クリニック紹介
おばやま血管心臓病クリニックは宇部市中央に位置し、循環器、内科を中心に大学はじめ周辺医療機関と連携を取り地域に根差した診療、治療を行っている。
当院はこれまでMRIを用いて心臓をはじめとする循環器領域の検査を実施していたが、この度GEヘルスケア社製64列CTであるRevolution Maximaを導入し年間3500件のCT検査を実施している。
図1. クリニックの皆様
機種選定理由
前述の通り、当院ではMRIによる循環器領域の画像診断を行っていた。CTではヨード造影剤による腎臓に対する影響やX線による被ばくの問題は生じるが、検査時間の短縮による患者メリット、ステント植え込み後の患者に対しても検査可能というメリット、得られる画像の空間分解能も良好ということもありCTでの画像診断へ切り替える事となった。
今回MRIからCTへの更新にあたり、撮影時の操作手技が簡便である事、新規ワークステーションを導入せずともコンソールでのワークステーション機能で冠動脈をはじめ様々な血管において3D画像や血管解析画像が簡便に作成できるというところもポイントとなりRevolution Maximaを導入した。
図2. CT本体での解析画像 (HR76bpm)
CardIQ Xpress
Revolution Maximaでは、GEヘルスケア社製ワークステーションであるAdvantage Workstation(AW)に搭載される心臓解析アプリケーションであるCardIQ Xpressが搭載可能であり、撮影から解析までCT装置のみで完結可能である。
CardIQ Xpressでは冠動脈の自動抽出が行われ各冠動脈のCPR画像、Lumen画像、心臓3D画像、冠動脈MIP画像の作成が可能となっている。64列CT装置での心臓解析において血管ズレ(以下、バンディングアーチファクト)が問題となる事があるが、CardIQ Xpressにはバンディングアーチファクト補正機能であるIBR(図3)が搭載されており、高精度な血管認識によって血管走行をトラッキングし、解剖学的情報を基にバンディングアーチファクトを軽減した画像解析、画像出力が可能である。
図3. IBR
放射線技師、看護師からのコメント
当院は、MRI撮像を専門に画像検査を行ってきたためCTを用いた検査は放射線技師としては殆どゼロからのスタートであった。そのため自院に適した撮影プロトコル設定を模索し、装置導入後もCTアプリケーション担当者と相談しながら調整を行い、より良い画像提出が可能となった。CT経験が少なかったことから導入当初は心臓に限らずCT検査に戸惑う事はあったが、操作性に関しては非常に簡便で、得られる画像も満足のいくものであった。CTを使用していく中で感じた事は、装置トラブルの少なさであった。以前使用していた他社MRI装置ではトラブルが多く検査不能、検査中断という事が度々起こり、患者へ迷惑をかけることがあった。CTの導入から1年が経過し、多少のトラブルはあったが、検査不能となった事は一度もなく検査実施出来ている。
心臓CTの解析画像を作成する場合、冠動脈が最も停止した心位相検索を行う必要があるが、ECG Editor機能を使用し不整脈データの除外や最適心位相検索を実施している。こうしたノウハウも症例ごとに担当のCTアプリケーション担当者へ相談し、経験を重ねていくことで医師の要望に応えることが可能となっていった。
当院では冠動脈をはじめとする血管系の造影検査を主として行っているが、CTに搭載されているワークステーション機能も満足のいくものとなっており日々の業務を実施している。
(診療放射線技師 上田様)
当院はこれまでMRIを用いた心臓および各種血管検査を実施してきた。MRIは造影剤を使うこと無く血管の描出が可能であり、冠動脈病変に対する検査も積極的に行ってきた。冠動脈MRAは冠動脈造影CTに比べ、X線被ばくが無く、造影剤無しで検査が出来る為、高齢者、腎不全、造影剤アレルギーなど、造影剤の使用が困難な場合も検査が可能で、スクリーニング検査としてとても良い検査だと思われていた。ただし、造影CTと比較して、側枝の描出が不十分なことがある。冠動脈治療(ステント植え込み)が行われていたり、ペースメーカーが挿入されている方では検査不能だった。また、MRIを用いた冠動脈撮像は撮像手順がCTに比べ複雑で、時間も長時間に及び、患者の心拍数の影響も大きく、事前の検査説明、精神的安定、体位の工夫、息止め指導など多くの手順を要してしまう。
これに対してCT検査は、造影剤の副作用について細心の注意は必要となるが、撮影手順が簡潔で検査時間も短く、検査する側、される側ともにストレスが少ないように感じている。
医療においては患者の病態をきちんと把握し気持ちに配慮しながらも、診断・治療に確実につながる正確な検査を行う事が大切であると考えている。当院では、放射線技師と看護師、その他医療スタッフが連携し、患者情報の共有を密にしてスムーズに検査を進めることができるように努めている。
当院のCT導入に際しては、豊富な経験と知識を備えているCTアプリケーション担当者の指導により、被ばく量と造影剤量を最低限まで減らす撮影を日々心掛けている。今後も被ばくの少ない、患者負担の少ない、患者のためのCT検査を行っていけるよう知識・スキル・経験を重ねていきたい。
(看護師 安本様)
医師からのコメント
当院の診療は、循環器領域を主としているが、地域のかかりつけ医として循環器領域以外でも病気の早期発見、早期診断が出来ることを理想としている。また必要であれば、病診・診診連携により、近隣の専門医療機関へ紹介することで、専門外の疾患にも対応している。こうした診療の強い味方として、この度導入したCTは非常に有意義に活用している。MRIと比較して、CT検査は、広範囲の撮影が短時間で可能となり、偶発的に発見される病変も少なくない。画像診断検査数においてはMRIで年間2500件の検査数に対し、MRIからCTでの画像診断への切り替え後は年間3500件と1.4倍増加した。早期肺癌などの検出は特に優れていると実感している。
尚、循環器領域においては適切な造影+撮影条件を設定すれば安定した画像が得られており、MRIでは描出できなかった血管も描出可能で、より正確な情報を得られるようになった。CTに搭載されているワークステーション機能での血管解析画像もカテーテル治療前にプラーク分布など詳細に検討でき、治療ストラテージ決定時にも利用している。
(理事長 安本先生)