病院紹介
十全記念病院は静岡県浜松市浜名区の病院であり、浜松市中心街より約12分と交通が便利な立地条件にありながら、緑したたる美しい自然環境に恵まれています。当院の外来診療科は内科、循環器科、整形外科、女性医療センター、外科、脳外科、皮膚科、リハビリテーション科、麻酔科、歯科口腔外科、耳鼻咽喉科となっています。放射線科は、PET/CT、SPECT、1.5テスラMRI、CT(64列/80列)、一般撮影、TV、マンモグラフィー、手術室にはDSA、外科用イメージを診療検査機器として備え、放射線科医師2名、放射線技師13名で日々の業務を行っております。入院施設は、一般病床、回復期病床、長期療養型病床があります。リハビリセンターを回復期病床フロアに設置し、手術センターを一般病床に設置するなど、入院されている患者様と職員の導線をできるだけ短くなるように設置しています。
Fig1. 十全記念病院様 外観
導入している医療機器について
2019年よりGEヘルスケア社製放射線量管理システムであるDose Watchを導入しており、放射線医療機器の被ばく管理を行っています。この度、2024年3月にGEヘルスケア社製CT装置Optima CT660からRevolution Maxima(以下、Maximaとする)への更新を行いました。さらに、他社のディープラーニングリコンストラクション(DLIR)を搭載しているCTを含め、PET/CT、SPECT、マンモ装置の放射線医療機器における被ばく管理を行っています。
Fig2. 放射線部の皆様と導入したMaxima
当院の被ばく管理について
2019年3月に医療法施行規則の一部を改正する省令が公布され、2020年4月より医療放射線の線量記録および管理が各医療機関に義務づけられることとなりました。当院では、以前よりPACSにDose Reportを送信して線量管理を行っておりましたが、上記改正に伴いDose Watchを導入するに至りました。
Dose Watchを使用して、DRLsと画質を考慮し各検査のプロトコールを検討し修正しました。Dose Watchでは、DRL監査ツールとCT被ばく線量レポートをデータとして出力することが可能であるため、それらの情報を参考にしています。また、オンラインサロンの動画を見ながら、基本操作や線量管理の方法および考え方を学び、自施設の検査内容に沿う線量管理にカスタマイズを行っております。
この動画は、何度も見直すことができるため、個人の学び直しや後任育成に活用しています。さらに、Dose Watch専任のアプリケーション担当者は診療放射線技師であり、不明な点についてのサポートを行って頂いています。また、最近では監査の際に、詳細のレポート提出を求められるケースが増えてきており、Dose Watchにて各種レポートが作成できるため非常に助かっています。
Fig3. Dose Watch DRL設定画面
Revolution Maximaの被ばく低減技術
今回導入したMaximaでは、様々な被ばく低減技術が搭載されており、それらを活用することで線量管理と画質の両立が実現できています。特に被ばく低減として重宝している機能をいくつか紹介します。
① Organ Dose Modulation (ODM)
撮影範囲中の特定領域の線量を調整する機能です。頭部撮影では水晶体、胸部撮影では甲状腺・乳房の被ばく低減ができます。主に頭部領域の撮影で必要な領域を選択して積極的に活用しています。
Fig4. Organ Dose Modulation
② Dose Reduction機能
あらかじめ設定した撮影プロトコールに対して、Auto mAの画質設定値(Noise index)に応じた画質を維持したまま、所望の被ばく線量低減率(% Dose Reduction)の設定ができる機能です。設定した線量低減率に応じて、逐次近似撮影法であるASiR-Vの最適な設定が自動で選択されるため、撮影条件を簡便に設定することができます。
Fig5. Dose Reduction機能
mAコントロール画面にてNoise Index値と
独立して%Dose Reductionを設定可能
③ SnapShot Assist
冠動脈撮影において、単純撮影時などの息止め時のデータなどを利用し、管電圧・管電流・撮影方式・撮影ピッチ・再構成方法・再構成位相などを全自動設定する機能です。患者様のBMIに応じて管電圧と管電流を自動設定されるため、被ばくを抑えた心臓検査が可能となりました。同一の患者様での比較を行ったところ、約40%の被ばく低減となっておりました。
管理している被ばく線量について
当院では、DRLsと画質を考慮して基準線量の決定を行い、基準値からレベル1を1.5倍、レベル2を2倍の線量でアラートが出るように設定しています。外れ値を管理しアラートがたったら、Dose Watch上の検査詳細、検査品質レビュー、検査分析機能を使用して、それぞれの撮影範囲、撮影プロトコール、ポジショニング、画像等を検査オーダーと照らし合わせながら分析を行っています。
撮影プロトコールの選択が異なっていたことを検知した際は、プロトコール選択ミスの発生率を下げるために表記を変更したり、資料を作成しオペレータ間での共有を行っています。
これらの管理とオペレーションの最適化を実施することにより、当院ではCT検査の線量をDRLs2020の診断参考レベル未満での運用を行うことができています。
Table1. 当院の被ばく管理による線量
*撮影範囲・撮像回数が一定では無いため比較のため1相のみのDLPを記載
さいごに
放射線量管理システムであるDose Watchの使用によって、当院ではいずれの部位においてもDRLs2020の診断参考レベルを超えずに検査ができていることが確認できました。今後は、Maxima導入によって新たに搭載された被ばく低減技術であるODMの体幹への使用検討や心臓CTの線量動向を確認検証することによって、より最適な撮影条件での検査を実現していきたいと思います。
また、DRLsは2025年に改訂が予定されており、診断参考レベルも継続して更新となることが想定されます。Dose Watchの運用方法も今後の改訂に合わせて更新を行い、引き続き線量管理を行うことによって患者様により低被ばくで最適な検査を提供できるよう、日々検査の最適化を継続していきたいと思います。