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Lunar iDXA

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PRODIGY Fuga

※お客様のご使用経験に基づく記載です。仕様値として保証するものではありません。

Lunar iDXA  販売名称:X線骨密度測定装置Lunar iDXA
医療機器認証番号:21800BZX10007000

PRODIGY Fuga  販売名称:X線骨密度測定装置 PRODIGY
医療機器認証番号:21500BZY00582000
PRODIGY FugaはenCORE SW V16.sp1以降のVersionを搭載する
上記医療機器のニックネームです

サルコペニア診断における骨格筋量測定

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
病院長 原田 敦 先生



GE社製X線骨密度測定装置Lunar iDXA型(ナローアングル:鋭角的ファンビーム)を長年ご使用いただいている国立長寿医療研究センター 病院長 原田 敦 先生に「サルコペニア診断における骨格筋量の測定」、そして「DXA装置を大別する際に用いられる仕様、X線ビームの方式(ペンシルビームとファンビーム)が骨格筋量の測定値にどのような差を生じさせるか」についてご執筆頂きました。


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(1) はじめに
最新の国民生活基礎調査1)によれば、H28年度の75歳以上の介護が必要となった主な原因のうち、高齢による衰弱は15.5%で2位を占める。高齢による衰弱には多様な病態が含まれるものの主役は筋肉で、そのような病態はサルコペニアと呼ばれるようになった。2016年にサルコペニアは、国際疾病分類第10版(IDC-10)M62.84 に疾患としてリストされ、国際的にも注目される疾患となった。



(2) サルコペニアの診断と骨格筋量指数の測定
サルコペニアは、進行性および全身性の骨格筋量および筋力の低下を特徴とする症候群と定義されている2)。すなわち、骨格筋量の低下と筋肉機能の低下の両方が揃うとサルコペニアと診断されることになった。

これまでに国際的に合意されてきた欧州2)、米国3)、アジア4)(図1)などの主要な診断基準が制定されている。図1.はアジアにおける診断基準の診断アルゴリズムである。
高齢者(65歳以上)を対象に握力、歩高速度を計測し、そのどちらかでも低地の場合に骨格筋量の計測を行う。骨格筋量の評価法として、CTやMRIも高く評価されてはいるものの、簡便で低被ばくであるDXA(Dual Energy X-ray Absorptiometry)法が推奨されている。DXA法においては、全身計測を行い、得られる全身の体組成結果より、四肢の非脂肪量(除脂肪量)の総量を身長の二乗で除し、骨格筋量指数を求める。その骨格筋量指数の若年成人の平均値より-2SD(標準偏差値)未満がカットオフ値として示されている。日本を含めたアジアのカットオフ値が、男性で7.0kg/m2未満、女性で5.4kg/m2未満となっている。ただし、その体格補正は身長の2乗だけでなく、BMIを用いることもあり、方法は統一されていない。さらに、欧州とアジアの診断基準においては、生体インピーダンス法の使用も認められている。


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図1. サルコペニアのアジア診断基準(文献3から改変)



それでは、DXAならどの機種でも測定される骨格筋量は同じような値になるのであろうか。
DXAには大きく2種類の計測方法があり、ペンシルビーム型(DPX-NT、GEヘルスケア)とファンビーム型(QDR-4500C、Hologic)の間には、骨密度測定値に差があることはよく知られている。骨格筋量については、このような差が出るかは不明のままである。そこで、我々は、30名(男女同数、平均35歳)で両機種で連続して測定、その比較を行った。その結果、確かにBMDは腰椎、大腿骨近位部ともに機種差が明らかであったが、骨格筋量に関しては有意差がなかった(図2)5)


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図2. ペンシルビーム型とファンビーム型の比較(文献5から改変)



(3) 最後に
以上に述べてきたような知見の集積と高齢者増加におけるニーズなどを背景に、筋肉の衰えがますます注目を集めている。サルコペニアは国際疾病分類に認定されたのも、そのような状況が考慮されたものと考えられる。サルコペニアの診断の基盤は骨格筋量であり、その測定にDXAが果たす役割は大きくなるばかりと考えられる。


参考文献:

1) 厚生労働省ホームページ厚生労働省国民生活基礎調査 平成28年国民生活基礎調査 介護が必要となった主な原因(第16表~第18表)http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001184844
2) Cruz-Jentoft AJ, Baeyens JP, Bauer JM, et al. Sarcopenia: European consensus on definition and diagnosis: Report of the European Working Group on Sarcopenia in Older People. Age Ageing 2010; 39: 412-423.
3) Fielding RA, Vellas B, Evans WJ, et al. Sarcopenia: an undiagnosed condition in older adults—Current consensus definition: prevalence, etiology, and consequences. international working group on Sarcopenia. J Am Med Dir Assoc. 2011;12:249–256.
4) Chen LK, Liu LK, Woo J, et al. Sarcopenia in Asia: consensus report of the Asian Working Group for Sarcopenia. J Am Med Dir Assoc. 2014;15:95-101.
5) Ito K, Tsushita K, Muramoto A, Harada A, et al. Cross-calibration of pencil-beam (DPX-NT) and fan-beam (QDR-4500C) dual-energy X-ray absorptiometry for sarcopenia. 2015; Nagoya J. Med. Sci. 77:647-652.
図 サルコペニアのアジア診断基準(文献3から改変)