骨密度測定法のなかでもDXA法は最も精度の高い測定法である。現在に至るまでBMD値の体厚依存性については検討されてきた。当院では、2014年10月よりGE社製X線骨密度測定装置PRODIGY Advance-Cを導入しております。 この装置は身長と体重、性別、および測定対象部位から、自動的に適切な測定モードを3種類の体厚から選択されます。
そこで我々は、それらの測定モード(高体厚 モード、標準モード、低体厚 モード)による測定値への影響を検討したので報告します。各測定モードの条件は下表(表1.)である。
高体厚モードは、標準モードの2倍の走査時間になり、低体厚モードでは標準モードのmAが4分の1に変更される。 装置の撮影モードの理想体厚は標準モードが13cm~25cm、25cmより厚い場合は高体厚モード、13cm未満の場合は低体厚モードと設定されます。
表1.測定モード条件表
今回、選択されるモードにおいて、対象体厚の違いによるBMD値の差異の検討を行った。
方法
Prodigy Advance Cを使用して図1.のように、腰椎を模試したアルミニウム製ファントムとポリ容器に軟部組織代替として、水を注入し、その水の水深を5㎝から30㎝まで1㎝ごとに変化させ、各測定モード(高体厚 モード、標準モード、低体厚 モード)で測定し、BMD値の検討を各領域(L1、L2, L3、L4)にて行った。
図1.
測定結果
各測定モードと水深(体厚 )との結果を表2.、図2.に示します。また、アルミステップの値が得られなくなる深さまで測定しています。その結果、高体厚モード、標準モードでは30cm~11cmまで、低体厚モードでは22cmから5cmまでのデータを得ました。
高体厚モードのL1相当部分と、低体厚モードのL4相当部分でやや値にばらつきが大きくなる傾向が確認されましたが、比較的全体で均一なデータが得られました。
表2.
図2.
まず、各撮影モードの推奨体厚での平均値と変動係数を検討しました。
変動係数は高体厚モードでは1%、標準モードでは1.7%以下、低体厚モードでは1.4%以下でした。標準モードを基準とし平均値を比較すると高体厚モードでは、1.9%(L1)、0.1%(L2)、0.1%(L3)、0.1%(L4)となり、低体厚モードでは、1.3%(L1)、0.1%(L2)、1.8%(L3)、2,6%(L4)と、やや低体厚モードのL4相当部分でのずれが生じた。(表3.)
表3.
次に実際の臨床上、体厚の薄い部分は適応外であるため体厚想定を10cm以上とし、低体厚モードを12cm~10cmとし検討を行いました。すると、低体厚モードで変動係数は0.8%以下となりました。また、低体厚モードの平均値を比較すると、0.6%(L1)、0.2%(L2)、0.7%(L3)、1.6%(L4)と差は減少しました。(表4.)
表4.
低体厚モードを使用し、当院での臨床上、現実的な体厚想定で、アルミステップの判別がつくコントラストのある範囲内での平均値と変動係数を求めてみると表のような結果(変動係数は0.6%(L1)、1.4%(L2)、1.0%(L3)、1.1%(L4))を得ました。(表5.)
表5.
低体厚モードの18cm~10cmと標準モードの推奨体厚である25cm~13cmとの平均値の比較を行うと、結果は0.1%(L1)、1.4%(L2)、0.1%(L3)、0.2%(L4)となりました。(表6.)
表6.
結果まとめ
3種類の測定モードのアプリステップのL1からL4相当のBMD値は、それぞれの推奨体厚 の範囲内で有意差は認められなかった。また、測定モードの推奨体厚 よりも超えた範囲でも、ある一定範囲内では使用可能なBMD値がえられた。
以上の検討より、自動選択される撮影モードを使用している場合、特別なことをする必要もなく正確なBMD値を得られることが示唆された。
考察
今回の検討の結果より、当院の臨床経験上、想定される体厚を考慮すると、自動選択される撮影モードと異なる撮影モードを使用してもBMD値に変化が生じる可能性は少なく、追跡調査中の場合でも、被検者自身の変化等により異なった測定モードを使用しても同等の結果が得られると考えられる。また、低体厚モードの使用により、さらなる被曝低減の可能性が示唆された。
この研究は、2015年10月開催の第43回日本放射線技術学会 秋季学術大会にて報告を行った。