施設紹介
滋賀医科大学は「一県一医大」構想の下、医学部医学科の単科大学として開学し、附属病院の開院や大学院医学系研究科の設置を経て現在に至り、2024年10月に開学50周年を迎えました。病床数は603床を有しており、「信頼と満足を追求する全人的医療」の理念を掲げ、高度な医療を提供・評価・開発・研修機能を有することが求められる特定機能病院の役割を果たすとともに、県全域および京都南部や三重の伊賀地方を含む地域の基幹病院としての役割を果たすべく診療を行っています。核医学検査室ではSPECT、SPECT/CT、PET/CT装置が稼働しており、今回2013年から稼働していたPET/CT装置Discovery PET/CT 710がOmni Legend 21(図1)へ更新となりました。

図1.当院のOmni Legend 21
臨床の運用について
当院ではデリバリーPET製剤を使用しており、Discovery PET/CT 710ではDRLs2020に基づき投与放射能量4.0MBq/kg、収集時間1Bed 2~2.5min収集、ルーチン検査で8Bed 16~20min収集を行っていました(頭部~骨盤部)。Omni Legend 21導入にあたり短時間収集、デバイスレス呼吸同期 Advanced MotionFree(以下AMF) 収集、Whole Body Dynamic(以下WBD)の検討を行い、現在は投与放射能量を変えずに収集時間1Bed 1.5min(呼吸同期3min)収集、ルーチン検査で6Bed 12~15min収集(頭部~骨盤部)+WBD 6min(1.5min×4Frame収集を20min程度で行っています。AMF収集は選択的に呼吸同期収集が可能なため、当院では一般的に呼吸性移動の影響を受けやすい部位以外にも疾患部位に呼吸同期収集を行うなど運用を行っています。
Discovery PET/CT 710との比較(体幹部)
装置の更新までDiscovery PET/CT 710で画質は特に問題ないと考えていました。しかし装置の更新により、肝臓の画質は飛躍的に向上し、AMF収集や半導体PETの性能の恩恵を強く実感しています。下に過去Discovery PET/CT 710で撮像した患者で、呼吸同期が有用だった症例の撮像条件と画像を示します(表1)(図2)。 中咽頭癌の全身評価目的でPET検査を行い、更新前後で画像は9カ月経過しています。中咽頭癌への集積は消失していますが、他の集積は増強し、また新たに転移巣が出現した画像になります。更新前画像では若干バナナアーチファクト(矢印)を認めますが、呼吸同期撮像によりCTとPETの位置ズレが少なくなり、その他にも肝臓辺縁、肺門部腫瘍がより明瞭に描出されています。
装置 |
Omni Legend 21 |
Discovery PET/CT 710 |
撮像範囲 |
頭部~骨盤部 |
頭部~骨盤部 |
投与量 |
267MBq(3.71MBq/kg) |
254MBq(3.52MBq/kg) |
待機時間 |
60min |
60min |
1Bed収集時間 |
1.5min(呼吸同期:3min) |
2~2.5min |
Bed数 |
6Bed |
8Bed |
Matrix |
256×256 |
192×192 |
再構成条件 |
Q.Clear β:700 |
OSEM+PSF |
Deep Learning技術 |
Precision DL(H) |
(-) |
呼吸同期 |
AMF収集 |
(-) |
収集時間 |
12min |
20min |
Discovery PET/CT 710との比較(アミロイドPET)
アミロイドPETの撮像については1Bedの撮像範囲が16cmから21cmとなり、ポジショニングが楽になりました。また今回の更新を機会に再構成条件をOSEMからQ.Clearに変更しましたが、施設認証は問題なく合格しています。Q.Clearで再構成することでノイズが低減し辺縁が明瞭となり、またアミロイドPET専用解析ソフトCortexID Suiteを導入したことで、より読影環境が整いました。下に別患者ではありますが、それぞれの撮像条件と画像を提示します(表2) (図3)。Omni Legend 21は収集時間が短縮されているにもかかわらず、ノイズが少ないことが確認できます。
