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 【一般X線撮影装置 ワンポイントアドバイス】
 立位と臥位で照射野がちがう?

 

首都大学東京大学院人間科学研究科
診療放射線技師 油原 俊之 様

 

日々のX線撮影で生じるちょっとした疑問や不思議な現象を掘り下げてみました。
知ってしまえば当たり前のことですが、知らないと損をすることも・・・。

 立位撮影と臥位撮影で写せる範囲が何となく違うと感じたことはないですか?

後輩技師のAさんから、腹部立位と臥位撮影後に相談をうけました。
「立位のときは、照射野が広いのに、臥位だと狭くなるんです。」(画像1・2)

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画像1 腹部立位PA像
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画像2 腹部臥位AP像

確かに立位の方が臥位よりも3椎体分くらい広く写っています。

さて、この原因は?

  1. コリメータの故障もしくは誤認識
  2. 撮影距離のちがい
  3. 受光部と天板の距離のちがい
  4. 後前方向と前後方向のちがい

 

1. コリメータの故障もしくは誤認識

照射野がおかしいと聞いてまず思いつくのが、オートコリメーションの誤認識・受光面とX線管が垂直になっていない・もしくはコリメータが回転している等々。
早速チェックしましたが、異常はありませんでした。

 

2. 撮影距離のちがい

撮影距離(SID)は立位150cm・臥位100cmでした。SIDが異なると、受光部に入射するX線の角度が変化します。(画像3)

受光部の最頭端および最足端に入射するX線の角度θは

pic4

です。

撮影装置受光部の縦方向の長さは40.64cmなので、SID100cmで78.5°、150cmで82.3°で受光部の両端にX線が入射することになります。受光部面の平らな被写体には、この角度は影響しませんが、X線管側に離れると、この角度の差が影響してきます。

pic3 画像3 受光部端に入射するX線の角度の撮影距離による違い
撮影距離が長いと受光部端に入射するX線の角度θは直角に近づき、撮影距離が短くなると鈍角となる。

 

3. 受光部と天板の距離のちがい

次に受光部前面から天板までの距離を考慮して天板面での有効照射野を計算します。
受光部の長さLは

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です。

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画像4 受光部と天板の距離による照射野の違い
受光部から天板までの距離が短いと、有効照射野は広くなる。
臥位撮影では受光部から天板までの距離が長く、SIDも短いため有効照射野はさらに狭くなる。

撮影した装置の受光部天板間距離は立位が4.5cm、臥位が5.5cmのため天板面での有効照射野は

pic6

となります。

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画像5 天板と恥骨までの距離による有効照射野の違い
腹部立位後前撮影では天板から恥骨レベルまでの距離が短いため、恥骨レベルの有効照射野は広い。
腹部臥位AP撮影はSIDが短く、受光部と天板までの距離は長く、しかも天板と恥骨までの距離が長いため、腹部立位後前撮影との有効照射野の違いはさらに大きくなる。

 

4. 後前方向と前後方向のちがい

最後に恥骨レベルの有効照射野を考えます。
立位は後前方向で撮影しているため天板から恥骨までは近く、臥位は前後方向のため天板から遠いことがわかります。例えば後前方向の天板から恥骨までの距離を2cm、前後方向での天板から恥骨までの距離を15cmとして、これを上の式に当てはめると、立位の長手方向の照射野は

pic7

臥位の長手方向の照射野は

pic8

となり、トータルで6.5cm立位に比べて臥位の有効照射野が狭くなります。恥骨レベルでは受光部本来の大きさに対し立位で95%・臥位ではなんと79%に減ってしまう結果となりました。

ということで、照射野が異なる原因の答えは1以外のすべてでした。

 

これ以外にも立位撮影では骨盤の角度変化や横隔膜の下垂なども作用して、被写体的にも横隔膜から恥骨をカバーすることは立位よりも難しくなります。この差を少しでも抑えるためには、可能な限り撮影距離を長くとることと、受光部と被写体との距離を近づけることです。
取り外し可能なパネルの場合は、ポータブル撮影のように患者さんの下に直に敷き、撮影距離を最大にすることで少しは解消されます。その際グリッド縞にご注意を。

 

注)計算上の数値は仮想値であり、臨床的な標準値や装置の性能を表したものではありません。

 

 

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