1. 施設紹介
当クリニックは、日本初の共同利用型の画像診断センターとして、1990年に京都で開設されました(図1)。現在では、近畿各府県800施設を超える病院・診療所からの紹介患者の画像検査を実施し、相互連携を通じて、地域医療に貢献しています。
Smartmail Vol.254 [2025/10/1]のカスタマーボイスでは、当クリニックにおけるOmni Legend 32の活用方法や運用環境についてご紹介しました。
当クリニックでは、18F-FDGを用いた全身PET検査に加え、68Ga-PSMA PETや18F-Flutemetamolを用いた アミロイドPETも実施しています。
Omni Legend 32を導入した2023年は、アミロイドPETが保険適用となった年でもあり、認知症診療におけるPET検査への期待が高まりつつあるタイミングでした。また、装置導入から半年後には、日本核医学会が定めるPET撮像認証施設認証を取得しています。
今回は、当クリニックにおけるアミロイドPETにおいて、再構成法「Q.Clear」をどのように活用しているかをご紹介します。
図1 当クリニック外観
2. PET撮像認証を目指した画質検討
アミロイドPETの撮像認証の取得を検討した当時は、認証取得施設のほぼすべての施設が、OS-EM法であるVPHDを用いた再構成条件を採用していました。一方、当クリニックではFDG検査においてQ.Clearの良さを実感していたことから、アミロイドPETにおいてもQ.Clearを用いた条件で撮像認証を取得することを目指し、画質検討を行いました。
検討は、 「18F–FDGとアミロイドイメージング剤を用いた脳PET撮像のためのファントム試験手順書撮像手順書 第5版」に従い、ホフマン3Dファントムおよび円筒ファントムを使用しました。検討条件を表1に示します。Q.Clearはβ値を200~600まで50刻みで変化させた9条件、VPHDはIteration: 4、Subset: 12を固定し、Gaussian Filter(以下Gf)を2.0~7.0 mmまで1 mm刻みで変化させた6条件を比較しました。
(使用ソフトウェア:PETquact IE(日本メジフィジックス社))
表1 画質検討条件
%Contrastおよび変動係数(CV)の結果を表2に示します。%Contrastは全ての条件で基準値である55%以上を満たしました。変動係数(CV)は、Q.Clearではβ250以上、VPHDではGf 3.0 mm以上で基準値の15未満を満たしました。
表2 物理指標算出結果

次に、ホフマン3Dファントム(60 min収集画像、FBP再構成)をリファレンスとしてNMSEを算出しました(使用ソフウェア:Prominence Processor(日本放射線技術学会))(図2)。
その結果、NMSEはQ.Clear: β500およびVPHD: Gf 4.0 mmで最小となりました。
算出したスコアに加え、先行研究※1も参考にし、当クリニックではQ.Clear: β450およびVPHD: Iteration: 4, Subset: 12, Gf 4.0 mmをアミロイドPET再構成条件の候補としました(図3)。
最終的には、視覚的にも良好な画質が得られたことから、Q.Clearを当クリニックにおけるアミロイドPETの再構成条件として使用することに決定しました。
※1 Kei Wagatsuma et al. Determination of optimal regularization factor in Bayesian penalized likelihood reconstruction of brain PET images using[18F]FDG and [11C]PiB. Med Phys. 2022 May;49(5):2995-3005
図2 NMSE算出結果
図3 ファントム画像
3. Q.ClearとGibbsアーチファクト
Q.Clearを使用する際には、再構成に含まれるPSF補正に起因するGibbsアーチファクトの影響が懸念されます。これこそが、多くの施設でアミロイドPETの再構成にQ.Clearを使用していなかった要因であると推察します。
そこで当クリニックでは、Q.ClearをアミロイドPETへ適用するにあたり、Gibbsアーチファクトの影響について検討を行いました。
図4に示すように、ホフマン3Dファントム画像からプロファイルカーブを取得し評価しました。
