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 核医学検査装置 お客様の声
 Q. Metrixを用いたI-131 MIBG内用療法の治療効果判定
金沢大学附属病院 放射線部
小西 貴広 様
 【はじめに】

金沢大学附属病院では, 神経内分泌系腫瘍(転移性褐色細胞腫, 神経芽腫)に対してI-131 metaiodobenzylguanidine (MIBG)を用いた内用療法を行っています。治療件数は, 1年間に約30例です。今回はI-131 MIBG内用療法の治療前後に撮像するI-123 MIBGシンチグラフィにおいてQ. Metrixを使用し, I-131 MIBG内用療法の治療効果を定量的に評価した症例を紹介します。

 

 【Q.Metrixについて】

Q.Metrixはあらかじめ使用核種と使用コリメータの組み合わせごとにガンマカメラのシステムプラナーセンシティビティー(cps/MBq)を測定しておく必要があります。当院では, I-123 MIBGの撮像にELEGPコリメータを使用しているため, その組み合わせでのシステムプラナーセンシティビティーを求めてあります。測定したシステムプラナーセンシティビティー, 投与量や患者の体重等を入力することでVolume of Interest (VOI)を設定した病変や臓器のSingle Photon Emission Computed Tomography (SPECT)画像のボクセル値から, Standardized Uptake Value (SUV), 体積 (ml), %Injection Dose (%)が自動的に算出されます (Fig.1,2)。

Fig.1
Fig.1 Q.MetrixのVOI設定画面
Fig.2
Fig.2 Q.Metrixの解析結果画面

 

 【I-131 MIBG内用療法の流れ】
  1. 適応の確認
    治療のおよそ1カ月前に3-5日間の検査入院を行い, 禁忌事項の確認や治療適応の可否を決定します。I-131 MIBG内用療法は, 病変にI-131 MIBGが取り込まれなければ治療が成り立ちません。そのため, 治療の適応を判断するためにI-123 MIBGシンチグラフィで病変への集積の有無を確認することが必須となっています。さらに画像からI-123 MIBGの排泄速度, 正常重要臓器への集積程度を確認し, 治療時の全身線量の予測を行います (治療時に全身線量が2Gyを超える場合は重篤な骨髄抑制がおこる可能性があり, 骨髄レスキューが必要なため)。当院では投与から6時間後に全身像を撮像し, 24時間後に全身像とSPECT/CT像を撮像しています。
  2. 治療
    治療前の準備として甲状腺ブロックをするために, I-131 MIBG投与の1日前から投与後1週間, 無機ヨウ素の内服を行います。I-131 MIBGの投与はアイソトープ治療病室にて, 1時間かけて行います。成人の転移性褐色細胞腫では7,400 MBq, 小児の神経芽腫では555-666 MBq/kg (体重20kgの患者の場合, 約13,320MBq)を投与しています。治療4-7日後の間にガンマカメラで全身像とSPECT/CT像を撮像して病変への集積を確認しています。
  3. 治療効果判定
    治療効果の発現には数カ月を要することが多いため, 治療後3カ月以降にI-123 MIBGシンチグラフィで病変集積の程度を治療前と比較し, 治療効果判定を行います。日本では標準的な投与量を繰り返し投与する治療が行われているため, 治療効果の程度によって内用療法を継続するかどうかを決定します。治療効果判定のI-123 MIBGシンチグラフィも, 投与から6時間後に全身像を撮像し, 24時間後に全身像とSPECT/CT像を撮像しています (Fig. 3)。
  4. Fig.3
    Fig.3 I-131 MIBG内用療法の流れ

 

 【症例】

50代女性 (転移性褐色細胞腫 腹部大動脈周囲リンパ節2カ所と横隔膜脚に転移)

治療前に治療の適応を判断するために, I-123 MIBGシンチグラフィを施行しました。その1カ月後にI-131 MIBG内用療法を施行し, 治療から3カ月後に治療効果判定のためにI-123 MIBGシンチグラフィを施行しました。シンチグラフィによる評価にて治療効果が認められたため, 1回目の治療から6カ月後に2回目のI-131 MIBG内用療法を施行し, 2回目の治療から3カ月後に再度治療効果判定のためにI-123 MIBGシンチグラフィを施行しました。腫瘍の活動性を示すI-123 MIBGのSUV最大値 (SUVmax)をQ.Metrixを用いて算出し, 治療の前後で病変のSUVmaxを比較しました。

 

 【症例説明】

本症例は治療前に腹部大動脈周囲リンパ節と横隔膜脚に計3カ所の転移が認められており, 治療前のI-123 MIBGシンチグラフィの全身像とSPECT/CT像にて3カ所のいずれにも集積を確認することができました(Fig.4,5,6)。


Fig.4
治療前のI-123 MIBGシンチグラフィ:全身像
(青矢印が病変)

Fig.5
治療前のI-123 MIBGシンチグラフィ:SPECT/CT像
(赤矢印が病変)
Fig.6
Fig.6 治療前のQ.Metrixの解析結果画面

治療4日後のI-131 MIBG全身像とSPECT/CT像においても, 病変部への集積を確認することができました (Fig.7,8)。

Fig.7
Fig.7 I-131 MIBGシンチグラフィ:全身像
Fig.8
Fig.8 I-131 MIBGシンチグラフィ:SPECT/CT像

 

治療効果判定のために施行した3カ月後のI-123 MIBGシンチグラフィでは, 病変部への集積が視覚評価で低下していました (Fig.9,10,11)。

Fig.9
Fig.9
初回治療後のI-123 MIBGシンチグラフィ: 全身像
Fig.10
Fig.10
初回治療後のI-123 MIBGシンチグラフィ:SPECT/CT像

 

Fig.11
Fig.11 初回治療後のQ. Metrixの解析結果画面

2回目の内用療法後では集積はさらに低下し, 3病変のうち2病変は集積が不明瞭となりました (Fig.12,13,14)。

Fig.12
Fig. 12
2回目の治療後のI-123 MIBGシンチグラフィ: 全身像
Fig.13
Fig. 13
2回目の治療後のI-123 MIBGシンチグラフィ: SPECT/CT像

 

Q.Metrixによる定量評価においても, 3病変全てでSUVmaxが治療前より低下しており, I-131 MIBG内用療法の治療効果を数値として評価することができました (Table.1)。

Table.1
Table.1 治療前後のSUVmax

 

 【検討項目】

本症例から治療前後のQ.Metrixを用いて算出されたI-123 MIBGのSUVmaxの比較が, I-131 MIBG内用療法の治療効果判定に有用である可能性が示唆されました。今後は治療効果判定としてSUVmaxが有用であるかどうか症例を積み重ねて検討していく予定です。治療前のI-123 MIBGシンチグラフィから算出したSUVmaxを用いてI-131 MIBGの集積の程度を事前に推測することにより, 患者に応じた治療に最適な投与量の決定やI-131 MIBG内用療法の治療効果を正確に予測できるようになることが期待されます。今後もQ.Metrixを用いた定量的な評価について検討を続けていきたいと思います。

 

※お客様の使用経験に基づく記載です。仕様値として保証するものではありません。
※Q.Metrixはオプションです。

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