関連製品

omni-legend.jpg

Omni Legend

JB12793JA

※お客様のご使用経験に基づく記載です。仕様値として保証するものではありません。


販売名称: X 線 CT 組合せ型ポジトロンCT 装置 Optima PET/CT500, Discovery PET/CT 600
薬事認証番号: 221ACBZX00029000
類型: Omni Legend

PETの減弱補正を助ける新技術「Enhanced AC」の原理と効果

九州大学病院 医療技術部 放射線部門
山下泰生 様


はじめに

当院では、2023年3月にGE HealthCare社製のPET/CT装置「Omni Legend 32」を導入しました(図1)。この装置は、デジタルBGO(dBGO)検出器を搭載しており、従来と比べて検出感度が大幅に向上しているため、短時間の収集でも高品質な画像を提供することが可能です。また、従来のBGO検出器ではtime-of-flight(ToF)機能が使用できないという制約がありましたが、Omni Legendではこの欠点を、機械学習を応用した画像処理技術「Precision DL(PDL)」によって補完しています。PDLは、再構成後のPET画像に対して空間分解能の向上やノイズ低減を可能にし、ToF相当の画像改善が期待される革新的な技術です。
操作面においても、3Dカメラを用いた自動位置合わせ機能など、ユーザーインターフェースの向上が図られており、臨床現場で業務にあたる放射線技師にとって大きな利便性を感じています。日々の業務の中で新しい装置に触れることは刺激的で、技術的な学びとともに業務の質的向上にもつながっています。



omnilegend_Kyushu02_02.jpg
図1 当院のOmni Legend 外観


Enhanced ACの原理
全身PET/CTでは、呼吸運動による解剖学的位置の不一致により、肺底部や肝臓、脾臓、胃などの横隔膜下の腹部臓器に顕著な画像アーチファクトを経験することがあります。このような場合、病変やその他の組織領域における放射性トレーサーの取り込みが、実際の取り込み値よりも大幅に低く、または高く見えてしまいます。たとえば、誤って低い取り込みが観察されると、医師が実際の臨床所見を過小評価する可能性が生じます。この問題を低減する技術として「Enhanced AC」をご紹介します。


omnilegend_Kyushu02_03.jpg
図2 Enhanced ACのコンセプト略図


まずは、Enhanced ACのコンセプトを図2に示します。Enhanced ACは、横隔膜周囲に生じたCT 画像とPET 画像の誤差を自動認識し、PET画像に合わせて再形成したCTボリュームデータをPET画像の減弱補正に用いることで画質を改善します。具体的には、はじめにCT画像から肺野・肺底部、体輪郭の領域抽出を行い、PET画像における軟部組織(横隔膜直下の肝臓など)と肺の集積を推定します。その際、軟部組織として抽出された領域の推定では、PET画像のヒストグラム分析を用いています。また、肺野の集積については、抽出された肺野においてゼロ以外のPET 画素値の中央値を適用します。次に、横隔膜周辺のPET画像上で過小評価を呈する画像アーチファクトの評価を、次の式(1)に基づいて実施します。

M=(P <(Bl・Rl))&((Bl − P)>(Bb・Rb)) (1)

ここで、M はアーチファクトに関連すると判別されたボクセルのボリュームマスク、P は肺とセグメント化された領域内にあるPET画像のボリューム配列、BlとBbはそれぞれ肺と軟部組織の集積値、RlとRbは最適化された比率パラメータを示しています。式(1)からボクセルにアーチファクトが存在すると判別された場合、プラスまたはマイナスの重み係数(図2左下;赤と黄色)を割り当てます。次に、Enhanced ACが作用する関心領域において、2 次元のアーチファクト分布マップをz軸方向に算出された重み係数の合算値として形成します。このアーチファクト分布マップのパーセンタイル分析により、CT画像における横隔膜の遷移距離を決定しています。さらに、決定された遷移距離に基づき、式(2)に示す「条件付き拡張」モデルを使用してCT画像のボリュームを再形成する工程に進みます。

