GEのDXA装置は「K-エッジフィルター」を使用して、中域レンジのX線を吸収させ、高エネルギーと低エネルギーX線だけを患者へ照射します(図1)。
図1: Kエッジフィルターを使用したDXA X線システム
* 使用に関する詳細は、該当製品のユーザーマニュアルを参照してください。
まず固定X線陽極管を用いたX線発生装置から安定性の高いX線(オレンジ全域)を発生させます。次にK-エッジフィルターでX線ビーム低エネルギー領域と高エネルギー領域のビーム(黄色・緑)を発生させて患者に照射します。患者は高エネルギーX線(緑)よりも多くの低エネルギーX線(黄色)を吸収します。エネルギー感知式検出器は照射されたX線を吸収し、図2で示すように各X線光子を低エネルギーと高エネルギーで別々にカウントします。
* 図2:GE骨密度装置の光子計測法。様々なエネルギーを持つX線を光子計測検出器で受信しています。増幅器によってX線エネルギーに比例した電圧パルスを作り出し、コンパレータがこれらを低エネルギーと高エネルギーの光子に分類します
図2
このGEの「光子計測法」は低エネルギーと高エネルギーX線を同時に受信し、そして個別に分けてカウントするので、とても線量効率の高いDXA技術です。さらに中エネルギー領域のX線をブロックするので、Kエッジフィルターは患者の被ばくを低下させながら、骨と軟部組織を効率的に区別します。PRODIGYのX線発生装置は76kVで動作し、ビームの低エネルギー領域と高エネルギー領域の有効エネルギーはそれぞれ~35keVと~61keVです。Lunar iDXAのX線発生装置は100kVなので、Kエッジフィルターによって~39keVと~71keVのX線有効エネルギーを発生させます。これらのエネルギーは骨と軟部組織を区別するために適したレベルです。図3ではPRODIGYにおけるX線入射エネルギーの骨と軟部組織の減衰の違いをあらわしています。矢印は低エネルギーと高エネルギーX線で骨と軟部組織の減衰が異なることを示しています。
図3:骨と軟部組織の線減衰係数(左軸)とPRODIGY X線ビーム強度(右軸)とX線エネルギー
図4は骨密度の計算方法を簡単に図解しています。低エネルギーと高エネルギーX線では骨を含む組織の部位内での減衰が異なります。物質内のX線の減衰は主にその厚さと密度によって決まります。骨を含まない部位の軟部組織の減衰がベースラインとなります。このベースラインから軟部組織と骨の減衰の合計値を引いて骨密度を計算します。
図4:組織そして骨を通過する低エネルギーと高エネルギーX線の減衰の違いによって骨密度の測定が可能になります。
対して、X線発生のもう1つの方式「スイッチングパルス方式」ではX線発生装置を使って低電圧と高電圧間で急速に切り替えを行います。骨密度装置には100kVと140kVなど、2つの電圧の切り替えを行い、電源周波数50-60Hzに同期化された発生装置を使用する他の方法もありますが、データ取得中はX線エネルギーが不安定であるため、空気、軟部組織、そして骨の相当物で構成される複雑な「回転ドラム」を使って各ピクセルの測定値を補正する必要があります。各ピクセルで6回(3つのチャンバーに2回のエネルギー照射)の連続する測定を行う必要があるため、患者の被ばくが大きくなる傾向があります。
いかがでしたでしょうか?
GEのDXA装置に搭載されているKエッジフィルターは、高い線量効率を実現し、低被ばくな検査をサポートする技術であることをご紹介させていただきました。