
当院では従来のD600と2台混在しての使用になるため、Q. Clearの再構成パラメータβ値は、見た目の分解能や、VPHDとの類似の画像の印象となるようにβ300を選択した。また、空間分解能と再構成時間とのバランスから画像 matrixは従来通り 192 x 192としている。

 

 <ファントム画像>

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図1 NEMA body Phantom(30分撮像 192 x 192 matrix)及びカウントリカバリ特性
※画像クリックで拡大します

4対1のFDG濃度の球体ファントムの撮像では、Q. Clearを用いた再構成では、細かなノイズが少なく、小さな球の集積がより明瞭に強く描出されている。

 

 <遅延像における1ベッド撮像>

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図2 上腹部1ポジションの遅延像
VPHDでは上下縁近くのスライスはノイズが多く評価できないのに対し、
Q. Clearでは辺縁までノイズ無く良好な画像が得られる

Q. Clearでは、撮像範囲辺縁部のノイズがみられない。遅延像などの限局した撮像に際しては、従来のVPHDでは評価が難しかった撮像範囲辺縁までノイズなく観察することが可能である。

 

 <呼吸同期撮像による肺転移の診断>
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図3 多発肺転移 Q. Clearでは小さな結節の集積が明瞭かつ強く描出された 

呼吸同期 motion match 3 bin 10分撮像の呼気相画像である。VPHDに比べ小さな肺転移の集積が極めて明瞭に描出されている。

 

 <小さな乳癌>

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図4 乳癌 ※画像クリックで拡大します
VPHDに比べ、Q. Clearでは、正常乳頭の集積は 129%、乳癌の集積は 174%上昇した

この症例では、VPHDに比べて Q. Clearでは、乳癌の小さな集積はより強く(SUVmax 1.9 → 3.3 174%)、同様のサイズの正常乳頭への集積は大差なく(SUVmax 1.4 → 1.8 129%)描出されている。実際の集積をより正確に表現している可能性がある。

 

 <スリガラス濃度の肺癌>

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図5 肺スリガラス濃度結節 Q. Clearは、ノイズが少なく淡い集積も認識しやすい

ノイズが低減することにより、小さな強い集積のみならず、スリガラス濃度の肺癌のような淡い集積の病変の評価に際しても、集積の有無の判断が容易となる。

 

 <冠動脈NaF-PET/CT>

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図6 急性心筋梗塞 ※画像クリックで拡大します
LAD #7 99% ステント治療23日後、心電図同期冠動脈NaF-PET:VPHDでは不明であった
冠動脈プラークへの集積が、Q. Clearでは明瞭に描出された

当院で臨床研究で行った冠動脈NaF-PET/CTのVPHDと Q.Clearの画像の比較である。D600では既報にあるような冠動脈プラークへの集積の画像が得られず半ば諦めていたが、同じデータを Q. Clearで再構成したところ、プラークの集積が明瞭に描出され検出能が向上した。再構成方法の違いによってこれほどまでに明瞭な画像が得られたのは驚きであった。

 

 <課題>
Q. Clear は、SUVの高い定量性をうたっているが、再構成に point spread function の分解能補正が組み込まれているため、小さな病変のSUVが過剰に高く算出されることがあり、注意を要する。診断は Q. Clearで行い、SUVはVPHDの画像で測定するというのは、臨床現場では現実的とは言えない。また、Q.Freezeは呼吸同期の素晴らしいアイデアの一つであるが、カウントが十分でない場合は、それぞれのPhaseの再構成時にQ.Clearのβ値を高く設定せざるを得ないことがある。 この画像を非線形加算処理(Q.Freeze)するが、β値の高いなめらかな画像を足し合わせることになるため、本来の有用性が十分発揮できないと考え、当院では従来通り Motion match 3 bin 呼気相の画像を Q. Clearで再構成して診断している。

 

 <まとめ>
D600からD610へのバージョンアップを行うことで、Q.Clear画像再構成が搭載可能になり画質が大幅に向上した。
撮像時間がやや長いことを除けば最新のDiscovery IQと同等の機能を得ることができる。
またメンテナンスサポート期間の延長で装置の延命も図ることができる。

 

※お客様の使用経験に基づく記載です。仕様値として保証するものではありません。

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