はじめに
*冠心会大崎病院東京ハートセンター
当院にRevolution CTが導入されたのは2016年12月である。
放射線科では、これまで64ch CTを使用し心臓CTを施行していた。
心臓専門病院である当院は、1日あたり10数件の心臓CT検査を施行しており、検査数としては多い施設と思われる。当院では、当日検査も受け入れ、かつ心臓CT画像提出・診断結果を即日に行うのがポリシーであるため、検査スループット能力が高く、高画質(いわゆる心臓のモーションアーチファクトがない画像)が得られるCTが必要である。しかしながら、以下の課題を抱えていた。
1)高心拍、不整脈の場合、画像アウトプットまで時間が掛かる
2)上記の場合、患者様の拘束時間(結果待ち時間)が長くなる
3)満足のいく画像を得るのに、操作者の経験に頼ることが多い
CT装置更新時、装置選定基準は、これら我々の課題を解決する能力を有することが必須条件であった。
今回、導入された Revolution CT には、最新の心臓撮影技術 「Smart Cardiac」が搭載されている。
この「Smart Cardiac」は、以下の機能の総称であり、これら機能は我々の課題を解決できると想定できた。
・Auto Gating・・患者の心拍データから最適な撮影プロトコルを自動選択
・Smart Phase・・最適心位相を自動的に画像再構成
・SnapShot Freeze・・時間分解能向上アルゴリズム
Smart Cardiac による臨床現場での成果物
結論から言うと、以下の成果物が得られている。
1.高心拍、不整脈時の検査スループットが格段に向上した。
特に Smart Phase と SnapShot Freeze は想像以上のパフォーマンスを発揮している。
モーションアーチファクトの無い画像が再構成されるので、洞調律、高心拍、不整脈によらず画像提出までの時間は安定した低心拍の患者とほぼ同じである。従来は高心拍・不整脈時は1時間を超える処理もあった。処理時間の短縮により、スタッフ間の連携(他検査のサポートなど)もスムーズになった。
2.循環器科より、CT検査の画像提出時間の短縮化を評価された。
医師はより迅速に読影・診療方針の決定が可能になり、患者様は待ち時間が軽減した。高心拍・不整脈時には長時間患者様を拘束することもあったが、現在は解消されている。
3.入職直後の放射線技師も心臓CT検査を施行できる。
また放射線技師間による、操作・処理時間の差が殆ど無くなった。
また、提出される画像の画質も、放射線技師間による差異はなく、ほぼ一定の品質を保っている。画像診断装置を管理する立場としては、この恩恵は非常に大きい。
*当院のCT室。心臓検査だけでなく、頭部、胸腹部などの全身検査も行っている。
ある1日の紹介
ある1日のCT室の検査内容を紹介する。
当院では心臓CT検査だけでなく、頭部・胸腹部などの検査も行っているが、ここでは心臓CTのみピックアップした。実際の検査開始ー終了時間と最適心位相再構成時間を記載する。
*心臓CT検査数:15件 ※心臓以外に9件のCT検査あり
*検査内訳: 冠状動脈チェック 13例、冠状動脈+大血管 1例、アブレーション 1例
*平均検査時間:9.2 ± 4.2分
*平均最適心位相再構成時間:5.3±4.3分 (※他業務の割り込みなどを含む)
結語
心臓CTは、十分に市民権を得て、臨床的有意点も数多く立証されているが、その半面、撮影・画像処理には、まだ課題が残っているのが実状である。課題による不利益は、診断・治療や患者様にも影響を与えているだろう。今回、当院で導入した Revolution CT とその新機能、「Smart Cardiac」は、当院が抱えていた課題を解決し、成果物を出してくれた。期待どおり、期待以上の結果を出しているが、もちろん Revolution CT や Smart Cardiac に対して改善要望はいくつか存在する。それらは、我々の役目の1つとして、メーカーに「臨床上の実課題」と「より良い心臓CT検査」を伝え続けて、更なる機能向上を期待したいと思う。