この方式における体組成計測方法は、以前より臨床の場で活用されており、DXA法(Dual-Energy X-Ray Absorptiometry)の前進である放射性同位元素を線源としたDPA法(Dual Photon Absorptiometry)のころから使用されております。 年代的に1983年ごろより、このDPA法を活用して体組成計測が可能な装置(DP-4型)が米国Lunar radiation Corp.より発売されました。 そして、その方式がDPA法からDXA法に置き換わり、測定時間や測定精度が飛躍的に向上されました。 海外では多くの体組成計測に関する臨床報告があり、骨密度計測以外でのDXA装置の活用が報告されております。 Lunar radiation Corp.から弊社GE社に移行されてもこの方式は現在の装置に受け継がれ、より進歩した形でご提供しております。
さて、このDXA法における体組成計測の原理ですが、簡単に以下にご説明します。
1.全身を計測後、人体の全てのピクセル(画素)ごとに骨、軟部組織に仕分けします。 そして、全ての軟部組織のピクセルを対象に、X線の吸収量よりピクセルごとの質量(軟部組織量. g)を算出します(図1)。 また、これらのすべての軟部組織のピクセルにおいて、高・低エネルギーの吸収よりR-Valueの計算を下記の式により行います。 このR-Valueは、脂肪%と相関があり、1.2~1.4のR-Value値が得られます。 このR-Value値と脂肪%が相関することが知られており、実際の各物質を使った実験でも、Lard(ラード:約100%脂肪)、Delrin(ポリスチレン樹脂:約脂肪40%)、21%のアルコール(約脂肪21%)、および水(約0%)とR-Valueの関係は相関し、R-Valueが1.2付近だとほぼ100%脂肪となることが報告されています(図1-1)。 また、被写体の厚みに対しても、R-Valueの値は、ほぼ一定なことが確認されております(図1-2)。
そして、全ての軟部組織のピクセルの質量と脂肪%値より脂肪量(g)と非脂肪量(g)を求めます。 ここで、骨と重なり合うピクセルにおいては、その隣接する軟部組織のピクセルと同様に、脂肪量、非脂肪量が存在すると仮定して各質量を求めます。 同様に骨量(BMC.g)も求めます(図1-3)。 各ピクセルで求められた脂肪量、非脂肪量、および骨量を合計し、全身、および各部位の脂肪量、非脂肪量、および骨量を導きます。

以上がDXA法における体組成計測の簡略的な計測原理となりますが、本方式における体組成計測においては、いかに詳細に全身を骨ピクセルと軟部組織ピクセルに仕分けすることができるか、その測定精度に関わってまいります。 全身を対象とするため、手部や肋骨などより小さい骨が存在している領域があるためです。以下が、DXA法で得られる体組成計測値となります(表1)。 赤で示した脂肪量、非脂肪量、および骨量は実測によるもので、その他の計測値は計算より求められたものとなります。 ここで留意していただきたいのは、非脂肪量・除脂肪量(g)ですが、その数値には筋肉量だけではなく、臓器、血液や水分なども含まれる量となります。 X線の吸収を利用して体組成計測を行っているDXA法においては、それらの吸収係数が非常に類似しているため、それらを振り分けて計算することができないためです(図2)。
DXA法の体組成計測は、主にダイエット時の経過観察として活用され、脂肪量、非脂肪量の変化が明確に確認できます(図3)。 また、近年ではスポーツ医学分野でも活用もされております。
また、DXA法で計測された体組成結果の四肢の非脂肪量の合計(kg)を身長(m)の二乗したもので除したものを骨格筋量指数(SMI: Skeletal Muscle mass Index)として自動算出することもできます(図4)。日本サルコペニア・フレイル学会による2017年版のサルコペニア診療ガイドラインでは、骨格筋量指数のサルコペニアにおけるカット・オフ値が示されており、男性で7.0 kg/㎡未満、 女性で5.4 kg/㎡未満と明記されています。
以上がDXA法における体組成計測の概要ですが、この方式による体組成計測は、全身、および各部位で各数値のモニタリングが可能なことが有用と考えます。 今後、骨密度計測以外でのDXA法の活用が期待されます。