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 核医学検査装置 お客様の声
 半導体検出器ガンマカメラの光と影 前編
島根大学医学部附属病院
技師長 山本 泰司 先生
山本先生

今回は、心臓核医学会のシンポジウムの内容を紹介します。

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テーマは「半導体検出器ガンマカメラの光と影」ということで、Discovery NM 530cの長所と短所を紹介しました。

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最初に「Discovery NM 530cの特徴を知るには検出器の感度とコリメータの特徴を知ることだろう」との目的から図.1のような実験を行いました。37MBqの99mTc溶液を置き、方向依存性を調べました。方向依存性の検証は同室での他装置設置や心筋負荷における装置の配置関係を決定するために重要です。図.1のように高さ100cmにおいて、有効視野の中心から半径170cmの円周上で検出感度の差を調べました。

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図.1 検出器感度とコリメータの特徴

図.2に、検出器感度の結果を示します。床からの高さが100cmの場合には頭側、足側の概ね60°内で影響がありました。また、高さが変わるとその傾向も変化し、アイソトープが床に近いほど影響は大きくなります。これはアイソトープが床面に近づくことでピンホールの向きにより検出器にガンマ線が入射しやすくなったためと考えられます。

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図.2 高さ100cmと1cmにおけるCZT-SPECT検出器の感度の方向依存性

図.3より、LEHRコリメータ装着のAnger型SPECT装置と比較してみると大きく異なることが分かります。マルチ・ピンホール採用による高感度システムであるが故にその特異的な特徴に注意して使用することが重要です。島根大学では外部からの放射線の入射を防ぐため、感度が低い足方向に負荷スペースおよび鉛衝立を設置し、使用しています。

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図.3 CZT-SPECT装置とAnger型-SPECT装置における検出器感度の方向依存性

次にCZT-SPECTのエネルギー分解能について実験を行いました。図.4に示すようにAnger型SPECTとCZT-SPECTについてアイソトープを封入したシリンジを用いてエネルギースペクトルを比較しました。核種は99mTc、201Tl、123Iです。また、エネルギーの近い99mTcと123Iについては2核種同時収集した場合のコントラストを算出し比較しました。

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図.4 CZT-SPECTとAnger型SPECTでのエネルギー分解能の評価法

図.5より、CZT-SPECTではAnger型SPECTに比べ散乱線の大幅な減少が認められます。99mTcと123Iの2核種同時収集の場合、Anger型SPECT装置に比べCZT-SPECTでは2核種の分別も可能で、臨床での使用も可能であると考えられます。

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図.5 CZT-SPECTとAnger型SPECTのエネルギー分解能

減弱補正についても様々な検証を行いました。島根大学ではCZT-SPECTで撮像後、別室に移動しAnger型 Discovery NM/CT 670Proの16列CTで撮像しています。その画像を用いてCTの減弱補正を行っています(図.6)。

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図.6 CZT-SPECTでのCT減弱補正

有効視野内に散乱体がない場合、検出器からの距離でどの程度の検出差があるかを調べました。吸収体なしの場合、図.7左のように配置を左右上下5cmずつ変化させて画像収集しました。吸収体ありの場合は、自作の円柱ファントム内を水で満たしてアイソトープを図.7右のように配置して収集しました。このデータを用いて減弱補正の必要性を検討しました。

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図.7 吸収体の有無による検出器からの距離と検出差の検討

図.8に、配置の中心をリファレンスとした各位置でのカウント比を表します。位置依存性については有効視野内であれば5%以内の差であり、吸収体のない場合では問題となりません。

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図.8 吸収体なしの場合の各位置でのカウント比

吸収体がある場合も同様に中心をリファレンスにしてカウント比を調べました。図.9より、吸収体の影響は大きく、その差は画像でも確認できます。しかしCTを用いた減弱補正を加えることで、最大60%のばらつきが8%程度まで抑えることができます。棒グラフからも青のばらつきが赤のように均一になります。基礎実験の結果から、CTでの減弱補正が必須と考えられます。

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図.9 吸収体がある場合の減弱補正効果

次にCTによる減弱補正効果について99mTc溶液円柱ボトルを用いて実験を行いました。図.10のように再構成画像のプロファイル曲線を描き、その変動係数から補正効果を検証しました。

図10
図.10 CT減弱補正による均一性の検証方法

図.11にCT減弱補正による各方向のカウントの均一性を示します。左図はHorizontal方向、右図はVertical方向です。また青線は補正なし、赤線が補正ありを示しています。図.11より、減弱補正をすることで均一性は改善されていることが分かります。また変動係数も減弱補正で小さくなっています。この結果からもCT減弱補正の有効性が分かります。

