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Lunar iDXA

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PRODIGY Fuga

※お客様のご使用経験に基づく記載です。仕様値として保証するものではありません。

販売名称 X線骨密度測定装置 Lunar iDXA 医療機器認証番号 21800BZX10007000号
X線骨密度測定装置PRODIGY  医療機器認証番号21500BZY00582000号
PRODIGY は、販売名称X線骨密度測定装置PRODIGYの類型「PRODIGY」のフルサイズテーブル
PRODIGY-Cは、販売名称X線骨密度測定装置PRODIGYの類型「PRODIGY」のコンパクトサイズテーブル
PRODIGY Fugaは、enCORESW V16.sp1以降のVersionを搭載する上記医療機器のニックネームです。
本装置は、クラスII医療機器、設置管理医療機器・特定保守管理医療機器に該当します。

スポーツ選手の栄養管理におけるDXA法の利用

女子栄養大学栄養生理学研究室
教授 上西 一弘 先生



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はじめに
DXA法は骨密度だけではなく、身体組成が測定できることから、スポーツ選手の栄養管理に用いることができる。継続的にDXA法で身体組成を測定することにより、体脂肪量(体脂肪率)、筋肉量などの増減をみることができ、トレーニング効果などを検討することができる。

今回は、スポーツ選手の栄養管理にとって最も重要であると考えられる、エネルギー必要量の検討のために、DXA法を用いる例を紹介したい。



エネルギー必要量の決定
スポーツ選手にとって摂取エネルギー量を決定することは、体重のコントロールを行う上でも非常に重要なことである。野球やラグビーなど、できるだけ体重を増やしたい種目もあれば、サッカーやバレーボール、バスケットボールなどのように適正な体重を維持する必要がある種目、体操や新体操などの審美系の種目では成長期でもできるだけ体重を増やさないようにする種目もある。柔道やボクシングなどの体重階級制の種目では減量が必要な場合も多い。このような時に、適切な必要エネルギー量の決定は重要であり、その決定方法について数多く検討されてきている。

たとえば、日本体育協会は、次のようにしてエネルギー必要量を推定している。すなわち、まず、体重と身体組成を測定し、除脂肪体重を求める。除脂肪体重(kg)に除脂肪体重1kgあたりの代謝率である28.5kcal/kg/日を乗じて基礎代謝量とし、その値にスポーツ種目系分類別の身体活動レベル(PAL:Physical activity level)を乗じれば、アスリートの推定エネルギー必要量を求めることができる、というものである。

この日本体育協会の例を見てもわかるように、基礎代謝量はエネルギー必要量を推定するために必須となる重要な項目である。個人ごとの基礎代謝量を実測することが望ましいが、基礎代謝の測定は、その条件設定などから難しく、その代替指標として安静時代謝量の測定が行われることが多い(一定の正しい条件で測定できれば安静時代謝量はほぼ基礎代謝量に等しいと考えることもできる。あるいは基礎代謝量の1.1倍、あるいは1.2倍を安静時代謝量と考えることもある)。それでも測定機器の問題もあり日常的に安静時代謝量を測定することは困難である。基礎代謝量や安静時代謝量が実測できない場合には、日本体育協会の例のように、体重などをもとに推定することが行われている。日本人の食事摂取基準の性別年齢階級別の基礎代謝基準値から、体重を用いて算出することもできる(表1)。基礎代謝基準値を用いる以外に表2のようにいくつかの推定式も発表されている。

最近では基礎代謝量や安静時代謝量は体重ではなく、除脂肪量や骨格筋量を用いるほうが正確に推定できるとの報告もある1)


表1 基礎代謝基準値
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厚生労働省 日本人の食事摂取基準2015より引用



表2 基礎代謝推定式の例
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厚生労働省 日本人の食事摂取基準2015より引用



安静時代謝量とDXA測定値
今回、私たちはアスリートにおける基礎代謝量の推定値の有用性を、安静時代謝量の実測値と比較することで検討した。
日常的に運動を行っている大学生男子ボート選手21名を対象に、DXA装置(Prodigy型、GEヘルスケア社製)で除脂肪量を測定し(図1)、その値から基礎代謝量を推定し、安静時代謝量の実測値と比較を行った(表3)。その結果、体重のみを用いて算出した値は実測値よりも低値であり、DXA法の除脂肪量を用いて算出した値が実測値に近い値となった。このことは、日常的に運動を行っているアスリートでは、体重ではなく、除脂肪量すなわち筋肉量が基礎代謝に大きく影響していることを示している。なお、日本体育協会の算出式を用いた場合も、実測値よりも低値となった。これは、除脂肪体重1kgあたりの代謝率である28.5kcal/kg/日という数値が、種目によって異なる可能性があることを示している。


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図1 DXA装置
(GEヘルスケア社製Prodigy型)



表3 身体計測値と基礎代謝量の推定値、安静時代謝量の実測値
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a):日本人の食事摂取基準2015年に記載の式により算出(表1参照)
b):日本体育協会の計算方法により算出(本文参照)
c):Cunningham(1980)らの式により算出(安静時代謝量=500+(22×除脂肪量(kg)))



なお、今回測定を行った大学生男子ボート選手の日常の食事のエネルギー摂取目標量は5000kcal/日と設定されており、実測した安静時代謝量から身体活動レベル(PAL)を推定すると約2.7となる。日本体育協会の持久系、通常練習期のPALは2.50と設定されているが、それよりも少し高値となっている。



DXA法の有用性
DXA法により、除脂肪量を正確に測定し、その値を用いることにより、基礎代謝量、安静時代謝量を推定することは、スポーツ選手の栄養管理、特にエネルギー必要量を推定するためには非常に有用な方法といえる。
2020年の東京オリンピックに向けて、スポーツ選手の栄養管理はますます重要となっていくが、その際にDXA法は身体組成の検討だけではなく、もっとも基本となるエネルギー必要量の推定のためにも、今後ますます活用されていくものと思われる。



参考文献:
1) 12) 高橋恵理,薄井澄誉子,田畑泉,樋口満: 若年女性の基礎代謝量は除脂肪体重から簡便に高い精度で推定できる-スポーツ選手と運動習慣の無い女性を対象とした研究-. トレーニング科学, 20, 25-31(2008)