市立池田病院 医療技術部放射線科 核医学担当 宇戸 朋之 様 |
1.緒言 |
画像処理ワークステーションXelerisにはPoisson Resampling*(ポアソンリサンプリング)と命名されたカウントリダクションを実行するアプリケーションがある。核種の崩壊からガンマ線の発生、はては核医学画像のイメージ収集カウントに至るまでそれらの分布は時間的、空間的にポアソン分布に従っている。ポアソンリサンプリングは、ポアソン分布の理論値にマッチするようにイメージ収集カウントを減算すると聞く。
ポアソンリサンプリングの名称の由来であるポアソン分布を簡単に説明する。
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2.方法 |
ポアソンリサンプリングによってカウントリダクションした画像について
これらを確認するためいくつかの実験を行った。 次に示す2種類の画像を得て比較検討した。 2-1.外寸で長辺600mm,短辺460mm,厚さ45mmのアクリル製面線源に99mTcを400MBq注入した。その上にアクリル板を配置して、コントラストをもったイメージを撮像した。基準画像に対してプリセット90%からプリセット10%までの10%ずつとプリセット5%の10種類を撮像した。比較対象のポアソンリサンプリング処理はポワソン90%からポアソン10%までの10%ずつとポアソン5%の10種類の減算処理を行った。
2-1-1. 各領域の平均カウントとSDが等しくなるのか確認した。各画像についてFig.1に示す3つの関心領域の平均収集カウントとSDを求め、平均収集カウントの関係、SDの関係についてグラフ化した。また平均収集カウントに対するSDについてもグラフ化した。
2-2.前述の面線源のみで撮像した。基準画像に対するプリセット50%の画像と、基準画像のポワソン50%画像を得た。
2-2-1.プリセット50%の画像と、ポアソン50%の画像からNoise power spectrum(NPS)を測定しスペクトルの変化を確認した。
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3.結果 |
面線源の上にアクリル板をのせた画像のうち基準画像と、50%、10%の画像をFig.4に示す。視覚的にポアソン50%と10%、プリセット50%と10%のそれぞれの画像は区別がつかない。
3つの関心領域をまとめてカウントの対応とSDの対応のグラフをFig.5に示す。平均カウントの関係でグラフの近似式はY=1.00X+0.04、相関係数=1.0、SDの関係でグラフの近似式はY=1.00X-0.09、相関係数=1.0であり、それぞれ1対1の対応を示しており各方法で得た画像間に差が無い事を示している。
また、平均カウントに対するSDの関係を示したグラフをFig.6に示す。これも各方法で得た画像間に差が見られない。
NPSカーブをFig.7に、1次元ラインプロファイルカーブをFig.8示す。NPSについては画像のX方向とY方向のそれぞれについて計算するが、それらに大きな違いが無いのでY方向のみを提示する。これらにおいても各方法で得た画像間に差が見られない。
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4.考察 |
Fig.5に示されるようにプリセットカウントとポワソンリサンプリングによって平均カウントを変化させた場合、平均カウントは完全な一致を見せSDもほぼ一致している。SDは多少のばらつきがあるが、統計誤差と思われる。平均カウントとSDの関係では、ポアソン分布に従って理論的に求めればSDは平均カウントの平方根になるので上に凸な曲線を描く。Fig.6の曲線はポワソン分布の理論通りの曲線であり、プリセットカウント、ポアソンリサンプリングの両者は一致した。NPSは画像ピクセル間の自己相関に関連し、プリセットカウントの画像に対してポアソンリサンプリングの画像でNPSが大きく変化するのかどうかが注目されるが、Fig.7が示すように両者に大きな違いは無く、ポアソンリサンプリングのアルゴリズムの過程にピクセル間の自己相関に影響する要素は無いと思われた。つまり画像のスペクトルについてもプリセットカウントとポアソンリサンプリングは同じである。
ラインプロファイルカーブによる評価は、コントラストをもつ部分の変化の様子を確認するために行った。
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5.結論 |