今回は、従来の骨密骨評価を補足する指標として、昨今 学会等でも話題を集めている海綿骨構造指標(Trabecular Bone Score :TBS)の技術について解説します。
TBSは、Medimaps Group社(スイス)が開発したソフトウェアで、X線骨密度測定装置で計測された腰椎画像の画素濃度をテクスチャー解析して算出される指標です。
TBSとBMDは同じDXAスキャンデータを元に解析しますが、その計算方法は異なります。
BMDは骨画像の各ピクセルの輝度を総計したものと関連しますが、ピクセル間の値の変動は考慮されません。
対して、TBSのアルゴリズムではピクセルの輝度の空間的変動を解析していきます。具体的には、隣接するピクセルの輝度の差を求め、その差の2乗を計算することで、ピクセルの輝度の空間的変動を解析しているわけです。
そのため、TBSはTrabecular Number (Tb.N:骨梁数) 、Trabecular Separation (Tb.Sp:骨梁間隙) 、Connectivity density (Conn.D:連結性密度)のような骨微細構造の指標と相関するといわれています。
このように、従来の骨密骨評価に付加情報を提供するTBSですが、その運用が日常診療の妨げになってはいけません。
弊社の骨密度装置は、TBSが腰椎骨密度撮影の結果画面に統合されています。そのため、別のアプリケーションを立ち上げる必要はなく、撮影、解析からレポート出力まで、TBSにかかわる一連の操作を簡便に行うことができ、通常の検査と同様の手順で付加情報を得ることができる効率性も重視されています。
TBSのリファレンスグラフは、日本人の場合、女性のみが対象です。領域は、L1-L4領域、もしくはL2-L4領域です。日本人男性のグラフは、現在のところ利用できません。
L1-L4リファレンスグラフ:若年成人平均値:1.488 SD値: 0.074高値(緑):1.310以上中間値(黄):1.310から1.230低値(赤):1.230以下
その他、TBSの制限は以下のとおりです。
・腰椎正面のみ – 股関節または前腕骨の測定は、TBSに対応できません。
・成人のみ – 20歳未満の患者では正確ではありません。
・BMI範囲: 15 – 37 kg /m² のBMIを持つ患者に対して正確です。 BMIが範囲外の場合、測定結果の正確性が損なう可能性があります。
・日本人のリファレンスグラフは、女性のみ利用可能です。年代は20歳以上、80歳以下です。
以上、TBSの技術解説はいかがでしたでしょうか。皆様の日常診療のお役にたてれば光栄です。