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 核医学検査装置 お客様の声
 RI内用療法の現状と将来

 

関西医科大学 総合医療センター
診療部長 教授 宇都宮 啓太 先生

 

アイソトープ内部照射療法とは放射性医薬品による核医学治療であり、粒子線放出核種を病巣に集中(ターゲッティング)させて体内から選択的な放射線照射を行うため、内用療法あるいは内部照射療法と呼ばれます。外部照射治療に比べ、低線量率かつ持続照射となるため生物学的効果が異なります。利点はがん病変の部位や個数にかかわらず治療できることです。現在国内で使用されている製剤には以下の種類があります(Table.1)。

Table.1 内用療法の種類
131I グレーブス病、甲状腺癌
131I-MIBG 褐色細胞腫、神経芽腫
90Y 悪性リンパ腫での有効性が確立
223Ra 去勢抵抗性前立腺癌の骨転移
89Sr 転移性骨腫瘍の除痛療法
・その他  

 

 ●131Iについて

131I 甲状腺治療は、非密封治療としてはヨードを体内に投与すると甲状腺組織に取り込まれることを利用してヨウ化ナトリウムカプセルという放射性医薬品を経口投与し、甲状腺病変の組織に取り込ませ、β線で甲状腺癌(特に手術後に肺や骨などに転移した場合に有効)やバセドウ病を治療する方法です。 バセドウ病の治療法においては、ATD(抗甲状腺薬)、外科的手術、放射性ヨード内用療法が用いられます。
日本における初回治療は一般的にATDが用いられています。放射性ヨード内用療法が用いられるケースとしては、ATDで副作用が出た場合やATD長期投与で寛解が得られない場合、あるいは確実に治療したい場合などに外科的手術あるいはRIが選択されます(Fig.1)。

131Iの使用に関して、バセドウ病の場合は500MBqまでが外来で使用することができ、2010年に出された厚生労働省からの患者の退出基準の通知により1,110MBqの投与であれば外来においてアブレーションを行うことが可能となりました。また、1,110MBqを超える場合は遮蔽された放射線治療病室を使用することで可能となります(Fig.2)。

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Fig.1 バセドウ病における131I内用療法の適応
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Fig.2 131Iの効能効果と投与量
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当施設でのバセドウ病の治療の流れを紹介します(Fig.3)(Fig.4)。
まず内分泌内科より治療の依頼があり、主治医からの説明が行われます。
その後単位体積・単位重量あたりにある程度以上の線量にする為、まずは超音波にて体積重量を測定し投与量を決定します。投与10~14日前よりヨード制限を開始し、ヨウ化ナトリウムカプセル投与後3日までヨード制限を継続します。また、投与3日前より抗甲状腺薬を中止する為、患者さまの病勢に応じてβ遮断薬を投与します。
投与後は1か月毎に経過を観察していきます。治療効果は徐々に現れるので、元々服用していた抗甲状腺薬を再開していき、治療効果が十分でなければ再治療を検討することも出来るため、ある程度の大きさまでは外来での治療が可能です。

fig.3
Fig.3 131Iによるバセドウ病の内用療法(投与まで)
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fig.4
Fig.4 131Iによるバセドウ病の内用療法(投与後)
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投与量の決定については様々な報告があります。
海外では高投与を行うことでhypothyroidismまで落としてしまい、以後はthyroxine(T4)を補っていくという方法がありますが、国内では甲状腺機能を残存する方法が推奨されています。

当施設における投与量の決定方法と、甲状腺1g当りの投与量を示します(Fig.5)(Fig.6)。
一般的には1gあたり3.7MBqを投与するケースが多いですが、500MBqまでしか使用できない為、サイズがあまりにも大きい場合は適正量を投与することが出来なくなります。

fig.5
Fig.5 131I投与量決定の方法
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fig.6
Fig.6 甲状腺1g当りの投与量
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実際のバセドウ病の内用療法前後の画像例を示します(Fig.7)。 個人差はありますが、治療を行うことでサイズが2/3~1/2程度にまで縮小するケースもあります。当院での治療前後での甲状腺重量を比較した結果ですが、治療前のサイズが大きい症例では治療後に縮小していることが確認できます(Fig.8)。

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Fig.7 バセドウ病における131I内用療法の効果
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fig.8
Fig.8 131I内用療法前後の甲状腺重量
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投与量と治療効果の関係を示します(Fig.9)。EuthyroidからStill Hyperまで様々な治療結果に対して投与量との相関は得られませんでした。Fig5. -3)のように甲状腺重量、有効半減期から投与量を決定する方法を用いることで投与量の最適化が図れる可能性はありますが、有効半減期を求める為にはサンプリングを細かく得る必要があり、困難であるというのが現状です。

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Fig.9 131I投与量と治療効果
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次に甲状腺がんに対するアブレーションですが、甲状腺がんは全摘をした後にも皮下に悪性細胞が残存することも多く、アブレーションを併用して治療することで細胞レベルに転移があったところを治療できることで、再発率および遠隔転移再発率が低下すると考えられています(Fig.10)。

