― ファンビーム式DXA装置から鋭角ファンビーム式DXA装置への更新前後比較 ―
伊勢原協同病院 整形外科

骨粗鬆症診療において、DXA法による骨密度(BMD)測定は、診断や治療効果判定に重要な役割を担っている1)。一方、メーカーや機種によって測定方式や画像解析アルゴリズムなどが異なるため、同一患者でも装置変更に伴いBMDやYAM%に差が生じる可能性がある。
当院では2025年4月に従来使用していたファンビーム式DXA装置から、鋭角ファンビーム式の新しいDXA装置へ更新した(図1)。本稿では、データコンバート後の旧装置YAM%と新装置で測定したYAM%を比較し、実際の骨粗鬆症治療方針への影響を検討した。
過去の測定結果との経時比較を支援するため、旧装置で測定されたBMD値を新装置相当値へ換算し、患者情報とともに移行するデータコンバートを行った。今回のコンバートには、米国UCSFの標準化研究に基づく換算式が用いられた2-3)。対象部位は腰椎(L1–4およびL2-L4)、大腿骨頸部および全大腿骨近位部(Total Hip)であり、旧装置で測定したBMD値を新装置相当のBMD値へ換算し、新装置の基準値を用いてYAM%を再計算した(図2)。
対象は、2025年4~6月に新装置で測定し、直前6か月以内に旧装置での測定歴があった411例である。平均年齢は77.1歳、男性33例、女性378例で、新旧装置の平均測定間隔は5.9か月であった。多くの患者が骨粗鬆症治療薬を使用しており、デノスマブ、ビスホスホネート、SERM、エルデカルシトール、ロモソズマブ、テリパラチドなどが含まれていた。
腰椎L1–L4と大腿骨頸部について、コンバート後の旧装置YAM%と新装置実測YAM%を対応のあるt検定で比較した。薬物療法の影響を考慮し、411例のうち新旧両測定時とも骨粗鬆症薬を使用していなかった51例も別に解析した。また、診療録から観察期間中の薬剤変更の有無と理由を確認した。
全411例を対象とした解析では、新装置のYAM%はコンバート後の旧装置値に比べ、腰椎L1–L4で平均2.4ポイント、大腿骨頸部で平均0.9ポイント高く、いずれも統計学的に有意であった。薬剤未使用51例では、腰椎L1–L4は平均2.1ポイント高値であったが、大腿骨頸部の平均差は−0.3ポイントで、有意差を認めなかった(表1)。
表1.コンバート後の旧装置値と新装置実測値の平均YAM%
| 部位 | 旧装置 コンバート後 (YAM%) |
新装置 実測値 (YAM%) |
差 (ポイント) |
p値 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 全症例 (n=411) |
腰椎 L1-L4 |
79.3 | 81.7 | + 2.4 | < 0.001 |
| 大腿骨 頸部 |
68.2 | 69.1 | + 0.9 | < 0.001 | |
| 薬剤 未使用例 (n=51) |
腰椎 L1-L4 |
86.0 | 88.1 | + 2.1 | 0.014 |
| 大腿骨 頸部 |
75.2 | 74.9 | −0.3 | 有意差なし | |
注:
n=各群の対象者数。
差=新装置実測値-コンバート後の旧装置値(YAM%のポイント差)。
観察期間中に骨粗鬆症薬が変更された患者は411例中33例(8.0%)であった。そのうち、YAM%の変化を直接の理由として薬剤を変更したのは2例(全411例の0.5%)にとどまった。装置更新に伴うYAM%の変化は一定程度見られるものの、当院において、薬剤変更の多くは、投与期間終了、有害事象、新規骨折、患者希望などによるものであり、骨密度の数値だけで治療方針が決定されていたわけではなかった。
本検討では、コンバート後の旧装置値に比べ、新装置のYAM%は腰椎L1–L4および大腿骨頸部で有意に高かった。一方、薬剤未使用例では大腿骨頸部に有意差を認めず、腰椎のみに有意な差がみられた。
差の要因としては、DXA装置間における測定方式や画像解析アルゴリズムの違いや、複数の診療放射線技師が検査を担当しているため、操作者間の誤差も考えられる。さらに腰椎は経時的な変形性変化や大動脈石灰化などの影響を受けやすい部位であることも一因として考えられる。
一方で、本検討の薬剤未使用例では有意差が見られなかった大腿骨頸部においても、ポジショニングやROI設定の違いによって測定値が変動する可能性はある。そのため、経時的な評価を行う際には、撮影条件や解析条件の再現性を十分に確保することが重要である。
本検討は同日測定による装置間比較ではなく、平均5.9か月の測定間隔がある。このため、装置・測定条件による差と、その間の骨密度変化を明確に分離することは難しい。薬剤未使用例の差についても、すべてを装置による差とみなすことはできない。
一方、YAM%の変化を直接の理由とした薬剤変更は少数であった。この結果は、DXA装置の更新による数値の変化が日常診療における治療方針へ与える直接的な影響はかなり少ないことを示唆している。
DXA装置更新後、コンバート後の旧装置値と新装置実測値との間には一定の差が認められたが、YAM%の変化を直接の理由とした薬剤変更は、本検討では411例中2例(0.5%)であり、実臨床への影響は限定的であった。
装置更新前後に骨密度やYAM%が変化しても、その数値だけで治療効果や治療方針を判断することは適切ではない。診断閾値をまたいだ症例があった場合には、YAM%のわずかな変化だけで治療の開始、中止、変更の判断をするのではなく、臨床現場では、骨密度やYAM%に加えて、既存骨折や新規骨折、年齢、薬物治療歴・継続状況、骨代謝マーカー、転倒リスクなどを合わせて総合的に評価する必要がある。
データコンバートは過去の測定結果を引き継ぐための方法の一つである。一方で、骨粗鬆症診療における治療判断は、骨密度やYAM%だけではなく、患者一人ひとりの臨床経過に基づいて治療方針を判断することが重要である。
1)日本骨代謝学会・日本骨粗鬆症学会合同原発性骨粗鬆症診断基準改訂検討委員会.原発性骨粗鬆症の診断基準(2012年度改訂版).Osteoporosis Japan. 2013;9-21.
2)Genant HK, et al. Universal standardization for dual x-ray absorptiometry: patient and phantom cross-calibration results. J Bone Miner Res. 1994;9:1503–1514.
3)Lu Y, et al. Standardization of bone mineral density at femoral neck, trochanter and Ward's triangle. Osteoporos Int. 2001;12:438–444.
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