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JB09489JA

※お客様のご使用経験に基づく記載です。仕様値として保証するものではありません。

薬事認証番号:303ACBZX00035000
核医学診断用リング型SPECT装置 MyoSPECT(マイオスペクト)
薬事認証番号:223ACBZX00079000
核医学診断用装置 Discovery NM 630
類型:NM830

心筋シンチにおける検査件数増加のため行った工夫
~DPC制度を利用して必要とされる核医学検査を目指して~

大阪府済生会野江病院
放射線科 技師長 中倉 賢二 様


施設紹介

済生会は、医療によって生活困窮者を救済するため1911年に明治天皇により設立されましたが、100年以上にわたる活動をふまえて、三つの目標「生活困窮者を済(すく)う」「医療で地域の生(いのち)を守る」「医療と福祉、会を挙げて切れ目のないサービスを提供」を掲げ、日本最大の社会福祉法人として全職員約64,000人が全国40都道府県でいのちに寄り添う医療・保健・福祉活動を展開しています。
大阪府済生会野江病院は、大阪市東部(城東区、鶴見区、旭区)の地域医療を担う400床を有する中核病院として、地域医療支援病院、災害医療協力病院、大阪府がん診療拠点病院に指定されています。(病院ホームページより)
放射線科内にある核医学検査室は、2022年装置の更新と増設があり、SPECT装置2台を所有しています。内訳は、GEヘルスケア社製の2検出器型SPECT装置『NM830』、心臓専用半導体SPECT装置『MyoSPECT』です。当院の核医学検査数は、年間約1400件で、その内65%が心臓領域であり、心筋に特化した病院になります。現在、核医学を担当する診療放射線技師は、6名在籍しており、毎日専任専従1名とローテーション1.5名の計2.5人で勤務しています。



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2検出器型SPECT装置 NM830



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心臓専用半導体SPECT装置 MyoSPECT





近年における心臓領域の核医学検査件数について

近年、全国核医学診療実態調査報告によると心臓領域のSPECT検査数が減少しています。当院においても、心臓領域は10年前まで同じ減少傾向でありました。しかし、装置の更新や増設に向けて、核医学検査の充実を目標にしてきました。どうすれば、臨床の先生方に核医学検査を使ってもらえるか、また必要とされる検査を目指して、色々な工夫を行いました。今回当院で行った取り組みについて紹介いたします。


心筋シンチグラフィにおける検査数増加のため行った工夫

核医学検査数が伸びない理由として、以下のことが考えられます。
・核医学検査は患者負担金額が大きい。
・検査をやっても読影できる先生がいない。
・カテーテル検査で知りたい情報がわかる。
・検査時間が長く、腕の挙上が出来ない。
・放射線の被ばくが多い。
・検査が複雑で医師の拘束時間が長い。

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これらを解決する為に様々な取り組みを行いました。



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例えば、負荷心筋血流シンチグラフィにおいては、心筋負荷薬剤や放射性医薬品を使用するため、ルートキープして血管確保が必要になります。当院では、今まで医師がこれら全てを行っていました。しかし、医師の拘束時間が長くなるため、ルートキープのみ看護師が行い分業できるように変更しました。そのことで医師は、心筋に薬剤負荷する業務、患者情報収集、患者の観察などに集中して業務が出来ます。また、放射性医薬品の注入時は、患者や薬剤の間違い防止のため、患者用予約用紙、薬剤形状写真などを用いて、事前に数人で確認します。それと同時に点滴ルートや三方活栓の位置も担当者全員が一目で見やすい位置に配置しました。これらのことで医師の拘束時間を短く出来るように工夫出来ました。


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また、負荷薬剤をジピリダモールから薬剤半減期の短いアデノシンに変更しました。このことにより、医師は、患者の観察時間を短くできるので、医師の拘束時間短縮にも大きく関与すると考えられます。


