top お問い合わせ 印刷
 核医学検査装置 お客様の声
 中四国初(デリバリー施設で日本初)、
 GE製Digital PET/CT Discovery MI稼働 ~初期使用経験~
川副 敏晴 先生   陰山 真吾 先生
松江赤十字病院 放射線科
川副 敏晴 先生
  松江赤十字病院 放射線科
陰山 真吾 先生
 1.はじめに

当院は2005年5月に山陰地方で初めてPET/CT装置を導入致しました。導入に至っては多くの問題があり、特に薬剤(FDG)の安定供給が大きな問題でした。デリバリーでPET検査を行うためには薬剤の安定供給が不可欠です。安定供給に対して道路状況、天候状況などの要因がありましたが、その要因一つ一つをチームメンバーやメーカーの皆様と検討し解決を図ったことで山陰地方初のPET/CT装置の導入に至りました。PET/CT装置導入後は、山陰地方でのPET検査を牽引し、実績を積み重ねました。そしてこの度、機器更新に伴い中四国では初めて、またデリバリー施設として日本初のDigital PET/CT(2017年11月稼働開始)を導入致しました。稼働開始当初から多くの施設より紹介検査を賜り、1日平均10件の検査を実施して参りました。現在では、周辺にPET/CT検査ができる施設が増えたことで1日平均7,8件にはなりましたが、コンスタントに検査を行っています。

当院の検査依頼の中心は、呼吸器疾患、耳鼻科疾患、血液疾患、形成外科疾患です。血液内科での悪性リンパ腫や形成外科でのメラノーマ(悪性黒色腫)を対象としたPET検査では『四肢を含めた全身』という依頼があり、頭頂部から両足先まで撮像する必要があります。従来機では撮像範囲が限定されていましたが、今回の装置では全身の撮像が可能になり、検査へのストレスが解消されました。

 

 2.Discovery MI本体

◆画像
従来のPET/CT装置では指摘できなかった病変も確認出来ます。サイズ的に細かい集積まで描出できています。また感度が良く、以前はぼやけて見えていた集積が細かくコントラストのついた集積として描出できています。頭部画像も明らかにこれまでとは異なります。細かい構造が明瞭に観察出来ます。

pic1
pic2

◆装置の操作性
撮影部門にあるCT装置(64列MDCT)と同様であり、操作面で違和感なく使用しています。

◆Q.Clear
Q.Clearは、従来の3D-OSEMとは全く異なる画像再構成です。繰り返し演算の中にノイズをコントロールする項を組み込んだ逐次近似再構成法であり、低カウント領域でのノイズが抑制されていることに加えコントラストと均一性が良いため、診断能の向上に大いに寄与しています。

◆β値(Q.Clearのノイズコントロールの重み係数)
β値はフィルタを変更するような感覚なので直感的に使用できます。ただし、β値は撮像や患者ごとに変更するものではないため、初期設定時には苦慮しました。

◆撮像時間
従来機と比較して体軸方向視野が広く、またオーバーラップも小さくなったため、検査時間が短くなりました。従来機の体軸方向視野が162㎜、オーバーラップ42%の固定だったのに対し、Discovery MIの体軸方向視野が200㎜、オーバーラップが24%(17スライス)となっています。この広い視野と少ないオーバーラップによって、従来機と比べbed数を1つ減らすことができます。また、感度も向上したため、患者の体重や状態によって1bedあたり2分から1.5分に時間短縮しても良好な画像を維持することができます。

◆低線量CT
CTの線量低減及び低線量での画質向上のため、両腕を挙上してCTを撮像しています。PET収集時間が短いため、患者への負担が軽く済んでいます。PETの撮像時間12分(6bed)は検査時間の許容範囲と考えます。小柄な高齢者の女性であれば7~8分で撮像が可能です。加えて、CT逐次近似再構成法であるASiR-Vにより、従来機に比べ線量を半分以下に低減や高ヘリカルピッチによる短時間撮像が可能になりました。線量をできる限り下げたいという放射線科医師の意向に沿いながら、良好な画質が得られます。PET/CT検査のCT線量としては十分な線量と考えています。

pic3

 

