GE社製エックス線骨密度測定装置において、AHA(Advanced Hip Assessment)ソフトウェアが利用可能となっております。このソフトウェアは、通常の大腿骨骨密度計測に加え、同時に大腿骨の構造を解析して、強度に関連する指標を算出するものです。大腿骨自体の構造は、加齢とともに変化していくとされており、その変化に伴い、その強度自体も減少していくとされています。(図1)このような構造的指標を計測して、大腿骨の強度的な指標を提供するツールがAHAです。このAHAの基本的概念は、米国、インディアナ大学での検討をもとに開発されました1)。
1.AHAの指標
このAHAの指標は、大腿骨部におけるDXA計測で得られたイメージより長さ、角度およびX線吸収の度合いより、様々な指標を計測いたします。 このように実際の大腿骨部の長さや角度を計測するため、拡大誤差やオフ・センターの影響が非常に少なく設計されたGEのDXA装置は非常に有用です。 図2がその結果画面で図3がそれらの計測部の詳細となります。これらの結果は、大腿骨骨密度計算がなされる過程で、自動計算されます。
主な指標の詳細は下記の通りです。
頸部長:骨頭中心点を通り、座骨辺縁から大転子部辺縁までの長さで、HALが長くなるにつれ、骨粗鬆症患者において、骨折を起こす可能性が高くなるとの報告があります2)。
CSMI(Cross Sectional Moment of Inertia):断面2次モーメントと呼ばれる指標で、建築分野などでも用いられる設計上の指標として用いられ、物理的に部材の変形のしにくさを表した指標です。数値が大きいほど変形しにくい状態を表します。
CSA(Cross sectional Area) :CSMI計測ポイントにおける、骨部の断面積。DXAのX線吸収プロファイルより求められ、骨髄腔を除いた断面の骨面積。
バックリングレシオ:座屈比とも呼ばれ、圧縮する力に対して、変形または破壊に至る現象の指標で、この数値が小さいほど、物理的に変形または破壊しにくい。
バックリングレシオ = (CSMI ÷ セクション・モジュール) ÷ 頸部皮質骨幅
セクション・モジュール:断面係数とも呼ばれ、曲げ強度を表す指標で、この数値が大きいほど物理的な曲げ強度が強いことを表します。
セクション・モジュール = CSMI ÷ y(重心点から頸部上縁までの距離)
強度指標:対象被検者における転倒時の大腿骨に受ける衝撃と大腿骨自体の強さを、被検者の年齢、身長、体重およびAHA指標で計測された各値より推定される指標で、転倒時における衝撃(外力)に対する大腿骨の強さの指標です。この値が小さくなると、骨折する割合が高くなると報告されています3)4)。
このように、骨密度の情報だけではなく、形状などの情報をもとに、構造的な強さの情報を提供するアプリケーションがAHAです。
1) Yoshikawa T, Turner CH, Peacock M, Slemenda CW, Weaver CM, Teegarden D, Markwardt P, Burr DB, et al: Geometric Structure of the Femoral Neck measured using Dual-energy X-ray Absorptiometry. J Bone Miner Res, 9(7):1053-1064.1994
2) Faulkner KG, Cummings SR, Black D, Palermo L, Gluer C-C, Genant HK, et al: Simple measurement of femoral geometry predicts hip fracture: The Study of Osteoporotic Fractures. J Bone Miner Res 8:1211-1217, 1993
3)Faulkner KG, Wacker WK, Barden HS, et al: Femur strength index predicts hip fracture independent of bone density and hip axis length. Osteoporos Int 17:593-599,2006
4) Leslie WD, Pahlavan PS, Tsang JF, et al: Prediction of hip and other osteoporotic fractures from hip geometry in a large clinical cohort. Osteoporos Int 20:1767-1774,2009