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図.11 CT減弱補正によるHorizontalおよびVertical方向の均一性

次に心筋ファントムを用い、より臨床に近い減弱補正の検証を行いました。120KBq/ml、前壁と下壁に1㎝の模擬欠損を作成した心筋ファントムを用い、プロファイルからCT減弱補正の有り無しでのコントラストを比較しました。評価法は図.12に示す通りです。

図12
図.12 心筋ファントムを用いた減弱補正によるコントラストへの効果の評価方法

心筋内の最高カウントに対する比を図.13に表示します。3スライスで算出したため、線は3本あります。図.13左グラフより、減弱補正のない場合コントラストは前壁で0.472、下壁で0.329でした。下壁でコントラストは低下しています。しかし、図.13右グラフより減弱補正をすることで前壁と下壁で同じコントラストを得ることができています。

図13
図.13 減弱補正の有無による心筋ファントム円周上でのコントラスト

次に肝臓集積からの影響を調べました。心臓の0.5倍から3倍濃度の99mTcを肝臓に封入して収集しました。図.14の画像からも肝臓からの影響は大きいことが確認できます。しかし、減弱補正である程度は下壁の評価も可能となることが分かります。

*最高カウントが上がっているため相対的に前壁でのコントラストは低下

図14
図.14 CT減弱補正の有無による肝臓集積からの影響

図.15にCZT-SPECTとAnger型SPECTにおけるCT減弱補正有無によるPolar Mapを示します。上段がCZT-SPECT、下段がAnger型SPECTのPolar Mapです。CZT-SPECTではAnger型SPECTに比べ肝臓からの影響は大きいことが分かります。減弱補正を用いれば、ある程度の評価は可能になることが、このMapからも推測できます。Anger型SPECTのCTAC(+)画像の後下壁は散乱線の影響により、前壁より高く描出されています。

図15
図.15 CZT-SPECTとAnger型SPECTにおけるCT減弱補正の有無によるPolar Map

図.16に、Anger型SPECTを用いたPolar Map 17 Segmentでの減弱補正有り無しによるカウント変化を示します。縦軸は画像内最高カウントに対する相対値です。全ての領域で1.0に近くなれば良いことになります。グラフから肝臓に集積がない場合と集積している場合では減弱補正の効果が異なることが分かります。黄色い折れ線は減弱補正による変化率を示します。全ての領域で1.0より大きな値になりました。これらの結果より、肝臓の集積が大きくなると減弱補正の効果にも影響があることは理解できます。

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図.16 Anger型SPECTにおける減弱補正の有無による肝臓集積のカウントへの影響

図.17にCZT-SPECTを用いた減弱補正の有無による肝臓集積のカウントへの影響を示します。図.17よりCZT-SPECTでもAnger型SPECTと同じく肝臓集積が大きくなると、減弱補正での変化率は大きくなっています。肝臓集積が大きい場合Anger型SPECTと比べ、減弱補正により変化率が逆転している領域、つまり減弱補正をすることで相対的に小さくなる領域があります。これは肝臓集積の影響で前壁と下壁のカウント差が大きくなるが、減弱補正を用いることでカウント差がある程度解消されることを示しています。

図17
図.17 CZT-SPECTにおける減弱補正の有無による肝臓集積のカウントへの影響

先のファントムでの実験を臨床データでも行い、ファントムデータと比較しました。図.18のように99mTcでの1日法で安静/負荷を行ったデータにおいて、男性正常例16例は下後壁低下スライスで、女性正常群は前壁低下スライスでそれぞれCT減弱補正有り無しでコントラストを求めました。また、異常例は前壁血流低下例8例、下後壁低下例23例を用いて正常例と同じように減弱補正有り無しで、コントラストをファントムデータと比較評価しました。評価は負荷時の短軸像を用い、プロファイルカーブの最高カウントで正規化を行い、コントラストを算出しました。

図18
図.18 臨床データでの減弱補正効果の評価

図.19より、前壁では正常群、異常群ともに減弱補正の有無に関わらず両装置で有意差がなく同じように評価が可能であることを示しています。下壁では減弱補正の有無で有意差があり、評価が異なることを示しています。一方で減弱補正無し同士、減弱補正有り同士において装置間での有意差はありませんでした。つまりCZT-SPECTでは短時間収集であるにも関わらずAnger型SPECTと有意差なく評価できる可能性を示しています。

図19
図.19 正常群および異常群における減弱補正の効果

次回は、当院での半導体SPECTの研究と臨床例についてご紹介します。

 

※お客様の使用経験に基づく記載です。仕様値として保証するものではありません。

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