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Fig.10 甲状腺全摘術後のRIアブレーションの有用性
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外来でのアブレーションの適応(2010年 甲状腺腫瘍診断ガイドライン)を示します(Fig.11)(Fig.12)。
腫瘍の大きさ、年齢、多発性か否か、リンパ節転移など、複数の条件があります。また1,110MBqを投与する為、被ばくの問題を考慮して生活に関する適応判断も必要となります。

fig.11
Fig.11 外来アブレーションの適応 (臨床的条件)
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fig.12
Fig.12 外来アブレーションの適応 (生活に関する条件)
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実際のアブレーションの成功例を示します。CTだけでは指摘できない領域へ集積していることが確認でき、治療後に明らかに集積が低下していることが認められた症例です(Fig.13)。
甲状腺の全摘あるいは片側だけの摘出後に対側に再発し全摘をおこなった症例のうち残存のあった32症例にてアブレーションを行った結果、アブレーションが成功したケース10例には再発が認められませんでした。

fig.13
Fig.13 131Iアブレーションの成功例
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 ●131I-MIBGについて

MIBGは、ノルエピネフリンと同じ機序でアミン摂取機構により交感神経髄質組織の細胞膜を通過し、細胞内のカテコールアミン貯蔵顆粒に輸送されます。その為カテコールアミンを多く産生する腫瘍、褐色細胞腫、甲状腺髄様癌、神経芽細胞腫などに対してβ線で治療することができます。投与量としては少なくとも3.7GBq、場合によっては7.4GBq以上を投与する必要があります。日本では保険適応ではありません。

 

 ●90Yについて

内用療法はどのように腫瘍細胞へ治療薬を集積させるかが重要です。ゼヴァリンはCD20抗原に対する抗体(イブリツモマブ)に90Yをキレート剤で繋いだ薬剤です。2009年のSNM Image of the Yearでは、この90Yの画像が選ばれました(Fig.14)。
左側が90Yゼヴァリンによる治療前後の比較画像ですが、頸部から腋下にかけてのリンパ節に対して治療効果があったことが判ります。また右側はBexxarという131I薬剤での治療前後画像です。こちらも腹部リンパ節への集積が無くなっていることが判ります。ゼヴァリンは111Inで薬剤の動態を確認することができますが、 Bexxarはイメージングも同時にできる為、どの程度治療効果が得られているのか、直接的に吸収線量や必要な投与量を計算することができます。
90Yのベータ線は体外へは透過しないため、外来で治療ができることが利点です。

fig.14
Fig.14 Image of the Year 2009 SNM
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 ●223Raと89Srについて

Sr, Ra はCaの同族体(2価アルカリ土類金属)である為(Fig.15)、一般的には骨転移部位(周辺)での造骨活性によるコラーゲンの合成とミネラル化に依存して集積します。(骨シンチグラフィの陽性部位と同部位)
また、造骨型の骨転移に限らず、造骨反応を示す転移性骨腫瘍部にも集積します。〔造骨型:前立腺癌,(乳癌)、破骨型:肺癌,(乳癌)、混合型:乳癌,(前立腺癌)〕
骨に集積しなかった RIは、速やかに尿中(90%以上)から排泄され、骨以外の組織への集積は投与量の1%以下であり、他臓器での吸収線量が最小限に抑えられます。

fig.15
Fig.15 元素周期表

 

89Srメタストロンは89Srから放出されるβ線とビスホスホン酸との併用で抗腫瘍効果があるという報告もありますが(Fig.16)、 保険適応は疼痛緩和のみになります。

fig.16
Fig.16 メタストロンの特徴と機序
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抗腫瘍効果に対して保険適応されているのが2016年3月に承認された223Ra(ゾーフィゴ)です。
当施設での症例について紹介します(Fig.17)(Fig.18)。
70歳台の男性で前立腺癌に対するホルモン療法抵抗性の骨転移があり、223Ra内用療法を目的に来院された方です。
内用療法適応初回基準Neutro ≧ 1500 /µL, Hb ≧ 10 g/dL, PLT ≧ 10×104 /µLの条件を満たしており、十分な適応でした。通常6回に分けて223Raを投与するのですが、2回目以降の適応基準値 PLT ≧ 5×104 /µLの条件を下回ったので、出血や貧血が増悪するおそれがあるため3回の投与で中止した症例です。PSA値が上昇しており、骨シンチにて確認したところ、集積が低下している部分と亢進している部分が混在しており、印象としては治療効果があるようにも思えますがこれをどのように評価するかが非常に重要になってきます。 このような場合にはQ.MetrixのようなSPECT定量解析ソフトが活用できる可能性があります。

fig.17
Fig.17 223Raゾーフィゴ症例(背景)
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fig.18
Fig.18 223Raゾーフィゴ症例(画像)
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 ●Q.Metrixについて

Q.Metrixを用いた骨シンチにおける内用療法前後の評価結果を示します(Fig.19)。

fig.19
Fig.19 Q.MetrixによるSPECT定量解析
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Q.Metrixではそれぞれの集積に対してSUVbwを測定できるため、治療前後の比較をアウトプットすることで比較することができます(Fig.20)。 また閾値でのVOIの設定も可能ですが、圧迫骨折などがある場合にはマニュアルでのVOI設定が必要な場合もあります。各集積が上昇したものと低下したものが混在する場合にはこれらの結果の解釈には注意が必要ですが、Q.Metrixは骨シンチ以外にも利用できる為、今後の応用に期待できます。
またこの症例は後日FDG-PET検査で確認したところ、溶骨性の部位にFDGの取り込みが複数みられた症例であることが確認できました(Fig.21)。

fig.20
Fig.20 Q.Metrixによる治療前後の比較
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fig.21
Fig.21 FDG-PET検査による転移の確認
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以上、RI内用療法の現状と将来について簡単にご紹介させて頂きましたが、昨今話題のTheranosticsという言葉もあるように新薬の開発も各メーカーや研究機関で活発に研究されるようになってきました。これまでの薬剤に加え、今後のRI内用療法は大きな可能性を秘めていることがうかがえます。

 

 

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