DXA装置と検出器配列
測定精度へ影響する因子として多くの方々が気にしがちな検出器の素子数ですが、X線の照射幅(ペンシルビームか、ワイドビームか、鋭角ファンビームか)とその動かし方で、必要な素子数は異なります。GEヘルスケアのDXA装置に搭載された検出器の配列を例に、DXA装置と検出器配列の関係性についてみてみましょう。
まずは、検出器の大きさとスキャン方式の関係に注目してみましょう。
【ワイドファンビーム方式の場合】
従来、骨密度測定装置には、ワイドファンビーム方式といわれるスキャン方式が使用されてきました。幅広い検出器全体に扇型のX線を照射するこのスキャン方式は、細く絞ったX線を小さい検出器に照射して多くのスイープを繰り返していく初期のペンシルビーム方式に比べて、測定時間を短縮できるメリットがあり、一般的にも広く普及しました。GEHCでも、古くはこのワイドファンビーム方式を採用していた時期がありました。
しかしながら、このワイドファンビーム方式の場合、検出器の配列方向の解像度は、検出器の素子の数に制限され、情報量は限定的なものとなります。また、幅広いX線束を覆う多くの検出素子が必要となるため、素子ごとの感度の不均一性や、検出素子の故障リスク等も上がっていきます。さらにワイドファンビーム方式では、幅広い検出器への照射が必要な分、本来不必要な部分への被ばくや周囲への散乱線も多くなります。
ペンシルビーム方式(体軸方向のスキャン)の場合
ワイドファンビーム方式(体軸方向のスキャン)の場合
ワイドファンビーム方式(横方向のスキャン)の場合
また、周知のごとく、ワイドファンビーム方式はX線束が扇形に広がりを持つことから、被写体の投影像に幾何学的拡大誤差が発生し、骨面積が実際よりも大きくなる傾向にあり、結果としてBMDの過小評価につながってしまうことも大きな課題でした。この拡大誤差の影響は被写体の骨の位置により異なるため、一定的な骨密度評価が難しくなります。
画像診断が目的ではなく、精度と再現性が求められる定量評価を行うDXA検査において、このワイドファンビーム方式は、検出器配列方向の解像度は素子の数に限定され、さらに幾何学的な拡大誤差を含んだ結果が出てしまうわけです。
GE HCの鋭角ファンビームの誕生
そこで、ワイドファンビーム方式のもつ多くの課題を打破すべく、なおかつ計測時間を短縮する目的でGEHCが生み出したのが、第三世代のスキャン方式にあたる鋭角ファンビーム方式です。鋭角ファンビーム方式では、体軸方向に検出器を配列します。そして対象骨を自動追従しながら必要最低限の範囲だけを、横方向にスィープ・スキャンを行います。
当社が横方向のスキャニングを採用した理由として、
①照射野を最小限にすることが可能で、横方向の画素数が多く採取できる。
②サンプリング時間を規定することで、適切な画素サイズの情報を収集できる。
③検査部位の多くのは、骨が縦方向に存在し、横のスキャニングを行うことで、軟部組織、骨部の境界の情報が適切に収集できる。
ということが挙げられます。
鋭角ファンビーム方式
計測は、各スィープをオーバーラップした形で行われ、最終的に各スキャンで得られた画像に対して独自の画像再構成を行います。
正確な面積を提供する独自の再構成技術 MVIR
(Multi-View Image Reconstruction)
左:再構成前
右:再構成後
これにより、体軸方向の拡大誤差を最小にし、実際の骨の高さに画像を構築します。この独自の再構成技術 MVIR (Multi-View Image Reconstruction)により、各スイープ間で体軸方向に生じた歪みもなくし、正確な面積の提供が可能となりました。
それでは改めて、当社の各DXA装置の検出器の詳細を見てみましょう。
PRODIGYシリーズで使われている検出器の幅は55mmで、そこに16chの素子が体軸方向に並んでいます。実際の照射野のサイズは、体軸方向で約2㎝未満で、その領域をこの16chの素子でカバーし計測を行います。この鋭角ファンビーム方式は、このPRODIGYシリーズから採用され、ペンシルビーム方式のような拡大誤差を抑えた精度の高さと、ワイドファンビーム方式のもつ短時間スキャンのメリットを組み合わせた、第三世代のあたらしいスキャン方式による検査が可能となりました。
PRODIGY シリーズの検出器配列
さて、ここで冒頭の問いに戻りますが、素子数だけが精度に影響しますか?
答えはもちろん「No」です。測定精度や画質も単純に検出器の数だけで全てが決まるわけではありません。素子数といった数字情報だけに惑わされず、まず、装置がどういった技術的仕様をしているかを理解することが大切ということですね。
さらに続く進化
検出器配列にも追求した Lunr iDXA
ではGE HCの骨密度測定装置のフラグシップモデルであるLunar iDXAの検出器配列はどうなっているかをご紹介します。Lunar iDXAでは、PRODIGY シリーズの2倍となる32個の検出器が2列、少し位置をずらした形で配列されています。検出素子と検出素子の間には、どうしても物理的な隙間(GAP)が存在しますが、この隙間の情報も逃さないために、このような配列が生み出されました。
このLunar iDXAの検出器ではPRODIGY シリーズとほぼ同様の照射野(体軸方向で約2㎝未満)をカバーして計測を行います。
その結果、X線をより確実に検出できるようになり、PRODIGYシリーズとくらべて実質1/8程度の画素サイズで計測を行うことができるようになりました。
加えて、画質はもちろん、各画素の認識力(骨部・軟部組織の認識)も大幅に向上したことから、測定精度もアップしました。
Lunar iDXAの検出器配列
いかがでしたでしょうか? あらためてDXA装置の検出器配列を理解し、それが与える臨床上のインパクトについて考えてみるきっかけになれば幸いです。