GEHC製DXA装置の長期的な測定値の安定性について
GEHCでのDXA装置では長期的な測定値の安定性を担保するために、QA(Quality Assurance:品質保証)プログラムが搭載されています。QAプログラムは校正値を自動補正するもので、測定値に乖離がないかを確認するためだけのQC(Quality Control)とは異なります。QAを実施するために専門業者を呼ぶ必要はなく、日々、安定した計測が可能となります。
装置の専用のQAブロックには、低骨密度レベルから高骨密度レベルまでの3種のファントムと低脂肪レベルから高脂肪レベルの3種のファントムが挿入されており、これらのマルチポイントの基準物質で校正を行うことにより、低値から高値までの測定値の直線性を保つことができます。
QEHCのQAファントムとQAプログラム
QCとは異なり、校正値を自動補正するもので専門業者を呼ぶ必要はなく、日々、安定した計測が可能となります。
ファントムにおける長期的な安定性の検討
MC SchoellerらはPRODIGYによる長期的な腰椎ファントムの測定値の変動に関して、 4 年 9 か月の期間にわたり785例の測定を行ったところ、初回の測定値(ベースライン)と比べ、その平均 BMD の変化率は -0.31% と、非常に安定した値が示されたと結論付けています。年間のBMDの変化量は0.00023g/cm2と有意差はなく、また、この研究期間の間に行われたソフトウェアのバージョンアップにおいても、その安定性は担保されていることを示し、PRODIGYが前述のQAプログラムによる信頼性の高いシステムであること、そして長期的な測定値の安定性をあることを示しました。
図2:ファントムにおける長期的な安定性の検討
MC Schoeller, RELIABILITY OF TWO CONSECUTIVE PRODIGY DENSITOMETER, SASBMR Annual Meeting; September 2007, Honolulu, HI, USA,
臨床における長期的な安定性の検討
実際の臨床上、長期的な安定性にかかわる因子の一つにポジショニングがあります。ポジショニングを一定に保ち、測定値の安定性を担保することの重要性は周知のとおりですが、患者様の状態によっては、理想的なポジショニングを検査毎に再現することが難しい場合もあるかと思います。特に従来のワイドファンビーム方式のDXA装置では、被写体がオフセンターになるほど、投影される骨面積に幾何学的な拡大誤差がおきるため、シビアなポジショニングが求められていました。
そのためGEHCでは、細く絞ったX線を照射して幾何学的な拡大誤差を抑え、被写体の位置依存を抑制することができる鋭角ファンビームを採用することで、長期的な安定性を保っています。GEHCの実際の臨床データにおける測定値の安定性は、下記のように様々な文献で報告されています。ISCD の公式見解によると、許容できる最小精度(CV%)は腰椎で1.9% (LSC=5.3%)、大腿骨頸部2.5% (LSC=6.9%) 、大腿骨近位部で1.8% (LSC=5.0%)です。 ※LSC =least significant change 最小有意変化
再現性のために気を付けたいポイント
こういったDXA装置の技術以外にも、安定性を保つためのポイントがあります。DXAの再現性は、計測部位の面積に依存しており、面積が小さいと計測値が 変動(ばらつき)しやすいといわれています。よって、腰椎YAMは1椎体でモニタリングをすることは推奨されておらず、L1-L4の中の最低2椎体以上で行うことが原則とされています。大腿骨YAMはFemoral neckよりも5 倍以上の面積をもつTotal hipの方が再現性が良いため、モニタリングにおいてはTotal hipで評価することが推奨されています。
また、GEHCでは過去画像の関心領域(Region of interest=ROI) をコピーして、次の検査で使うことができる「比較解析機能(コピーROI) 」という機能があります。経過観察においては、初回測定結果の情報を基本とし、比較解析機能を使用することにより、各椎体の椎間が認識しにくい症例でも、前回と同様の領域で解析が可能で、各椎体の誤認も防ぐことができます。
長年の骨粗鬆症治療において治療効果を正当に評価するために、骨密度測定の再現性はとても重要です。GEHCのDXAの技術と測定時のポイントについてご紹介しました。