DXA法(二重X線エネルギー吸収法)は骨粗鬆症の領域で骨塩量、骨密度の測定のために使用されることが多い。本法では骨塩量とともに、軟組織量の測定も可能であり、除脂肪量(筋肉量)の推定も可能である。
近年、高齢者を対象にサルコペニアが注目されている。サルコペニアは、「加齢に伴う筋力の減少、または老化に伴う筋肉量の減少」と定義されている 1)。サルコペニアの診断は、(1)筋肉量減少、(2)筋力低下(握力など)、(3)身体機能の低下(歩行速度など)の3項目を用い、項目(1)に加え、項目(2)または(3)を併せ持つ場合とされている 2)。その診断のアルゴリズムを図1に示した。ここでの筋量の測定法としてはDXA法が最も正確に測定できる方法である。アルゴリズムの中のSMIはskeletal muscle mass index の略で、骨格筋指数とも呼ばれる。上肢と下肢の筋肉量の合計を身長の二乗で割ることで求めることができる。
SMI=四肢合計骨格筋量(kg)/身長(m)2
SMIの判定については、本邦では下記のような値が示されている。
DXA法によるカットオフ値(Sanada et al 2010 3))
男性:6.87kg/m2、女性:5.46kg/m2
BIA法によるカットオフ値(Tanimoto et al 20124))
男性:7.0kg/m2、女性:5.8kg/m2
また、2014年に、日本を含めたアジアレベルでの判定基準が示された 5)。
そのSMIの判定基準は、下記であり、その診断アルゴリズムは、図1である。
DXA法によるカットオフ値
男性:7.0kg/m2、女性:5.4kg/m2
BIA法によるカットオフ値
男性:7.0kg/m2、女性:5.7kg/m2
図1 サルコペニア診断のアルゴリズム(アジア)
サルコペニアの対象は基本的には高齢者となるが、私たちは若年成人女性を対象にSMIを測定、検討している。今回はその測定結果から見出された課題を紹介したい。
今回紹介する対象者は栄養学を学ぶ女子大学生2名である。どちらも年齢は19歳、身長はAさんは162.0㎝、Bさんは161.0㎝でほぼ等しく、体重はどちらも55.0kgである。BMIはAさんは21.0 kg/m2、Bさんは21.2 kg/m2と標準的な体格である。この2名の身体組成をDXA法(Prodigy)で測定したところ、表1のような結果が得られた。

以上の結果から、それぞれのSMIを計算すると、Aさんは6.4kg/m2、Bさんは5.7kg/m2となり、Bさんはサルコペニアに近い値であることがわかる。
また、骨密度をみると、どの部位もAさんよりも低値であり、おそらく最大骨量獲得年齢であることを考えると、将来骨粗鬆症になるリスクは高いと予想される。
すなわちBさんの身体的特徴は、体脂肪率が高く(すなわち体脂肪が多く)、その分筋肉量、特に四肢の骨格筋量が少なく、サルコペニアに近い値を示し、同時に骨密度も低い値であるということである。そして重要なことは、この様な結果は身長と体重のみから算出されるBMIでは判定できないということである。
近年、若年女性のダイエット志向、それにともなう低体重者の増加が問題となっているが、身体組成を測定することで、その問題はより深刻なものとなる可能性があることがわかる。
このような例をできるだけ早期に見つけ、対策を講じることが重要である。最大骨量は20歳、あるいはそれ以前に獲得されることが判明している 6)。骨格筋量は20歳以降でも運動により増加させることができるが、骨量の獲得は難しい。DXA法により、骨量と骨格筋量を同時に測定し、骨量と骨格筋量を同時に増やすようなライフスタイル、その指導を行うことが重要であり、その測定は20歳以前に行うことが望ましいといえる。
今後は、体重だけではなく、筋肉量もより正確に測定できる方法を用いての健康管理がより重要となる。インピーダンス法でも四肢の骨格筋量が測定できる機種が登場しているが、測定条件(体内の水分分布等)の影響を受けることが多い点に注意する必要がある。DXA法は、筋肉量だけではなく、骨塩量、骨密度も測定できることから、若年女性の生涯にわたる健康管理を考えた場合の、非常に有用な測定結果を示してくれる。今後、より身近に測定できるような体制ができることが望ましい。
【引用文献】
1) Rosenberg IH. Summary comments. Am J Clin Nutr 1989; 50: 1231-3
2) Cruz-Jentoft AJ, Baeyens JP, Bauer JM, et al. European Working Group on Sarcopenia in Older People. Sarcopenia: European consensus on definition and diagnosis: Report of the European Working Group on Sarcopenia in Older People. Age Aging 2010; 39: 412-23
3) Sanada K, Miyachi M, Tanimoto M, et al. A cross-sectional study of sarcopenia in Japanese men and women: reference values and association with cardiovascular risk factors. Eur J Appl Physiol. 2010;110:57-65.
4) Tanimoto Y, Watanabe M, Sun W, et al. Association between muscle mass and disability in performing instrumental activities of daily living (IADL) in community-dwelling elderly in Japan. Gerontol Geriatr. 2012; 54: e230-3.
5) Sarcopenia in Asia: Consensus Report of the Asian Working Group for Sarcopenia JAMDA 15 (2014) 95-101
6) 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会編:若年者における予防 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン44-45、2015 ライフサイエンス出版