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 核医学検査装置 お客様の声
 呼吸同期撮像法における再構成条件の検討
川崎医科大学総合医療センター
西山 征孝 先生
先生
 ■Purpose

近年、位相呼吸同期PET/CT撮像技術によるPET定量値の改善の報告が散見されます。一方で、当院では呼吸同期撮像法(Q.Freeze)を用いた場合、静止画像に比べて画質の低下がしばしば指摘されていました。

そこで、本研究では逐次近似再構成法(Q.Clear)を用いた場合のQ.Freeze画像の画質への影響を評価しました。

 

 ■Explanation of Q.Clear

Q.Clearは、繰り返し演算を多く行ってもノイズが増大しないよう、アルゴリズム内にノイズをコントロールするための演算式を組み込んだ逐次近似画像再構成法です(式1)。Q.Clearにより、画質の向上と定量性の向上の両方が図れます。

(式1)
式1

 

 ■Explanation of Q.Freeze

Q.Freezeは呼吸位相を分割し、リファレンスとする位相データに他の位相データを非線形加算することで収集時間を延ばすこと無く、カウントを担保した動きの影響をない画像を得られる方法です(図.1)。Q.Freezeの吸収補正を各位相ごとに行う(Phase Match)には、全位相データを持つPETのスキャン範囲と同範囲のシネCTが必要になります。

pic1
図.1 Q.Freezeの概要

 

 ■Materials and Methods

実験方法は、NEMAボディーファントム (図.2)内にバックグランドが5.3kBq/mlとなるようにFDGを封入し、模擬腫瘤との放射能比を4:1として作成しました。また、呼吸性変動を再現するためProgrammable Respiratory Motion Platform (図.2)を使用し、呼吸周期4秒、ファントムの移動距離を20㎜に設定しました。撮像には、当院のDiscovery IQ (図.3)を用い、1 bedあたり2分収集を行いました。また、呼吸波形は、赤外線発生装置と赤外線反射ターゲット(図.4)を用いて取得しました(図.5)。

pic2
図.2 NEMA Body Phantomと
Programmable Respiratory Motion Platform
pic3
図.3 PET/CT装置 Discovery IQ

 

pic4
図.4 呼吸同期用赤外線発生装置と
赤外線反射ターゲット
pic5
図.5 データ収集時の様子

 

検討項目です。β値変更による画質への影響について検討しました。Q.Freeze画像においてQ.Clearのβ値を400から1200に100毎に変更した画像を再構成しました。図.6のようにROIを取り、バックグランドと37㎜球のSUVmean、SUVmax、SDを計測しました。

pic6
図.6 画質評価時のROI配置

計測した値より、検出能としてSignal to Noise Ratio (SNR, 式2)、変動係数としてCV (式3)、Contrast Ratio (CR, 式4)、Contrast to Noise Ratio (CNR)を算出し、グラフ化しました。

(式2)
式
(式3)
式
(式4)
式

 

 ■Results

図.7より、β値を大きくするほどSNRが向上していることが分かります(a)。コントラストはβ値を大きくするに従い下降し、β値1000で一定の値を示しました(b)。変動係数CVはβ値を大きくするほど改善されています。また、β値1000以上の時にガイドラインの基準値0.056以下の条件を満たしています(c)。CNRもβ値を大きくするほど改善されています(d)。

 
表a
表b
表c
表d
図.7 Q.Freeze画像におけるQ.Clear再構成β値と各種パラメータの関係
※画像クリックで拡大します

次に、呼吸同期(Q.Freeze)で得られた画像において、Q.Clear β値400で再構成した静止画と同等の画質が得られるβ値について検討しました。

図.8より、SNRでQ.Clear β値400で再構成した静止画と同等の値71を示すQ.Freeze画像のβ値は、1000の時でした(a)。同様にCRでQ.Clear β値400の静止画と同等の値4.51971を示すQ.Freeze画像のβ値は、1000の時でした(b)。変動係数CVでQ.Clear β値400で再構成した静止画と同等の値0.049を示すQ.Freeze画像のβ値は、1000の時でした(c)。CNRでQ.Clear β値400で再構成した静止画と同等の値89.036を示すQ.Freeze画像のβ値は、1000の時でした。(d)

 
表a
表b
表c
表c
図.8 Q.Clear β値400で再構成した静止画と同値が得られるQ.Freeze画像のβ値と各種パラメータの関係
※各画像クリックで拡大します

以上の結果より、Q.Freeze画像は静止画像と同じβ値で画像再構成するとCR以外は低い値を示しました。Q.Freeze画像は、静止画像よりも大きなβ値で再構成する必要があり、Q.Freeze画像でQ.Clear β値400の静止画と同等の画質を得るためにはβ値1000程度が適当という結果を得ました。

 

 ■Discussion

Q.Freeze画像と静止画像を同条件で再構成すると、画質は低下しました。この画質低下は、Q.Freeze 処理前の各Phaseあたりの収集時間が静止画像と比較して少なく、ノイズ成分を含むためだと考えられます。

静止画像Q.Clear β値 400 と同等の画質をQ.Freeze画像で得るためには、 β値 1000程度で再構成する必要があります。しかしながら、これはQ.Freezeの呼吸位相分割を5分割で行った場合の結果であり、Q.Freezeの位相分割数を変えると加算前のカウントも変化するため、使用するβ値を変える必要があると予想されます。呼吸位相の分割数とβ値の関係については、今後の検討課題としたいと考えています。

 

薬事情報

※Q.Freezeはオプションです。
※お客様の使用経験に基づく記載です。仕様値として保証するものではありません。

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