表2.アミロイドPET収集条件比較
装置 |
Omni Legend 21 |
Discovery PET/CT 710 |
投与量 |
258MBq |
227MBq |
待機時間 |
90min |
90min |
撮像範囲(1Bed) |
21cm |
16cm |
Matrix |
256×256 |
256×256 |
再構成条件 |
Q.Clear β:400 |
OSEM |
収集時間 |
20min |
30min |
特徴的な一例
食道胃接合部癌術後の転移検索目的で来られた患者で、通常通り撮像しました。しかし、収集中に画像を確認すると皮膚にびまん性の集積を認め、放射線科医師と相談し、腕も含めて全身を短時間で撮像を行いました。Deep Learning技術が使えることもあり、短時間収集でも全身の炎症箇所が分かり大変有用でした。当院では長時間臥位困難な患者や閉所恐怖症の患者などについては放射線科医師と相談した上で短時間収集を行う事もあり、使用する技師としても短時間でも寝ていただければ検査は行えるという安心感があります。下に撮像条件と画像を提示します(表3)(図4)。
表3.短時間撮像収集条件比較
収集方法 |
WB(AMF) |
WB(短時間収集) |
撮像範囲 |
頭部~骨盤部 |
頭部~足先 |
投与量 |
228MBq(3.86MBq/kg) |
228MBq(3.86MBq/kg) |
待機時間 |
54min |
79min |
1Bed収集時間 |
1.5min(呼吸同期:3min) |
0.25min |
Bed数 |
6Bed |
11Bed |
Matrix |
256×256 |
192×192 |
再構成条件 |
Q.Clear β:700 |
Q.Clear β:1200 |
Deep Learning技術 |
Precision DL(H) |
Precision DL(M) |
呼吸同期 |
デバイスレス呼吸同期 |
(-) |
収集時間 |
12min |
2.75min |
図4.全身像追加症例
Whole Body Dynamic(WBD)
当院では全身画像収集後にWBDも収集しており、WBDデータからCINE MIP像を作成し、画像を提供しています。CINE MIP像は異常集積と生理的集積の判別が可能で、遅延像の代替法として有用で読影する先生にも好評です。また遅延像を撮ることが少なくなり効率が良くなりました。下にWBDを撮像することで異常集積と生理的集積の判別が容易だった症例の撮像条件と画像を示します(表4)(図5)。
表4.WB(AMF)とWBD撮像条件
収集方法 |
WB(AMF) |
WBD |
撮像範囲 |
頭部~骨盤部 |
頭部~骨盤部 |
投与量 |
215MBq(4.48MBq/kg) |
215MBq(4.48MBq/kg) |
待機時間 |
60min |
67min |
1Bed収集時間 |
1.0min(呼吸同期は2min) |
15sec |
Bed数 |
6Bed |
6Bed |
Matrix |
256×256 |
192×192 |
再構成条件 |
Q.Clear β:700 |
Q.Clear β:1200 |
Deep Learning技術 |
Precision DL(H) |
(-) |
Frame数 |
1Frame |
4Frame |
収集時間 |
7min |
6min |
最後に
BGO半導体PET/CT装置と聞き、Time-Of-Fright(TOF)が使用出来ないと懸念する方もおられると思いますが、Omni LegendではLYSO半導体PET/CT装置のTOF再構成データを教師データとしたDeep Learning技術が可能です。そのため高感度であるBGOとTOFが可能なLYSOそれぞれの長所を利用し、短時間収集でも臨床的に意義のある画像が作れます。また他にもWhole Body Dynamicやデバイスレス呼吸同期収集も可能なため『出来ないことが無いPET/CT装置』と考えており、今まで以上に依頼科が望むPET/CT画像が提供出来る様、密に連携を取り患者にとって有益な情報を提供していきます。