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Revolution Apex Elite

JB11034JA

※お客様のご使用経験に基づく記載です。仕様値として保証するものではありません。

製造販売:GE ヘルスケア・ジャパン株式会社
販売名 マルチスライスCTスキャナ Revolution 医療機器認証番号:226ACBZX00011000
販売名 AWサーバー 医療機器認証番号: 22200BZX00295000
販売名 アドバンテージワークステーション 医療機器認証番号: 20600BZY00483000

Revolution Apex Eliteを活用した臨床診療

地方独立行政法人 堺市立病院機構 堺市立総合医療センター
診療放射線技師 宮内 亮典 様



はじめに
当院が位置する大阪府堺市は政令指定都市であり、堺市二次医療圏90万人を中心とした唯一の三次救急医療を担う病院として、重篤の患者や緊急度の高い患者に対して24時間体制で対応している。487床の病床数を有し、CT装置は一般診断用2台と救急外来用1台の計3台備えており、併せて1日約130件の検査を実施している。2024年1月より、一般診断用1台をGEヘルスケア社製Revolution Apex Elite(以下、現装置)へと更新した。機種更新に伴い、Revolution Apex Eliteがもたらした臨床のRevolution(改革)について報告する。



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2024年1月導入 Revolution Apex Elite



被ばく線量低減とGemstone Spectral Imaging 撮影のルーチン化
現装置への更新により、ディープラーニングを使用した再構成であるTrueFidelity DL(以下、TFDL)が使用できるようになった。これは、従来のASiR法よりも高いノイズ低減効果と高空間分解能を示し、テクスチャの崩れも抑えられている。当院でも導入し、線量低減を目的に使用している。従来では、胸腹部撮影での設定はNoise Index11.5としており、平均CTDI 13.9mGy、DLP 1034mGy(50~70㎏)であったが、現装置では設定をNoise Index14として平均CTDI 6.43mGy、DLP 493mGy(50~70㎏)となり、約50%と大幅に低減できた。画像のSD値も大きな差がないようにみえる。
従来装置のGSI撮影では、GSI Assist機能もなく、撮影条件も限られた条件しかないため、ルーチン化は困難であった。しかし、現装置ではGSI Assist機能が使用でき、高電流条件など撮影条件のバリエーションも増え、いかなる撮影にも対応可能となった。これにより、現在は多時相撮影の動脈相はGSI撮影をルーチンで行っている。
現装置では、再構成PCの性能も向上しているために再構成時間は大幅に短縮した。TFDL、GSI撮影に関わらず、再構成時間が短縮しているため、検査スループットに支障はない。



心電同期心臓CT検査
現機種は最速rotation time 0.23secでの高速撮影が可能な機種である。従来は心拍数70bpm以上でβ遮断薬を使用していたが、rotation time 0.23secによる大幅な時間分解能の短縮とSnapShot Freeze 2.0の相互効果により、心拍数100bpm以上であってもモーションアーチファクトのない画像 (図1)を得られるため、現在ではβ遮断薬を使用していない。
次に、当院における最適な心位相検索についての検討では上記で述べた機能とSmart Phase機能により、約90%の症例が冠動脈の動きが最も少ない最適な心位相で自動再構成された。これにより、撮影後の心位相検索にかかる時間と手間の大幅な短縮となった。
被ばく線量については、Auto Gating機能によって最適な照射心位相が自動で決定されることにより、大幅に低減していた。また、不整脈症例に対しても、不整脈回避機能と上記までの機能の組み合わせにより、モーションアーチファクトのない画像が得られている。


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図1) 高心拍症例の右冠動脈CPR



以上のことから、当院における心臓CT検査の難易度は、他の造影CT検査と遜色なくなってきた。
一方で、新たな取り組みとして、サブトラクション処理を行った画像の提示にも挑戦している。単純CT画像に対して、SnapShot Freeze 2.0処理を行うことにより、モーションアーチファクトのない画像が得られる。その結果、サブトラクション処理が可能となったため、石灰化病変やステント内腔の描出能向上が期待される(図2)。


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図2) ステント挿入症例におけるサブトラクション処理



急性期脳梗塞患者における撮影
当院では、時間外問わず脳卒中ホットラインを導入しており、年間約50件の脳血栓回収術等の血管内治療を実施している。急性期脳梗塞の診断はMRI検査が一般的であるが、MRI検査は撮影時間が長く、検査室の状況により緊急検査の受け入れがすぐに行えない、あるいは体内金属等の安全確認に時間がかかるなど迅速に診断が行えないことが多い。これらの多くの問題は、CT検査に置き換えることによって解決できる。現装置では、エリアディテクタにより脳全体のCT Perfusion(以下、CTP)が可能になっている。その結果、CTP撮影のみで診断をし、血管内治療へと向かうフローが確立しつつある。これにより、血管内治療までの時間の大幅な短縮と、安全な医療の提供が期待される。


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図3) MTT(左)とペナンブラ領域(右)



同社ワークステーションであるAdvantage WorkstationではCTP撮影終了後数分で画像解析が完了し、診断を行う事が可能である。CTP解析画像はカラーマップの色調から定量的に灌流異常域を評価することや、虚血コアとペナンブラ領域の解析画像も作成できる(図3)。また、CTP画像を用いてサブトラクション処理を行った4D画像を作成することができ、血流動態や側副血行路の評価にも有用である。 急性期脳梗塞の診断では、脳梗塞の評価だけでなく血管の解離・狭窄や、アンギオアクセスルートの評価も同時に求められている。そこで当院では、これらの要望に対応できる新たな撮影プロトコルを以下のように考案した(図4)。


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図4) 当院における頸部CTA撮影プロトコル



この撮影プロトコルでは、一度の撮影スタートボタンで頭部CTP画像と大動脈から頸部CTA画像を一連で得ることができる。これにより、CT検査に不慣れな技師でも簡便に撮影出来るため、日勤帯だけでなく時間外でも対応できるようになった。
直近6ヶ月でCTPのみで血管内治療を行った症例は10件だった。このなかには、ペースメーカ留置患者も含まれており、従来であれば、このような患者の診断から治療までに相当な時間がかかっていたと想像できる。CTPの意義が証明される症例であった。



結語
さまざまなサポート機能を搭載したRevolution Apex Eliteへの更新により、検査効率が向上し、新たな検査や撮影法に取り組むことが可能となった。今後挑戦していきたいこととして、心筋遅延造影CTがあげられる。障害心筋と正常な心筋とのコントラストの評価や、被ばく線量低減のために70kVや80kVでの撮影が推奨されていることに対して、TFDLによる高いノイズ低減効果は有用であると期待する。
また、担当の技師が時間に追われることなく、精神的な負担が軽減され、効率的に業務を行えるようになった。ただし、多くのサポート機能を有効に利用することで撮影自体は簡素化されたが、撮影技術は複雑になっているということを忘れてはならない。ただ装置に頼るだけではなく、装置の良さを引き出せるようこれまで以上に研鑽を積み、日々の業務に真摯に取り組みたい。