医療法人社団 葛西中央病院様にご導入いただいた Revolution ACTの臨床使用経験のレポートを頂きましたのでご紹介いたします。
病院紹介
葛西中央病院は昭和42年の開院以来,休むことなく地域医療に携わってきました。
最近は医療の領域が広範に及ぶようになり,当院は多くの医療機関や施設と連携しています。
来院される一人ひとりにとって最もよい医療や介護サービスが受けられるように,葛西中央病院は病気やけがで困ったときに気軽に受診できる病院であり続けます。
葛西中央病院外観
装置更新の背景
当院では、1992年からCTが稼働しており、長年GE社製のCTを使用してきました。一代目のCTは、Image MAXというコンベンションスキャンタイプのCT、2005年に二代目のCTが稼働し、 ProSpeed AIというCTです。このCTはシングルスライスヘリカルCTでした。12年間 このProSpeed AIを使用してきたのですが、 GE社の担当サービスから、「サービスパーツの調達が困難になってきており、部品供給保障がきれてしまう」という話を受けました。故障の頻度はかなり低かったのですが、装置更新の大きな理由になりました。もちろん、CT装置を更新することによるメリットは大きいものと想定できたので、院長と共に三代目CT装置の選定に入りました。
更新するCTは、16列CTとしました。シングルCTから16列への更新なので、検査パフォーマンス向上が期待でき、また診療報酬は約40%の増加になるので経営的メリットも期待できました。
当院の Revolution ACT
(左;土谷明男院長、右;筆者)
装置選定から決定まで
機種選定には国産CTメーカーも候補として上がりましたが、長年GE社のCTを使用してきた経験で、機器トラブルが少なくシステムの信頼性が高いと感じてたことが大きかったです。現場で画像診断検査を任されている立場ですと、当たり前ですが、故障はできる限り避けたいと思っています。ご高齢の患者様が多い当院では、来院されることも重労働になる方も少なくありませんので、常に検査が可能な状態にしておくのも地域医療を担っている病院の務めと思っています。故障は100%は避けられませんが、GE社にはブロードバンドを使用したリモート診断サービスがありますので、予期せぬトラブルを事前に察知し、ダウンタイムを軽減することが期待できます。これは、GE社を選定する大きな理由になりました。
また、GE社の、ワールドワイド企業としての強みかもしれませんが、買取りの仕組みもしっかりしており、ProSpeed AIのパーツ取りも含めた買取りで経営的メリットも生まれたのも選定の一因です。
さらに近年、放射線被ばくに対する関心が大きくなっています。当院でも、低被ばくを意識した撮影を行っています。Revolution ACTは多くの低被ばく技術が搭載されており、代表的なものは「ASiR」と「ODM」です。「ASiR」はGEの上位機種に搭載されているGE独自の画像再構成アルゴリズムであり、低被ばく下においても分解能を維持して高画質な画像を提供できます。ODM (Organ Dose Modulation)は、放射線感受性の高い臓器に対してX線照射を抑える機構で、ICRPの水晶体被ばく等価線量引き下げで放射線審議会において関係法令の改正が見込まれるので、このODM機能は有用と思いました。これらの機能を有していることも、選定の一因になっています。
現場の要望の実現
CT装置更新の際に、現場の要望として上がっていた事は、以下の 2点でした。
1)CT検査時間の短縮
長時間動かないで寝ていられない患者様、円背や腰痛で仰向けに寝ていられない患者様、息止めや上肢挙上保持が難しい患者様、難聴の患者様が多く、できるだけ短時間で苦痛の少ない検査をしてあげたい。
2)X線管のスペックアップ
良い画像を得るために管電流を上げたいが、連続撮影でX線管のウエイトタイムがかかりやすく、検査ワークフローと患者様の被ばくのために状況に応じ調整・撮影をしていた。
Revolution ACTの稼働により、上記2点は確実に現実化されました。 まずは検査時間の短縮になった要因を挙げてみたいと思います。
1.16列のディテクターと高速ヘリカルスキャンにより短時間撮影が可能になり、胸部から骨盤までの広範囲撮影も10数秒で終了します。また、従来はルーチン10㎜厚で撮影し、場合によって5mm厚、HRCTの時は1.25㎜で追加撮影していましたが、16列ディテクターの恩恵で、常に1.25㎜厚のデータが使用できるので、追加撮影がなくなりました。
2.撮影以外では、Revolution ACT特有の機能である「デジタルチルト」のおかげで、患者ポジショニングが著しく簡素化しました。この「デジタルチルト」は円背などでチルト制限がかかる、または正中やOMラインが取れない患者様に対して有効で、前機種では非常に撮影が難しく、時間が掛かりましたが、Revolution ACTではポジショニングの細かい微調整に時間がかからなくなったため、患者様は撮影体位での苦痛がなくなり、体動によるモーションアーチファクトによる再撮影も無くなりました。
アキシャル断面だけでなく、いわゆるMPR画像(サジタル・コロナル断面)や 3D画質が向上している。
3.さらに特有の機能である「スマートプラン」は、スカウト画像(位置決め画像)から撮影計画に移る時に、オートでスキャン範囲、センター位置、チルト角度を認識表示する機能です。これにより、人の手で撮影計画を設定する必要が無くなり、短時間で撮影に移行できるようになりました。
以上のように、X線撮影の速度だけでなく、患者ポジショニングから撮影計画までの簡略化がCT検査時間を大きく短縮しました。入院患者様をストレッチャーで移送するのに病棟スタッフ2人がかりでCT室に移送するのですが、この短縮化により、CT一人当たりに関わる時間が短くなり、病棟の業務に関われる時間が増え、結果的に病棟スタッフの生産性向上が図れました。

Revolution ACTの操作風景
次にX線管のスペックアップに関してです。 選定時には、2.0MHUのX線管球に不安を持っていましたが、実際には、GE独自のアルゴリズム「ASiR」により線量を落としても高画質な画像が得られました。これは実効容量67%アップの3.3MHU相当になると聞いています。この「ASiR」のおかげで、造影のダイナミックCT撮影時や、3フェーズ撮影などの連続撮影の時も、X線管のクーリングタイムを考えてmAやヘリカルピッチを調整する必要がなくなりました。もちろん画質も問題ありません。通常検査はもちろんですが、腕が挙上できない患者様でも、アーチファクトの少ない高画質な画像が出力されています。2MHUの経済性で、3.3MHUの実力を発揮するので、ローコスト・ハイパフォーマンスX線管球と言えると思います。
さらに、画像処理の機能も飛躍的に向上しています。16列CTでは、常に1.25mm厚データを収集しているので、MPRや3D画像の需要増加に常に対応可能となりました。撮影プロトコルが比較的自由にカスタマイズ可能でリコン条件は最高10個まで組むことができますし、MPR自動処理を事前に登録しておくことも可能なため、画像処理の時間が大幅に短縮されました。また、Host PCの演算処理スピードが上がっているため、3D作成時の追加・削除機能の処理が早く、全体的に作成しやすくなりました。
まとめ
16列というスペックに、高画質技術・被ばく低減・オート機能などを融合させたRevolution ACTは当院のCT検査環境を大きく変えました。今後も患者様にとってより良いCT検査を実施できるよう努めていきたいと思います。