デジタルファントム(Gf: 6 mm)と比較すると、β50およびβ150のような低いβ値では、Gibbsアーチファクトの影響と考えられる辺縁部の信号変化が認められました。一方、β250以上ではその影響は抑制され、視覚的にもアーチファクトは認めませんでした(図4)。
図4 プロファイルカーブ
Omni LegendシリーズにおけるQ.Clearには、新しいPSF技術である「Hybrid PSF」が採用されています(図5)。
従来のPSF法では、投影の直前と順投影の後に放射状のサイノグラムスムージングを適用する手法であり、高解像度PET画像を得るためにLOR幅より小さい画像マトリクスを用いた場合、LOR境界においてステップ状のアーチファクトが発生することがありました。一方、Hybrid PSF法では、空間的に変化するサイノグラムベースのスムージング量を低減し、新たに空間的に一定なガウススムージングを組み合わせることで、高周波成分を抑制する手法が採用されています。これにより、高解像度を維持しながら高周波由来のアーチファクト低減が期待でき、今回の検討においても、Gibbsアーチファクト抑制に寄与している可能性があると考えています。
(Hybrid PSFの詳細については、GE HealthCareご担当者へお問い合わせください。)
なお、このような新機能を含め、性能は機種により異なります。Q.Clearを再構成条件として使用する場合は自施設の装置で検討を行い、PSF補正によるアーチファクトの影響を確認したうえで適切に使用することが重要であると考えます。
図5 PSF従来法とHybrid PSF法
4. 撮像認証取得後の臨床運用
これらの画質検討およびアーチファクト評価の結果を踏まえ、当クリニックではQ.Clear再構成(β値450)を用いた条件で撮像認証を申請し、良好な結果で認証を取得することができました(図6)。
当クリニックで実施したアミロイドPETの臨床画像(陰性例・陽性例)を図7に示します。
実臨床においても、Q.Clearを用いた画像に対しては、「画質が良好である」といった評価をいただくことが多く、安定した画像品質が得られていると感じます。
図6 撮像認証結果
図7 臨床画像
5. 撮像時間短縮の影響
アミロイドPET検査は、撮像認証取得時に申請した撮像プロトコルに沿って検査を行う必要があります。しかし実臨床では、検査の特性上、静止困難などの理由により十分な撮像時間を確保できずに途中で止めなければならない例を経験することがあります。このような状況においても、Q.Clear再構成は有用であると考えています。
図8に、臨床画像(18F-Flutemetamol、60分待機)からリストデータを用いて撮像時間を短縮し、切り出した画像を示します。
撮像時間の短縮に伴い画質の低下は認められるものの、視覚的には大きな差はなく、読影への影響は限定的であると考えられました。
図8 撮像時間切り出し画像
さらに、当クリニックで検査を実施した連続12例について、撮像時間を短縮した画像を用いて、定量指標であるCentiloid valueおよびSUVr(Composite)を算出しました(図9)。
(使用ソフト:VizCalc(日本メジフィジックス社))
その結果、撮像時間を短縮した場合でも、Centiloid valueおよびSUVrに大きな変化は認められませんでした。
このことから、やむを得ず十分な撮像時間を確保できない場合であっても、Q.Clearを用いることで、定性評価および定量評価の双方において、画質低下の影響を抑えることが可能であることは大きな利点であると考えます。
図9 Centiloid valueおよびSUVr
6. 最後に
本稿では、当クリニックにおけるQ.Clearを活用したアミロイドPETについてご紹介しました。アミロイドPETにおいてQ.Clearを活用することで、従来の再構成方法と比較して良好な画質が得られ、適切なβ値を設定することで、懸念されるGibbsアーチファクトの影響も抑制できることを確認しました。また、その条件で日本核医学会のPET撮像認証を取得することができ、実臨床においても、安定して良好な画質を得ることが可能であると考えます。さらに、撮像時間を十分に確保できない状況においても、Q.Clearでは画質および定量指標への影響を抑えることができました。
Omni Legendが有する性能に加え、Hybrid PSF補正などの新技術を活かし、今後もアミロイドPET検査において、より良い画質提供につなげていきたいと考えています。
当クリニックでは今年、PET撮像認証の更新時期を迎えます。多くの施設が同様に認証更新を迎えるこのタイミングにおいて、本稿がQ.Clear再構成の活用を検討する一助となれば幸いです。