V ′xy (z)= max(Vxy [z−Dxy):(z+1)]),
if:max(Vxy [(z−Dxy):(z−Dxy+c+1)])< t (2)

ここで、V ′とV はそれぞれ修正されたCT ボリュームデータと元のCTボリュームデータ、Dは対象領域内の各xyの最大拡張距離の配列を示し、cは距離パラメータの定数であり、tはHUの閾値を示します。最後に、PET再構成に鋭いエッジ効果が発生する可能性を回避するために、再形成されたCT画像の関連領域に対してスムージング処理が適応され、減弱補正用CT画像が生成されます。結果として、Enhanced ACでは、作成したCT画像に基づき減弱補正を行ったPET画像が出力されています。


Enhanced ACの使用経験
当院は、Enhanced AC をいち早く導入し、臨床で使用しています。ここからは、当院のEnhanced ACの使用経験をご紹介致します。Omni Legendが実現した短い収集時間であっても、CT画像とPET画像の間には、横隔膜の位置ずれが生じることを経験することがあります。本来であれば、操作者の工夫により回避可能な問題ですが、患者個々の要因により、どうしても位置ずれが発生するような場合です。そのような場面では、Enhanced ACが力を発揮することになります。
図3に当院で経験した呼吸運動により位置ずれが生じた一例を示します。この症例では、Enhanced AC を用いることで、横隔膜周囲の減弱補正エラーが改善され、2 重に見えていた横隔膜の輪郭が明瞭化されていることをご覧いただけます。Enhanced AC の利点の一つは、横隔膜周囲以外の領域には影響しない点であると私は考えます。


omnilegend_Kyushu02_04.png図3 自験例における Enhanced AC


omnilegend_Kyushu02_05.jpg
図4 食道癌の症例(75歳,自験例)におけるEnhanced ACの効果


図4は、食道癌の症例です。この症例では、横隔膜直下の肝転移腫瘤のSUVmaxは、4 .95 から6 .99 に上昇しました。これは、呼吸運動による位置ずれに起因する減弱補正エラーと考えられますが、Enhanced ACを用いても、横隔膜近傍のスライス以外の領域にはまったく影響を及ぼしていないことが見て取れます。
次に、図5は膵癌の症例であり、肝転移検索目的に実施されたPET/CT検査の画像です。


omnilegend_Kyushu02_06.jpg図5 膵癌の症例(59歳,自験例)におけるEnhanced ACの効果


図5の症例は、Enhanced AC(−)の画像では、横隔膜に接する腫瘤が認められます(赤矢印)が、Enhanced ACを用いることで、この腫瘤が肝実質に生じた転移病変であることを明らかにすることができました。この症例では、肝腫瘤のSUVmaxが3 .06から5 .30に上昇しました。また、青矢印で指す肺転移腫瘤では、SUVmaxは3 .30 から4 .11 に上昇しました。本症例では、該当の肝腫瘤の他に肺および肝内に明確な転移が認められるため、対象となった腫瘤が、どちらに存在してもおかしくない状態でしたが、明確に肝臓内に存在する腫瘤であることをEnhanced AC により証明することができました。
当院で使用した経験からEnhanced ACは、幅広い臨床用途、画像条件において、堅牢かつ高速なアプリケーションとして有用でした。


最後に
今回は、Enhanced ACの原理とその効果について、少し踏み込んでご紹介しました。現在のEnhanced ACでは、減弱補正の精度が大きく向上しており、非常に有用だと感じています。今後のアップデートによって、さらなる進化が実現することを期待しています。
また、今回は触れませんでしたが、Precision DLについても、今後さらに使用が増えると予想される68Ga製剤への対応が進むことを期待しています。Omni Legendは、今回のEnhanced ACのようにアップデートを通じて新たな機能が追加されていく拡張性が大きな魅力の一つです。今後も、より多様な臨床ニーズに応える進化を楽しみにしています。


omnilegend_Kyushu02_01.jpg




Cookie Preferences | Privacy Policy | California Privacy Policy | Terms and Conditions | Security


Copyright and trademark statement: © 2026 GE HealthCare. GE is a trademark of General Electric Company. Used under trademark license.