今回はDXA法における骨密度解析において、骨量(BMC g)を算出する際の軟部組織領域の重要性に関してお伝えいたします。 ご存知の通り、DXA法は、高・低二つのX線を照射して、その二つのX線吸収の違いより、軟部組織の影響を除去して骨を評価する方法です。 平面的に得られた骨部のX線吸収の度合いより骨量を求めますが、その際重要となるのが軟部組織領域となります。 軟部組織領域のX線吸収を読み取り、その吸収(ベースライン)より吸収が大きい部分を骨量として算出するための補正に使用します(図1.)。 この図で注目して頂きたいことは、X線の入射方向における骨の前後にある軟部組織、もしくは計測する骨から離れた軟部組織領域は、この補正に使用できません。 高・低二つのX線を照射しても骨部に重なる部分は、DXA法のように2次元計測の場合、軟部組織の吸収が算定できないためです。 また、骨部から離れた部分の軟部組織は、実際、骨が存在する部分と体厚が異なる可能性があり、その部分まで軟部組織としてベースラインを設定すると、全体の軟部組織の吸収が下がり(ベースラインが下がり)、計算されてくる骨量が実際より、高値に計算される可能性があります。この軟部組織領域のX線吸収量をもとに、実際の計測部分の脂肪率を加味して体厚を計算し、骨量を算定していきます。 当社のDXA装置においては、実際計測された体厚や軟部組織%脂肪値は、結果画面の情報のタブで確認ができます。

このように計算に使用する軟部組織領域ですが、計測する部位により使用できる軟部組織領域が異なります。例えば腰椎の場合、椎体のすぐ脇の部分を軟部組織として認識させると、横突起の影響を受けやすくベースラインの吸収レベルが上がってしまい、計算されてくる骨量が実際より少なく計算されてくる可能性があります。 そのため、当社のDXA装置においては椎体より少し離れた場所で軟部組織領域を設定するように工夫されております。 また、大腿骨においては、大転子外側など体厚が変化しやすい部位で、計測範囲内に入った軟部組織をすべて使用すると、腰椎と同様に少なく計算される可能性があります。それで当社の装置では、頸部上下にある軟部組織のX線吸収量を基準に計測領域全体の軟部組織を読み取り、ベースラインとしてふさわしくない軟部組織領域をニュートラルとして認識させ、計算領域から除外しています(図2)。 また、骨や局所的な石灰化の部分などにおいても、軟部組織のX線吸収量と同等であれば、軟部組織として認識します。吸収が同等なので、計算されてくる骨量に影響は与えないという観点からです。 このように、計測部位においては、形状や特性が異なり、補正に使用する軟部組織領域や、除きたい軟部組織領域が存在します。 そのような場合にこのニュートラル領域が重要となります。
以上の通り、全てのDXA法において、BMD値を算定する過程において、骨量を算出する際に軟部組織領域は非常に重要となります。 日々の検査においても結果を出す際、軟部組織領域の設定を確認してみてはいかがでしょうか? ご使用いただいているDXA装置をよりよくご活用いただくため、少しでもご参考にして頂ければ幸いでございます。