DXA法における腰椎側面骨密度に関して
‐ 装置メーカーとしての知見も含め ‐
今回はDXA法における腰椎側面の骨密度計測に関して、装置メーカーとしての知見も含めお伝えいたします。
腰椎側面骨密度に関して
DXA法が一般的に普及し始めた1990年初頭ごろより、腰椎側面の骨密度計測は、椎体自体の骨密度が計測可能で、大動脈の石灰化の影響を除去できるとして大変期待されました。しかしながら、現在の骨粗鬆症の予防と治療のガイドラインでは、DXA法における腰椎側面の骨密度は診断に使用しないと明記されております。 これは世界的な認識でも一致しており、ISCD(International Society for Clinical Densitometry)のOfficial Positionsにも同様のことが明記されております。
この結論に至るまで、腰椎側面骨密度計測における多くの検討が欧米等でなされました。そして、1996年の英国でのBath Conference on Osteoporosis and Bone Mineral Measurement学会や米国でのASBMR学会で主に報告されました。
それらの検討の主な結果として:
① 下部肋骨と骨盤骨がそれぞれ上部椎体(L2)と下部椎体(L4)に重なってしまうケースが多く、評価できる椎体が限られること(図 1.)。
② 腰椎側面計測の場合、腰椎正面より測定精度がかなり低下すること1) (表 1.)。
③ 腰椎側面の診断能力は、腰椎正面のそれに比べ、優位差がないこと2)。
④ モニタリングにおいては、複数の検討がなされ、測定精度を踏まえ腰椎正面計測のほうがモニタリングにおいて優れていること3) 4) 5)。
などが結果として報告されました。
また、ISCDのOfficial Positionsには、腰椎側面のTスコアは腰椎正面のTスコアよりも低くなる傾向があるため、現在WHOが設定しているTスコアの分類では、骨粗鬆症を過剰に診断する可能性があることなどが明記されております6)。
Reference 1)より引用、改編
以上の通り、世界的にも腰椎側面骨密度は、診断に使用しないという判断になっております。また本邦含め世界的にも、腰椎側面の基準値やカットオフ値は、設定されていないのが実情でございます。現在のところ、臨床使用には、留意が必要と思われます。
以上の通り、腰椎側面に関しては、診断に使用しないという指針が世界的に出ておりますが、ここで、腰椎側面計測におけるDXAメーカーとしての知見を、DXA法の原理を踏まえてお伝えいたします。
腰椎側面測定においては、前述したとおり、測定できる領域が極端に小さくなり測定精度が低下しますが、この測定精度を低下させる他の要因として、軟部組織領域の少なさがあげられます。
ご存じと通りDXA法は、軟部組織のX線吸収量を基準(ベースライン)に骨量を算定しますが、この基準となる軟部組織領域が腰椎側面計測において極端に少なくなり、安定した軟部組織の情報が得られないため、測定精度が低下する要因となります。また、この基準となる軟部組織領域は、計算する骨部に可能な限り近いところで設定する必要があります。例えば、腰椎正面測定の場合、計測する各椎体の両側に十分な軟部組織領域の設定が可能ですが、腰椎側面の場合、椎体の前側にしか存在せず、肋骨なども混入して安定した領域を確保することが非常に困難です。また呼吸などによる体動の影響も受けてしまいます。これらは、仰臥位、側臥位の場合でも同様です(図 2.)。
以上の通り、腰椎側面計測には人体の形状的な難しさがあります。
また、よくお客様から「腰椎側面は、大動脈の石灰化の影響が除去できるから有用」とお聞きすることがあります。しかしこれは正しくありません。上記のとおり大動脈の石灰化部分で基準となる軟部組織領域を設定するため、石灰化によるX線吸収が通常より上がることにより、基準(ベースライン)が高く設定され、算出されてくる骨密度値は、実際より低値に計算されてしまいます(図 3.)。
以上、腰椎側面計測に関して、装置メーカーからの知見をお伝えしました。
Reference:
1) Jergas M, Genant HK (1997) Lateral dual x-ray absorptiometry of the lumber spine: current status. Bone 20:311-314.
2) Lenchik L, Andersen R, Shan J, Barret-Conner EL, Sartoris DJ (2996) Osteoporosis vertebral fractures: correlation of lateral and anterior-posterior spine bone mineral density measurements in men and women. Radiology 201(P)(suppl):265.
3) Bake GM, Herd RJM, Fogelman I (1996) A longitudinal study of supine lateral DXA of the lumber spine: a comparison with posterior-anterior spine, hip, and total body DXA. Osteoporosis Int 6:462-470.
4) Marcus R, Black D, Genant HK, Commings SR (1996) Impact of alendronate on bone mineral density at the AP versus the lateral spine. J bone Miner Res 11(suppl 1):S341.
5) Faulkner KG, McClung MR, Ravn P, Hosking DJ, Wasnich RD, Daley M, Yates AJ (1996) Monitoring skeletal response to therapy in early post-menopausal women: which bone to measure? J Bone Miner Res 11(suppl 1):S96.
6) Hamdy RC, Petak SM, Lenchik L (2002) Position Statement : Which Central Dual X-ray Absorptiometry Skeletal sites and Regions of Interest should be Used to Determine the Diagnosis of Osteoporosis? Journal of Clinical Densitometry Vol.5, Supplement, S11-S17.
