クリニック紹介
あいちハートクリニックは愛知県知立市に位置し、西三河地区初のカテーテル治療を専門とする有床循環器クリニックとして2017年9月に開院した。
急性期緊急医療においては、地域の救急病院の体制が整っているため、当クリニックでは循環器疾患の予防検査及び治療に関して、迅速に小回り良く対応して、地域に根差した医療の実践に努めている。
図1. クリニック外観
当クリニックでの冠動脈CT検査
当クリニックは循環器クリニックであるため造影CT検査は心臓CTが主軸となっており、年間で約300件の冠動脈CT検査を診療放射線技師1名で実施している。当クリニックでは開院時よりGE社製64列のRevolution EVOを導入し、従来のSnapShot Freeze(以下、SSF)を使用し冠動脈CT検査を実施していた。今回CT装置更新につき、SnapShot Freeze2.0(以下、SSF2.0)による更なるモーションアーチファクト低減に注目してRevolution Maximaを2024年1月より導入した。
また2024年1月より不整脈外来やアブレーション治療も始まり、今後も安定した画像が提供できるように努めていきたい。
現在の循環器クリニックでの運用方法を紹介していく。
図2. 塩原技師(左)、深谷院長(右)
SSF2.0
従来のSSFはターゲット心位相の前後の心位相データから冠動脈に対して3次元的動態アルゴリズムを用いて冠動脈のみモーションアーチファクト低減しているが、SSF2.0では従来のSSF同様に3つの心位相から解析して、冠動脈のみではなく、大動脈弁、僧帽弁、心筋など心臓全体に対してモーションアーチファクトを低減している。SSFはSegment再構成にのみ対応しており、高心拍症例ではSSFの他にMulti sector再構成にて冠動脈解析を必要とする場合もあった。
SSF2.0においてもSegment再構成のみの対応となるが、図4の症例はHR70bpmでも左のSSF2.0 OFFの画像ではRCAはモーションアーチファクトにより評価困難であるのに対して、右画像のSSF2.0 ONでは75%再構成でRCAのモーションアーチファクトが大きく低減しており、評価可能であることがわかる。このようにSSF2.0ではモーションアーチファクトを大きく低減した画像を得られる事から日々の業務において最適心位相検索における時間が大幅に短縮でき、安定した画像により解析や技師レポート作成まで効率よく業務を行えている。
図3.心臓CT検査時の心拍数(2024年1月‐3月)
図4. HR:70bpm, 75%再構成
1024Matrix
Revolution Maximaでは512×512Matrixに加えて、1024×1024 Matrixでの再構成が可能となり、より高い分解能での冠動脈評価を実現している。1024Matrixの使用については、当クリニックでは石灰化病変やPCI術後患者のステント内評価時に使用している。
現状、SSF2.0と1024matrixは同時使用が出来ないため、石灰化病変、PCI術後患者においてはβ遮断薬にてしっかりと心拍コントロールを行い検査実施した上で、1024Matrixでの再構成を実施している。図5の症例①の石灰化病変や症例②のPCI後のステント内評価(2.75mm)ともに、1024Matrixの画像がより分解能が高く詳細な情報が得られている。
図5. 512matrix、1024matrixの臨床画像
冠動脈CTでの被ばく
冠動脈CTは他部位の検査に比べ被ばくが大きく、その被ばくはDRLs2020においてCTDI volume 66mGy、DLP 1300mGy・cmとなっている。 64列での冠動脈CT撮影にはProspective Gating法とRetrospective Gating法があるが、その撮影法の違いにより検査での被ばく差は非常に大きなものとなる。
当院での撮影法による被ばく線量の違いは図6の通りである。図6で分かる通り、最も被ばく低減が可能なのはProspective Gating法で撮影するSnapShot Pulseでの撮影であり、当クリニックでは不整脈症例を除きHR65bpm以下の患者においては積極的にSnapShot Pulseで検査実施している。
当クリニックでの冠動脈CT連続30件における撮影法の内訳を図7に示す。β遮断薬にて心拍コントロールすることにより検査時の心拍は55.7±8 bpmとなっている。HR65bpm以下にコントロールすることで、被ばくが大きいとされる冠動脈CTにおいても低被ばくでの検査が実現している。
図6 DRLs2020と当クリニックの線量比較
図7 当クリニックでの撮影モードの内訳
医師からのコメント
SSFではモーションアーチファクトにより評価困難だった症例も、SSF2.0によりモーションアーチファクトは大きく低減し、冠動脈の評価ができたことは好印象だった。またSSF2.0では冠動脈だけでなく心臓全体のモーションアーチファクトが低減されるため、弁膜症の術前検査やSHDの評価に役立つことを期待している。 (図8)
図8. 大動脈弁評価(HR:61bpm, 25%再構成)
最後に
今回のCT装置更新で、SSF2.0による心臓全体へのモーションアーチファクト低減と1024matrixによる更なる高分解能が可能となったRevolution Maximaを導入した。当クリニックは検査内容が循環器に特化しているため造影CTでは冠動脈CTが主軸となり高画質な心臓解析画像が要求される。
冠動脈CTは一般的に被ばくが大きいCT検査となるが、当クリニックでは可能な限り低被ばくで高画質な検査を心掛けており、SnapShot Pulseでの撮影を多用している。しかしながら、β遮断薬を使用しても心拍コントロールの困難な患者は存在し、その際はCardiac Helicalでの検査実施となっている。高心拍症例においてはSSF2.0の強力なモーションアーチファクト低減により、CT更新前と比べ安定した画像提供を実現している。 また、症例によっては1024Matrix画像も積極的に取り入れており、CT更新前と比べ高分解能での画像提供が 可能となった。今後も装置の性能を発揮して、診断・治療に有用な検査ができるように努めていきたい。