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当院の循環器内科医師は7名おられますが、常時、核医学検査を担当するのは2名の先生です。
しかし2名の先生は、核医学以外の検査も担当するので、緊急検査や処置が入ると代役の先生になる事もあります。代役の先生時の対応は、検査の手順や内容を熟知している看護師・診療放射線技師が代役の先生に検査手順を説明できるサポート体制をとっています。よって、いつも予定通りのスケジュールで遅れることなく検査を行うことが可能なのです。
心筋画像処理やテクニカルレポートの作成は、われわれ診療放射線技師が担当します。画像を読影する医師に技術的な意見を伝えるのが目的です。そのため、核医学を担当する技師は、医師と一緒に学会や研修会にもよく参加しています。臨床面においては、いつも先生に教えてもらいながら、技術面も同じように情報共有して知識向上出来るように努めています。なによりも主治医や読影医の先生方に信頼される画像を作るためです。当院では、先生が心筋画像読影時に収集画像の情報共有するため、必ず検査を担当した技師が読影補助を行います。技師が準備したテクニカルレポートを参照してもらいながら、読影に役立ててもらっています。


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そして、DPC(診断群分類別包括評価)制度を活用した心臓核医学検査数増加についてもご紹介します。
DPCは疾患毎に入院点数が決まっています。
循環器の領域において
●急性心筋梗塞
● 狭心症、慢性虚血性心疾患
● 心筋症
● 心不全
● 肺塞栓症
これら5つの疾患に関しては、入院一律の費用が決まっています。
下記スライド1は、当院のDPCの状況です。
狭心症、慢性虚血性心疾患に対して、心臓カテーテル検査とRI-SPECT検査を実施した場合、患者の平均年齢は70.81歳、平均入院期間:3.75日、(全国平均在院日数:6.24日)です。また、狭心症、慢性虚血性心疾患に対し、経皮的冠動脈ステント留置術、経皮的冠動脈形成術等とRI-SPECT検査を実施した場合、患者の平均年齢は71.05歳、平均入院期間:3.27日、(全国平均在院日数:9.75日)でありました。


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スライド1




疾患別に入院日数と収支の関係を示します。
スライド2は狭心症、慢性虚血性心疾患のケースです。心臓カテーテル検査のみを行った場合は、DPC係数も加わり35,346点となります。ここに2泊3日で心筋SPECT検査を追加した場合は、51,179点となり、その差額は15,833点となります。当院は3日間で退院しますので、タリウム薬剤費用を考慮しても十分にプラス収支をもたらします。


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スライド 2




心筋梗塞(スライド3)においても同様に、PCIのみで14日間入院して、退院されると54,594点となります。当院では、8日目にSPECT検査を行いますので、差額が19,668点になります。この場合もタリウム薬剤費用のおおよそ5万円を考慮しても収益が上がります。


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スライド 3




心不全においても(スライド4)、123I-MIBG検査を行うことで、差額として20,873点の収益があります。


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スライド 4

 


心筋シンチにおける検査件数増加のため行った工夫-ポイント

核医学検査数を増加するため行ったこと。
● 核医学検査の業務内容を細かく見直した
→ 医師の拘束時間を短くした。先生には、医師にしか出来ないことを担当してもらう。
● DPCの制度をうまく利用した
→ 症例ごとに制度を熟知し、主治医から検査が必要とされる核医学画像を目指した。
● 虚血などのフォローに心筋シンチグラフィが定着
→ 急性期AMIの術後評価を安静心筋血流シンチで評価。
 心筋虚血の診断に負荷心筋血流シンチで術前評価。
 心不全には123I-MIBG心筋シンチで客観的な評価。


まとめ

当院では、臨床、読影の先生方のご協力もあり、核医学検査件数が増加傾向になった。核医学検査件数を増加するため、以下の項目が重要と考えた。
① 核医学検査を行う上で、検査の内容や手順を一から見直した。その結果、それぞれの職種が役割をうまく分業し、気軽に話合えて手伝えるチームワークができた。
② 診療に心臓核医学検査が必要と思われるにはどうすればいいのかを再考した。その結果、臨床の先生は、虚血の評価が重要であった。
③ DPC(診療群分類包括評価)制度は、専門知識のある他職種間チームワークが連携して、上手く院内で活用できた。
④ 今回、装置更新があり、購入方法や装置の利便性、データ共有を考慮し、2台の装置(NM830&MyoSPECT)を同じGEヘルスケア社製で統一した。心臓専用機種のMyoSPECTは、期待していた以上に精度が高い画像を提供できる。また、汎用機種のNM830は、搭載された新機能もあり、全ての検査に対応できる装置である