信州、松本駅から南へ5キロほど、住宅街からはやや離れた閑静な中に「かみむらクリニック」はあります。 2005年3月に開業したクリニック。開業当初からGE製全身用骨密度測定装置「PRODIGY」を導入され、骨粗鬆症診療に 力をいれられて来ました。院長・上村幹男先生に伺ったお話をご紹介します。
DXA装置を導入しても経営面でも問題はないと判断いたしました。
平成17年に松本市内で開業しました。
整形外科クリニックとして一般的な整形疾患を扱っていますが、 特に骨粗鬆症や脊椎脊髄疾患を専門として診療を行っています。これは、骨粗鬆症の診療と臨床研究をするためです。
骨粗鬆症を専門的に行うにはDXAは必要不可欠でした。また、経営面でも当該地区で骨粗鬆症に本格的に取り組んでいる医療機関はなかったので DXAを導入しても問題はないと判断いたしました。
現在、骨密度検査は一日平均7~8件くらいです。
GEのOneScanは、腰椎と両大腿骨近位部の3ヶ所を患者さんを動かすことなく、 数分間で測定が可能です。
勤務医時代は、腰椎で骨粗鬆症を診断していました。しかし次のテーマとしてHipが重要になるのではないかと考えて片側のHipの測定を開始し、その重要性を確信しました。そして独立開業を考えていた頃に出会ったのが、GEのPRODIGYです。 PRODIGYの特徴はナローアングルファンビームとOneScan機能です。
腰椎と両大腿骨近位部の3カ所を患者さんを動かすことなく、数分間で測定が可能というOneScan機能があったからこそ、GEを選択しました。
もうひとつの特長であるナローアングルファンビームは、横方向1回で、従来のペンシルビームの16スキャンライン分を走査できます。さらにスマートスキャンにより、骨辺縁・骨形状を自動認識し、無駄な部分へのX線照射を押さえるので、 被ばく量の低減が期待できます。
腰椎と大腿骨両側の測定は、国際学会やガイドラインでも推奨されています。
当時はHipに注目していましたが、次に重要になるのは左右の骨密度の測定であると 考えていました(実際に左右差は決して少なくありません)。
PRODIGY以外の他社製品機種では、たとえ最新の装置であっても、腰椎、大腿骨、しかも大腿骨両側の測定まで行うとなると大変な手間と時間がかかり、大きな病院ですら対応が難しいと思います。
またその後、私が自身のクリニックにPRODIGYを導入した頃に、国際学会から腰椎とHipの両側を測定すべきであると 報告がありました。更に「骨粗鬆症予防と治療ガイドライン(2006年版)」が公表され、 腰椎と大腿骨の両方を測定することが推奨されました。
”骨密度測定は腰椎とHipの測定が必要であり、Hipは両側の測定が望ましい。腰椎と両側Hipの3カ所を測定することが重要であることがはっきりしました“
2つの論文を以下に引用しておきますので、詳しくはこちらをお読みください。
Ikegami S, Kamimura M, Uchiyama S, Mukaiyama K, Kato H. Unilateral versus bilateral hip bone mineral density measurement for the diagnosis of osteoporosis. J Clin Densitom Vol.17, 84-90,2014
Ikegami S, Kamimura M, Uchiyama S, et al. Bone Mineral Density Measurement at Both Spine and Hip for Diagnosing Osteoporosis in Japanese Patients. J Clin Densitom Vol.12. 337-44, 2009
放射線技師なしで、私が「腰椎と両大腿骨の3部位」をルーチン測定していますが、OneScanのおかげで、日々の診察に支障はありません。
私のクリニックには放射線技師がいませんので、測定は私が行っています。
検査は先ほどお話した通り、腰椎と両大腿骨の3部位がルーチンです。 この3ヶ所の測定でも必要な時間は、概ね5分以内、実際には数分といったところでしょうか。そのため私自身が測定を行っても、日々の診察には、ほとんど支障はありません。まさにOneScanのおかげと言えます。
大腿骨頚部骨折のリスクを予見するには、直接大腿骨頚部を測定することが 最も重要です。
そもそもなぜ骨密度測定を行うのかということなのですが、 短期的には骨折予防を行い、長期的には死亡リスクを上げないことが目的です。しばしば測定される前腕の骨折では死亡リスクは上昇しませんが、大腿骨頚部骨折や脊椎骨折は寝たきりの原因となり、 相対的な死亡リスクが非常に高くなることが報告されています。 それを回避するためには大腿骨頚部骨折のリスクを予見することが必要であり、そのためには直接大腿骨頚部を測定することが最も重要であると考えています 。
当院の患者さんにも見られますが、腰椎のBMD値が正常範囲でも 大腿骨頚部のBMD値が低いというケースは意外と多いものです。
改訂後のガイドラインにも大腿骨の測定は強く推奨されています。 当院での実績からも前任の病院でのデータでも腰椎のみの測定では 骨粗鬆症を見逃す症例が多いことは明らかです。
現在、ガイドラインで両方測定して診断することが推奨されている以上、 Hipの測定をしないことは考えられません。 また、腰椎の変性を見てHipを測定する患者さんを選択することは我々の データからも不可能です。
多くの骨脆弱性骨折は骨量低下の領域で発生しています。 Hipを測定してより多くの患者さんに治療を行うことは患者さんに大きなメリットがあります。
GEからも、もっと大腿骨測定の必要性を 強く訴えて欲しい!
GEヘルスケア・ジャパンに望むことは、 次の2つです。
1.大腿骨BMD測定の重要性の啓発
強いて言うならば、GEから大腿骨測定の必要性を もっと強く訴えて欲しいと思っています。 骨粗鬆症治療は寝たきり防止や死亡率の低下に繋がるのだということを 医療関係者だけでなく一般にももっと喧伝して下さい。
2.情報提供など
骨密度測定は決してメジャーな分野ではないので、 メーカーによる最新情報の提供や新しいアプリケーションの開発は非常に 重要なことになると思います。
上村先生、貴重なお話ありがとうございました。