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Revolution Apex Elite

JB12984JA

※お客様のご使用経験に基づく記載です。仕様値として保証するものではありません。

製造販売:GE ヘルスケア・ジャパン株式会社
マルチスライスCTスキャナ Revolution 認証番号:226ACBZX00011000
マルチスライスCTスキャナLightSpeed 認証番号:21100BZY00104000
AWサーバー 認証番号:22200BZX00295000
アドバンテージワークステーション 認証:20600BZY00483000

256列CT装置において
Dual Energyルーチン撮影の運用がもたらした臨床的メリット

青森県立中央病院 放射線部
山本 隆史 様



病院紹介
当院は青森県青森市に位置する中核病院である。病床数は584床で、県内の医療を支える基幹的な役割を担っている。放射線部門では医師6名、診療放射線技師36名、看護師16名にて日々業務を行っている。


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はじめに
2023年12月にOptima 660ProからRevolution APEX Eliteへ更新、さらにRevolution APEX Coreを増設し、現在Discovery 750HDと救命センターに設置している他社製CTの4台体制で運用をしている(Fig.1)。更新前まではSingle Energy (以下SE) を主に使用していたが、診断用CT3台ともにDual Energy (以下DE) の撮影が可能となった。
運用として、Revolution Apex 2台をメインで使用しルーチン検査をDEで行い、Discovery 750HDはフォローアップ検査ではSE、肺塞栓や頭部血栓回収術後の出血/ヨード判定などにDEを使用している。
令和6年度、GEヘルスケア製装置のみで約23700件の検査を実施し、その内約14000件はDEの撮影である。なお、血管系の検査においては目的に応じてDE, High-resolution, SEを使いわけて撮影している。



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Revolution Apex Elite

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Revolution Apex Core

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Discovery 750HD

Fig.1 当院で使用しているCT装置のラインナップ



SEと同様に使用できるDEの撮影
①再構成時間とスループット
ルーチン検査をDEにするにあたり懸念していたのが、画像再構成時間である。750HD使用時は、頭部単純30枚の再構成時間に2分程度かかっていたが、Revolution Apexでは、リアルタイムにQC画像(140kVp、2.5mmSlice厚)が表示されるので、画像確認が早く、検査にかける時間はSEと変わらない。その後、再構成が2つ並列して行われるため、次の検査が始まる前には、再構成がほぼ終了している。



②クーリング
管球のクーリング機能が向上していることもあり、日勤帯、昼も含めフル稼働しているが、装置1台40件程度の検査をクーリングを出さずに問題なく行うことが可能である。



③画質
DLIRの恩恵もあり、SEとほぼ同等の画像で、さらに被ばくも低減ができている(Fig.2)。
造影に関しては、ルーチンで65keVを使用している。低keVを用いて造影剤量を下げる使用方法も十分にできるが、放射線科医からの要望で診断能を上げる使用方法を選択している。DEの画像に関して、他科医師からの画像の違和感などの指摘を受けたことはない。


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Fig.2 DE with TFDLで画質は担保したまま線量を下げ、CT値も上昇



検査後にDE解析ができるように、単純を含めたDE全シリーズのData Fileを作成し、専用サーバーを用いて2か月間保存している。専用サーバーとAWサーバーがネットワークで繋がっているため、放射線科医や放射線技師は、必要時アクセスしAWサーバー等で解析を行っている。



Dual Energyルーチン撮影が可能になり得られた臨床的メリット
画質や運用面でSEと同等にDEの撮影が可能になったことから、 DE撮影でルーチン検査の運用を開始した。レトロスペクティブにデータを解析することが可能になったことで得られた臨床的メリットを紹介する。


症例1)腸閉塞
従来SEで撮影していたが現在全例DE撮影になり、虚血が疑われる症例については、必要時カラーマップを提出している。SEではわかりにくい症例でもDEがあることで、放射線科医からも確信度があがったとの評価を頂いている。
腸閉塞の症例(fig.3)である。骨盤内小腸ループは一部壁の造影が減弱しており、虚血が疑われる。 


