【背景】
PET/CTの画像再構成法は逐次近似法に基づいて行われています。従来のOS-EM法では、iteration数の増加と共にノイズも増加するという問題があります。この問題を改善するために新たに、Q.Clearという画像再構成法が臨床に導入されています。
Q.Clearについて簡単に説明します。Q.Clearは図.1中の演算式で処理が行われています。従来のOS-EM法にノイズを調節する独自の演算式を組み込んでいます。この式のβ値でノイズ除去の強弱を調節しています。
【目的】
本研究の目的は、Q.Clear(再構成)における最適な罰則パラメータ(β値)を検討することです。
【使用機器】
使用機器を図.2に示します。PET/CT装置としてDiscovery IQ.e(GE Healthcare社製)を、ワークステーションとしてAW VolumeShare7(GE Healthcare社製)を使用しました。また、ファントムにはNEMA IEC Body Phantom(Data Spectrum社製)を使用しました。
【収集・再構成条件】
Hot球とBGの放射能濃度が4:1になるようファントムを作成しました。よって、今回の実験でのSUVの理論値は4です。収集時間はBGが5.3 kBq/mlになるタイミングに、12分収集を行いました。さらに、2半減期後に30分収集を行い、2つのデータを習得しました。
その収集した2つのデータを図.4に示す通りβ値50~600まで変化させて画像再構成を行いました。
図.3 収集・再構成条件
図.4 画像再構成条件
【検討項目】
10㎜球が最も明瞭に描出されたスライスを使用して、物理評価と視覚評価を行いました。検討した物理評価と視覚評価の項目は、図.5の通りです。
物理評価における各項目の評価方法です。図.6のようにROIを配置し、10mm Hot球 %BG変動性、%コントラスト、SUVの精度を算出しました。RCも図.7のように各球の直径に合わせてROIを置きスライドに示す式で算出しました。このROIはCT画像を基に、中心を合わせて取りました。
図.6 %BG変動性、%コントラスト、 SUV meanの評価方法
図.7 RCの評価方法
【結果】
図.8より、10mm Hot球の%BG変動性はβ値が高くなるほど小さい傾向となり、β=200~600では評価基準の5.6%未満を満たしていました。また図.9より、%コントラストはβ=200~600で2.8%より大きい値となり評価基準を満たしていました。
図.8 10mm球の%BG変動性とβ値の関係
図.9 %コントラストとβ値の関係
図.10より、BGのSUVmax精度はβ値に依存しませんでした。また図11より、RCmaxではβ値が高くなるほど小さい傾向を示しました。加えて、17mm球のβ値50~200では変動した値が見られました。
図.10 BGにおけるSUV maxとβ値の関係
図.11 β値を50~600に設定した場合の RC maxとHot球の関係
【物理評価のまとめ】
10mm Hot球のBG変動と%コントラストではβ値200~600でN10mm <5.6%、QH,10mm/N10mm>2.8% であり、それぞれ評価基準以内でした。またBGでのSUVmaxでは、β値に大きな依存性は見られませんでした。加えて、RCでは17mm球においてβ値50~200で値の変動が見られました。よって、物理評価においてはβ値200~600が画像再構成条件に適していると考えました。
次に視覚評価です。①10mm描出能と②全体の形状について視覚評価を行いました。対象画像としてβ値100~600まで100毎に変化させた画像を使用しました。対象者は放射線科医3名、診療放射線技師3名です。評価方法として、各再構成画像を5段階で視覚評価しました。
5段階評価のスコア基準を図.13に示します。10mm描出能では診断できるかという意味も含めてスコア基準を定めました。全球の形状ではHot球の不整形さ、歪みと辺縁のボケを考慮して評価しました。
図.14にβ値を変化させて得られた画像を示します。まずβ値100に注目してみると、BGにノイズが目立っています。またHot球を見ると、均一性がなく、まだら様になっています。しかし、10mm球の描出能は優れていることが分かります。β値100とは対照的に、β値600ではBGのノイズは目立っておらず、Hot球の中も均一性は良いですが、10mm Hot球の描出は難しい画像となっています。
図.15より、10mm球描出能はβ値が高くなるほどスコアが低くなる傾向にあり、またコントラストが低下する傾向を示しました。図.16より、全球の形状はβ値が高くなるほどスコアが高くなり、均一性が良くなりました。10mm 球描出能と全球の形状の評価結果より、スコアが2以下を示したのはβ値100、500、600でした。
図.15 10mm球描出能の評価結果
図.16 全球の形状の評価結果
【視覚評価のまとめ】
β値100、500、600で低いスコアとなり、視覚評価ではβ値200~400が画像再構成に適していると考えました。
【考察】
図.11で見られた値の変動に関して、RCmaxはSUVmaxより求めている値であるため、SUVmaxをグラフに示しました。図.18と図.19では、問題となるβ値50~200のみを表示しています。図.18および図.19より、SUV 4を超えて過大評価されている傾向は17mm球で顕著に表れています。
図.18 β値50、100、200で再構成した場合の SUV maxと球の直径との関係
図.19 β値50、100、200で再構成した場合の RC maxと球の直径との関係
そこで、SUVpeakを求めてRCpeakを算出しました。図.20より、SUVpeakではSUV4に近い値となり、過大評価されていた割合も小さくなりました。また図.21より、RCでは値の変動も解消されました。以上のことから、SUVmaxおよびRCmaxでの変動は統計ノイズの影響だと考えました。そこで、今後の課題として評価基準にSUVmaxとSUVpeakのどちらが適しているかを検討していこうと考えています。
図.20 β値50、100、200で再構成した場合の SUV peakと球の直径との関係
図.21 β値50~600で再構成した場合の RC peakと球の直径との関係
【結語】
物理評価と視覚評価から、Q.Clear(再構成)における最適な罰則パラメータ(β値)は200~400と考えます。今後、臨床条件での収集時間に合わせた検討も行いたいと考えています。
※お客様の使用経験に基づく記載です。仕様値として保証するものではありません。
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