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PET装置更新に伴う申請関連について

 

医療法人 光陽会 魚住クリニック
診療放射線技師長 放射線取扱主任者 千原 宏 先生

 PET装置を更新する際に機種選定と並行して進めなければならないのは、関連法令に準じた各申請書類の変更届です。この手続きが完了しなければ更新機種による診療は認められないことになります。放射線管理者(放射線取扱主任者)には装置更新作業の日程に支障を来さないように、遅滞なくこの手続きを進める事が要求されます。 ご存じのようにPET検査施設は、『放射線障害防止法』(管轄:原子力規制委員会)及び『医療法』(管轄:厚生労働省)の二重規制を受けています。従って各変更届の申請手続きは両者の内容に矛盾が生じないように整合性に留意しながら慎重に行う必要があります。
手続きは各PET検査施設開設時の(その後、変更届等を行っていればその)使用許可の内容、及び装置更新内容によって異なります。 今回、私たちは更新PET/CT装置としてGEヘルスケア・ジャパン社の「Discovery IQ」を導入することになり、先に述べた各変更申請手続きを行いました。当クリニックでは今回が2度目の手続きになりますが、今後装置更新を計画されている他のPET施設の御参考になればと思い、この稿でその過程をご紹介したいと思います。

 

 <クリニックの概要>
 魚住クリニックは2003年8月に熊本県では最初のPET検査施設として開設致しました。
医療用サイクロトロンによりFDGを院内製造し、これを用いたFDG-PET検査を主な業務としています。PET装置は2台(1台はPET/CT装置、他はPET専用装置)を保有しています。このPET専用装置が導入以来12年ほど経過しており、今回更新対象装置になりました。

 

 <装置変更による申請内容変更点>
  • X線CT装置が新たに加わる
  • PET専用機に装備されていた減弱補正用137Cs線源(740MBq)の払出処理を行う

 

 <変更申請スケジュール>
それぞれの窓口は
  • 放射線障害防止法・・・原子力規制委員会(放射線規制室)
  • 医療法・・・PET施設を管轄する保健所
です。
図1.に今回行った変更申請スケジュールの時系列を示します。

PET装置更新に伴う申請関連スケジュール

放射線障害防止法
(原子力規制委員会)

10週間前 問い合わせ:必要申請書類等手続きの確認
 ・許可使用に関する軽微な変更に係る変更届
 ・使用許可申請書に関する手続き様式及び添付書
6週間前 作成書類(仮)を規制委員会に送付し内容の校正を受ける
4週間前 作成書類(仮)に対する校正結果の連絡
2週間前 作成書類を放射線規制委員会に提出
受領後3~4週間で放射性同位元素使用許可証の交付

PET装置更新

線源受領後
1ヶ月以内
表示付認証機器使用届提出


医療法
(保健所)

8週間前 問い合わせ:必要申請書類等手続きの確認
 ・診療用エックス線装置に関する変更届及び添付書
 ・診療用放射線同位元素に関する変更届及び添付書
3週間前 作成書類及び遮蔽計算書(X線CT・非密封放射性同位元素)
その他添付書類の提出

PET装置更新

測定後速やかに 漏洩線量測定結果報告書の提出

図1.変更申請スケジュールの時系列

最初に各窓口に連絡し担当官に今回の機種更新の内容を詳しく説明し、どのような手続きが必要かの指示を仰ぐことから作業は始まります。 これは少なくとも2ヶ月前には行う必要があります。

*放射線障害防止法

窓口は原子力規制委員会・放射線規制室になります。こちらの方が医療法の手続きより煩雑になりますので2ヶ月半前に電話で指示を仰ぎました。

  • 許可使用に関する軽微な変更に係る変更届
  • 使用許可申請書に関する手続き様式及び添付書

の提出指示を受けました。

今回の更新で放射線障害防止法上変更になる点は従来機種であるPET専用機に装備されていた減弱補正用137Cs線源(740MBq)の払出にあります。その他、機種更新に伴う遮蔽計算変更が必要になるような検査室の工事等はありませんでしたので、放射線規制室担当官からは、「許可使用に関する軽微な変更に係る変更届」になるとの見解をいただきました。また、前回の変更届提出から今回までの間に医療法施行規則の一部を改正する省令が施行され、放射線障害防止法と医療法の管理区分が明確に規定されました(サイクロトロンで放射性核種を生成し、薬剤合成するまでを放射線障害防止法での規制とし、薬剤投与後は医療法により規制する)。これを受けて今回の申請書では放射線障害防止法で対象外となった申請書の該当部分の削除や実効線量計算の際の計算地点の区別等の書き換え指示がありました。