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Fig.3 腸閉塞症例におけるIodineマップ



症例2)肺塞栓
熱源検索で全身撮影を実施し、偶発的に肺塞栓が認められた所見である(Fig.4)。肺塞栓目的に検査を行っていないため、造影に関しては520mgI/kg・50秒間注入し、注入終了してから30秒後に撮影を行っている。高速注入でなくても、仮想単色X線画像により造影効果を上げることができ、肺塞栓を判別できる。偶発的に見つかった所見でも、DE撮影がルーチンのため、肺灌流画像の作成が可能であった。



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Fig.4 偶発的に見つかった肺塞栓



症例3)胃癌
胃癌・乳頭部腫大・膵尾部腫瘤疑いで、腹部Dynamic撮影を実施した症例。膵腫瘤疑いのため造影5分後に膵遅延撮影を追加した。造影条件は600mgI/kg・30秒注入。
遅延造影として40keVとIodine(Water)の画像を提出している。
膵腫瘍の所見はなかったが、遅延造影により胃体部前壁に正常の胃壁よりもやや厚く濃染される部分があり、原発巣の局在が疑われた。Iodine(Water)のカラー画像を出すことで病変が視認しやすい(Fig.5 )。


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Fig.5 全例DE撮影によりレトロスペクティブに特定できた原発巣



症例4)アダムキュービッツ動脈
TEVARを予定しており、動脈瘤のフォローおよびアダムキュービッツ動脈の同定目的のために検査実施。アダムキュービッツ動脈は細く描出が困難のため、造影効果を上げる目的で、DEを用いて撮影。造影条件は28mgI/kg/sec・28秒注入。横隔膜レベルでPrep開始しCT値200でトリガーをかけ、10秒後に15秒撮影をした。造影効果を上げるため50keVで再構成を行い、単純も造影と同様50keVで再構成しサブトラクションをおこなった。アダムキュービッツ動脈は左第9肋間動脈からの分岐している(Fig.6)。




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Fig.6 DEにより画像化できたアダムキュービッツ症例



症例5)大腿骨転子部骨折
転倒し、右股関節痛のため歩行不能。右大腿骨大転子に圧痛あり、XPで骨折は不明瞭のためCTを行った。65keV画像では右大腿骨転子部に骨折が認められ、Water(Calcium)とWater(HAP)画像で骨髄浮腫が確認できた(Fig.7)。

 

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Fig.7 Bone Marrowで骨髄浮腫が確認できた症例



新たな試み:小児領域での仮想単純画像におけるDEの有用性
Revolution Apexは、仮想単純画像Virtual Unenhanced(以下VUE)の生成が可能である。当院では癌のフォローアップで過去履歴に肝臓に疾患がない患者や、小児撮影で被ばく低減目的により単純撮影を省略し造影のみの場合に、放射線科医指示のもとVUEを作成している。そのため、小児の撮影プロトコルはDEがメインとなっている。
DRLs2025の小児体重別にプロトコルを作成し、DRLs2025の腹部5~14kgのCTDI vol:4mGyより、DEで設定できる最小のCTDI vol:2.92mGy が下回るためDEを使用している。VUEを作成する際は、付き添いの小児科医師にVUEとはどのような画像なのか説明をしている。今ではこちらが提案する前に、小児科医よりVUEの依頼があり、徐々に浸透していると感じる。以下に7歳の虫垂炎症例を示す。
Fig.8では、小児腹部15~29kgのDRLs2025の値がCTDIvol:4mGyに対し、DEにてCTDIvol:3.64mGyで造影1相撮影とVUEの2種類の画像を作成した。




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Fig.8 小児撮影 VUEにより被ばく低減できた例



最後に
ルーチン検査にDEを用いることで、レトロスペクティブにDEの画像解析を加えることが可能であり、SEに比べ今までにない付加価値を得ることができ、仮想単純画像を上手く使用することで被ばく低減につげることができた。
DEに関して、これからまだまだ新しい解析方法が増えていくと思われるため、今後の発展に期待したい。