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SIGNA™ Victor

JB11767JA

※お客様のご使用経験に基づく記載です。仕様値として保証するものではありません。

販売名称:シグナ Prime 医療機器認証番号:303ACBZX00016000
販売名称:AIRコイル 1.5T 医療機器認証番号:301ACBZX00001000

SIGNA™ Victor 1.5T MRIでのMR Bone image (oZTEo)の使用経験について

一般財団法人 竹田健康財団
竹田綜合病院 放射線科
佐藤 友規 先生、常陸 真 先生、間島 一浩 先生

 

竹田綜合病院では、既存のシステムからSIGNA™ Victor1.5TへとLift Upgradeされました。いままで、検査数が多いため画質を犠牲にしながら検査を行っていただいていましたが、Lift Upgrade後はディープラーニング画像再構成技術のAIR™ Recon DLとAIR™ Coilを使用することが可能となり、大きく画質改善が可能となりました。画質が上がることで検査時間も短縮され追加撮像も可能となりました。今回は整形領域での追加撮像いただいているoZTEoの話を伺いました。


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はじめに
竹田綜合病院は福島県会津若松市に位置し、病床数837床、診療科30科を擁し、地域医療の中核を担っています。当院では2023年12月にSIGNA™ Victor 1.5TへのLift Upgradeを行い、以降は他社製の3T MRI装置との2台体制で検査を行っています。装置更新により1.5TのMRI装置でも3T MRI装置に近い画質、撮像時間で検査を行えるようになり、技術の進歩を実感しています。2024年9月には他社製の3T MRI装置の更新がありましたが、SIGNA™ Victor 1.5Tの性能向上のおかげで装置更新期間中の1台体制でも検査件数を維持することができました。




Lift Upgradeによる新規アプリケーション oZTEoの導入
SIGNA™ Victor 1.5T MRIへの更新による性能向上に伴い、新たにMR Bone image(oZTEo)を撮像できるようになりました。
oZTEoはGE HealthCare 社独自のシーケンスで、3D radial scanによりTEを限りなく0に近づけることで皮質骨を描出します。TEがほぼ0ms(0.016ms )であるため皮質骨以外の軟部組織は概ね均一に”灰色”の信号を示し、白黒反転した画像を出力することでCTの骨条件に近い描出を可能とします。他のシーケンスで骨髄や周囲の軟部組織を評価し、oZTRoで皮質骨を評価することで、他のシーケンスを補うことができます。
oZTEoの最大のメリットは患者さんを被曝させること無く骨皮質の情報を得られるという点です。放射線感受性の高い小児や若年者、妊婦に対しては特に有用だと思われます。CTに完全に取って代わることはできませんが、フォローアップ時には積極的に活用することで被曝低減につながると思います。
当院では放射線感受性が高い小児や若年者に対しては積極的にoZTEoを撮像するようにしています。また、地域医療連携で開業医の先生から紹介をいただいてMRIを撮像することがあり、その際にCTや単純X線写真による骨の情報が不足していることがあれば、oZTEoを追加で撮像することがあります。



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MR Bone Imageについて
MRIで皮質骨を評価する手法は他にも様々あります。短いTEで撮像するUTE法(Ultra short TE)、Gradient echo法で撮像するT1強調画像やT2*強調画像の反転画像が代表として挙げられます。これらの撮像法では靱帯や腱などの構造も骨皮質と同程度の信号で描出されてしまい、骨皮質だけを白く 描出することができません。
oZTEo、3D-T1強調画像を反転させたBone like image、UTE で撮像したBone like image、multi-echoで収集したT2*強調画像を反転させたBone like imageの画像を供覧します(図1)。Bone like imageの方が比較的短い時間で高分解能に撮像でき 、骨梁構造がより明瞭です。oZTEoはよりCTに近いコントラストで皮質骨を描出することができ、靱帯や腱の描出でBone like imageとの差異がよくわかります。骨のみを強調して描出できる点で、oZTEoこそ真にBone imageと言えると感じています。




撮像方法について
oZTEoは3D撮像法であり、MPRを作成することで断面を自由に変更できるという利点があります。手指や足関節などの撮像断面の設定が難しい部位で特に有用で、CTと同じように複数の断面から対象を評価できます。MPR作成に耐えうる分解能を確保するにはvoxel sizeを小さくする必要がありますが、voxel sizeを小さくすると当然SN比が低下してしまいます。分解能を維持した上でSN比を向上させるためには加算回数を上げる、FOVを広げた上でmatrixを増やす、撮像枚数を増やす、などの方法があり、どうしても撮像時間が延長してしまいます。当院では放射線技師と調節を重ね、oZTEoの撮像に5分程度の時間をかけるようにしました。
SN比に大きな影響を与えるパラメータとして、Flip angle の調節も重要です。Flip angleを大きくするとSN比が向上しますが、背景組織が均一な”灰色“で描出されなくなってしまい、CT unlikeな画像になってしまいます。SN比と組織コントラストのバランスを考慮して、当院では主に Flip angle 1.0°~1.4°を採用することにしました。
パラメータの調節はやや煩雑ですが、調節を重ねることで1.5TのMRI装置でも臨床的に実用性のある画像を撮像できると感じています。


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画像供覧
実際に撮像した画像を供覧します。

症例1は後縦靱帯骨化症の症例です(図2)。T1強調画像やT2強調画像だけでは骨縦靱帯の肥厚と骨化を区別できないことがしばしばありますが、oZTEoを追加することで骨化した後縦靱帯が明瞭に描出されます。
症例2は腰椎分離症の症例です(図3)。骨髄浮腫を伴うような有症状の分離症であれば通常のシーケンスでも見落とすことはほとんどありませんが、完成した分離症のように骨髄信号の変化に乏しい症例では通常シーケンスのみでは見落としてしまうことがあります。oZTEoを追加することで骨皮質を評価することができ、初期の分離症の僅かな骨吸収、完成した分離症の両方が明瞭に描出されます。


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症例3は骨腫瘍の症例です(図4)。骨腫瘍の初回精査では単純X線写真やCTが必要になりますが、フォローの際はoZTEoを撮像することでCTの骨条件と同じようなコントラストで骨皮質を評価することができます。特に小児では被曝低減に大きく貢献できると思います。


今後の展望
現時点は画質を担保するために5分ほどの撮像時間を要していますが、GE HealthCare社 のDeep learningによるノイズリダクション(AIR™ Recon DL)が導入されれば、画質を維持したまま撮像時間を短縮したり、撮像時間を延長することなく画質を向上させたりする ことができるようになるのではないかと期待しています。
当院でのoZTEoの使用経験、使用感について報告させていただきました。まだまだ発展途上の技術、撮像方法ですが、有効活用して臨床に貢献できるようになることを目指していきます。