 3.コンソール

コンソールのユーザーインターフェイスは撮影部門にあるCT装置(64列MDCT)と同様であり、操作面で違和感なく使用しています。

リアルタイムに再構成画像を表示することができるReal time PET/CT view(DMPR)は撮像しながら3断面を確認することができます。この機能は以前にはなかった機能であり、大変助かっています。当院では技師がDelay撮像の有無の判断を行っており、その判断が早い段階で行えるため大変気に入っています。また、検査が終わった時に鳴る『終わった感のある音』が患者さんに好評です。

pic4

 

 4.撮像

◆Delay撮像条件
Delay撮像の必要性の有無の判断は技師に任されています。腸管の生理的集積を確認する場合、1bedあたり約1分で撮像しています。また、肝臓の集積を確認する場合、現状では1bedあたり2分から少し長めの3分で撮像しています。今後最適な収集時間を検討したいと考えています。画像処理が従来機と比較して大幅に早くなったために、通常の画像をPACSに送り、放射線科読影医師にDelay撮像の有無の判断を委ねることも容易にできるようになりました。

 

 5.再構成条件

Q.Clearのβ値は事前のファントム実験、臨床画像の視覚評価の結果を基にβ:650としています。

 

 6.呼吸同期

横隔膜近傍の小病変が描出できていない症例が以前は多くあったと考えられます。当院の取り決めとして1ヵ月以内に胸部CTを撮っていない患者さんには、胸部CT(吸気息止め)を最初に撮像しております。1ヵ月以内に胸部CTを撮っていない患者さんには、呼吸同期PET/CT撮像も有効であると考えられるため今後の検討課題にしたいと思います。また、事前に横隔膜近傍に腫瘍があることが分かっている場合、呼吸同期の追加撮影を検討しています。呼吸同期をかけた場合、腫瘤、腫瘍の辺縁がはっきりしてシャープな画像が撮れるため、肝臓か肺か識別が難しい横隔膜近傍で威力を発揮すると考えられます。実際の臨床画像で、横隔膜近傍の病変にSUVmaxの違いが見られます。Q.Static(ウィンド幅50%に設定)は、4分間の呼吸同期撮像で2分間の通常撮像とほぼ同等の画像になります。セッティングが簡単であり、患者さんも気にならない印象です。

pic5

 

 7.CT撮像

従来機のCTが2列だったため、撮像に2~3分かかっていました。今回導入したDiscovery MIは64列のCTであるため撮像時間が30秒以下になりました。Noise Indexは35、ASiR-Vを使用しています。寝台の上下動、スライド速度が速いため、ポジショニングが楽になりました。また、当院の取り決めとして1カ月以内に胸部CTを撮っていない患者さんには、吸気息止めの胸部CTを追加しています。

pic7

 

 8.まとめ

今回、中四国地方で初となる半導体光電子増倍機搭載のPET/CT装置であるDiscovery MIを導入致しました。デリバリー施設としては国内初の導入であり不安がありましたが、現在まで検査中止となるトラブルは発生していません。

従来機と比較して始業点検が集約されたため時間的な負担が軽減されました。今回から初めて使用している検出器校正線源ファントムは、表示付認証機器で、線量が少なく使用時間が短く済む点がメリットです。また表示付認証機器は、機器の使用記録や放射線の線量測定等を省くことができるため、放射線管理の面で以前より大幅に楽になりました。

今後は、デリバリー施設におけるDiscovery MIのメリットについて情報を提供したいと考えています。デリバリーFDGを用いるPET検査では一般的に自動投与装置で薬剤を全量投与するため投与量の調整が困難であり、良好な画像を取得するためには撮像時間で調整する必要があります。PET画像の画質に関してはQ.Clear画像再構成法の存在も大きいと感じます。そのため、撮像時間や画像再構成法でのSUVなどを今後検討する必要があると感じています。

 

薬事情報

※こちらのご施設のDiscovery MIは4Ring Detector仕様のものです。Q.Staticはオプションです。
※お客様の使用経験に基づく記載です。仕様値として保証するものではありません。

お電話以外でのお問い合わせの場合は、こちらをご利用ください。
info
(お問い合わせ例)
PET/CTについて詳細の質問がしたいので、営業から連絡がほしい
Discovery IQの価格・工事期間について、教えてほしい
導入済みの施設を見学したい