これらを踏まえ作成した変更申請関連書類を6週間前に原子力規制委員会に送付し、校正を受けました。原子力規制委員会の返答はこれより2週間ほど要しました。かなり細かな点まで修正を求められますので、最終提出書類の作成にはさらに2週間ほど必要でした。したがって、すべての手続きが完了したのはPET装置更新の約2週間前でした。変更申請書類の受領後3週間ほどで「放射性同位元素使用許可証」が交付されます。

また「Discovery IQ」では校正用線源として表示付認証機器が用意されています。表示付認証機器は放射線障害防止法上、放射性核種としての管理は求められず、受領後1ヶ月以内に「表示付認証機器使用届」を提出するだけの比較的簡単な手続き及び管理で済みますので、使用者としては助かります。ただし線源の購入は思いのほか時間がかかります。日本アイソトープ協会に依頼するのですが、申し込みから線源受領まで2ヶ月以上かかることもあると言うことでした。幸いにも今回は1ヶ月半ほどで受領出来たので装置更新作業のスケジュールに支障を来すことはありませんでしたが、こちらも時間に余裕を持って手続きを行うことが必要です。

*医療法

窓口は地域を管轄する保健所です。
今回の更新で医療法(医療法施行規則)上変更になる点は、減弱補正用137Cs線源(740MBq)の払出、およびX線CT装置の増設になります。こちらは保健所を訪問して担当官と直に話し合うことが出来ますので、申請書作成作業は比較的容易でした。

  • 診療用エックス線装置に関する変更届及び添付書
  • 診療用放射線同位元素に関する変更届及び添付書

を提出するようにとの指示がありました。

この添付資料の一つにX線CTに係る遮蔽計算書の作成があるのですが、今回はGEヘルスケア・ジャパン社で作成をしていただき助かりました。(前回の装置更新の際は当方で作成)
申請書及び添付資料の作成は装置更新の3週間ほど前に終了しました。

その他に、装置設置後の提出書類として漏洩線量測定結果報告書の提出義務があります。これは専門の機関が実測し、報告書を作成します。この提出をもって一連の変更申請は完了します。

その後、通常の場合は施設への立入り検査(装置の設置状況やX線CT装置の定格出力の確認、標識等の確認)が行われます。これをパスして更新装置の臨床での使用が許可されます。

 

 <変更申請時の留意点>

今回変更申請を行った経験から留意すべき点を挙げてみます。

  • 担当省庁と密に連絡を取り合い意思の疎通を充分に取る
  • 当然のことではありますが、これが中々難しい作業です。装置更新内容により変更申請の内容は変わります。例えば放射線障害防止法における”軽微な変更届”か、”変更届”になるかで手続きの煩雑さは大きく変わります。特に原子力規制委員会の担当官とは電話もしくはメールでのやり取りになりますので、しっかりとこちらの更新計画の詳細を理解してもらう事が肝要です。時には図面や計画書をメールで送付して説明する事もあります。

  • 日程には十分な余裕を持つ
  • 時間に余裕を持って望みたいのは山々ですが、装置更新日程の詳細が決まるのは得てして期日ギリギリになりがちです。したがって、ある程度大まかな計画の段階から各省庁の担当部局に連絡を入れて準備を進めておくと良いと思います。特異な例として申請が年度をまたぐ様な場合、担当官の配置転換によって進行が滞る事があります。今回、私たちは担当官の引き継ぎなどの諸事情によって1週間程手続きに遅れが生じました。
    また変更申請とは別ですが、先に述べましたように校正用線源の購入も思いのほか時間がかかります。こちらも早めに日本アイソトープ協会に連絡を入れて納入期間を確認すると良いでしょう。

以上、私たちが経験したPET装置更新に関わる変更申請手続きの概略について述べさせていただきました。今回が2度目の経験でしたが、申請書だけではなく図面の変更や遮蔽計算等、煩雑な作業であることは間違いありません。また変更に関係ない部分での書き換えを指示されることもあります。いずれにしても不明な点は担当官と密に連絡を取って進めていけば、親切に対応してくれます。

今回GEヘルスケア・ジャパン社のご協力もいただき、ほぼ予定したスケジュール通りに変更申請手続きを終えることが出来ました。深謝いたします。

※お客様の使用経験に基づく記載です。仕様値として保証するものではありません。

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