施設紹介
脳神経筋センターよしみず病院は、2021年12月1日前進の昭和病院から脳神経筋センターよしみず病院と名前を新たに診療開始しました。当院は、神経・筋疾患の正確な診断から初期治療、リハビリから介護・看取りまでを一貫して行い、良質な脳神経内科医療の提供し、神経・筋疾患分野での西日本の拠点病院を目指す病院であります。
今回2024年4月より運用を開始し104件(2025年7月18日現在)のアミロイドPETを実施してきましたので、導入から臨床開始、使用経験についてご紹介いたします。
図 1 病院外観
PET-CT導入背景と装置に求めたこと
当院が新病院を建設中の2021年、レカネマブの薬事承認されるのではとの話がありました。当院としても使用したい薬であったため、PET-CTを設置できるスペースだけ確保し病院を建設しました。2023年1月にレカネマブの日本承認申請がされると、当院もPET-CT導入に向け各社装置の情報収集を行い、2024年3月に装置の設置を開始し、2024年4月に運用を開始しました。
当院はアミロイドPETでの運用が中心と考えられたため、装置の導入は脳神経内科の医師を中心に、放射線技師、事務などで意見を出し合い選定を行いました。導入の際に脳神経内科医師は、皮質髄質に集積したアミロイドの視覚判定がきちんとできる解像度・分解能を重視されておりました。それに対し放射線技師は、PET-CTの経験がない技師ばかりであったため、操作性に優れ、かつ管理しやすい機種の導入を希望しました。
導入装置 Omni Legend 16の特長
Omni Legend の大きな特徴としては、半導体SiPMと4.1mm×4.1mm×30mmでカッティングされたBGOシンチレーターで構成されたdigital BGO (dBGO) 検出器です。デザインを一新することで超高感度、高分解能を実現しました。デバイスレス呼吸同期のAdvanced MotionFreeは自動かつ外部呼吸監視システム無しで動作し、あらゆる状態の被検者に対して呼吸による画質劣化の抑制に有効です。ディープラーニングを使用したDLカメラは、体厚中心の特定、サイドモニターでのSI方向のスキャン範囲の選択が行え、ポジショニングにかかる時間は軽減されました。毎日のQCに使う線源は、表示付き認証機器を選択でき、取扱主任者の選任が不要、予防規定が不要、記帳が不要、線量・被ばくの測定が不要、教育訓練・健康診断が不要など、当院のように、新規にPETを導入する場合へのハードルを下げる要素としては大きいと感じました。さらに交換周期も長いため、ランニングコストが抑えられます。
図 2 dBGO検出器の高空間分解能について
体軸方向視野 16cmでのアミロイドPET検査
当院は導入当初から、PET-CTの運用の中心はアミロイドPETになることが予想されていました。そのため、16 cmの体軸方向視野でアミロイドPET撮影時、全脳をカバーできるのかを心配する声が上がっていました。技師からは、特にポジショニング時の顎が上がってしまう被検者に対する撮影範囲の心配がありました。しかし、32cmはコスト面で候補には入りませんでした。実際に運用が開始され、1年以上が経過し104症例の撮影を行いましたが、その中で顎が上がった症例は4症例あり、結果は図3に示す通り全脳が撮影範囲に入らない症例はありませんでした。これはアミロイドPETのポジショニングの際、手動ではなく、DLカメラを用いることで、中心を捉えた正確なポジショニングができていることが要因だと考えております。簡便かつ正確なポジショニングができるDLカメラのおかげで16cmであっても余裕をもって検査を行えております。
図 3 体軸方向視野16cmにおける撮影範囲
アミロイドPET
2024年4月のPET-CT導入から2025年7月18日までに104件のアミロイドPETを実施し、2024年7月にはアミロイドPETの施設認証も取得することができました。
検査の当日はまず外来でバイタルの測定を行い、RI検査室で簡単な検査説明をし、薬剤投与となります。投与後は、90分待機し20分撮影、撮影後帰宅となり、検査結果の説明は後日という流れになります。
薬剤は日本メジフィジックス株式会社のビザミルを使用しております。
図 4 アミロイドPET 検査の流れ
上述した通り、当初心配された体軸方向視野16cmの撮影範囲も、今のところ全脳が撮影範囲に入らないといった症例はなく検査が行えています。ポジショニング時は、DLカメラを用いることでポジショニングにかかる時間の低減を図ることが出来ます。
画像再構成にはQ.Clearを用いておりますが、問題無く撮像認証を取得、高画質な画像を診療科へ提供できていると感じます。
図 5 アミロイドPET 症例
撮影後はPET脳検査統計解析用ソフトであるCortexID Suiteを使用し、画像を提供しています。
CortexID Suiteの特徴として、ノーマルデータとの比較、橋を基準とした自動濃度合わせ機能、MRIとの自動Fusion機能、レポート形式出力機能など、とても便利なツールです。読影困難なボーダーライン症例において、ノーマルデータベースと比較することで、視覚的評価による判断の有効な補助ツールとして使用しております。
図 6 CortexID Suite 症例
FDG-PET
FDG-PETではアミロイドPETに比べ、よりOmni Legend の超高感度・高分解能を実感しました。図7の画像は身長180cm、体重100kg、BMI30.9、当院で撮影した最も体格が大きな方です。試験的に撮像時間120sec/ベッドで8ベッド、Advanced MotionFree (AMF) 、Q Clear (β値 一定)、Precision DL High (PDL-H) を適用して撮影を行い、撮影後90sec、60secでの再構成をした画像になります。AMFにより呼吸性アーチファクトが抑えられており、60sec/ベッドの画像で十分な画質が得られています。当院では、検査時間枠などを考慮し90sec/ベッドを採用し検査を行っております。当院の様に体勢の保持が難しく、少しでも早く撮影を終えたい患者様が多い病院では、高感度システムによる高速撮影がオプションとして使用できることは非常に重宝しています。
図 7 FDG-PET症例(高BMI被検者においても短時間で高画質が得られている)
最後に
Omni Legendは、半導体SiPMとカッティングデザインを一新したBGOシンチレーターを組み合わせたdigital BGO (dBGO) 検出器により、超高感度・高空間分解能を実現した装置です。特に空間分解能の高さはアミロイドPET、FDG-PETにおいて微細な変化を捉え、診断能向上に寄与していると考えています。さらに、アミロイドPET検査においては、DLカメラを用いることで簡便かつ正確なポジショニングを実現し、16cmの体軸方向視野であっても余裕をもって検査ができます。またDLカメラでの短時間のポジショニングと、Omni Legendの短時間撮像が相まってワークフローが向上、患者様および技師にとって優しい検査を行うことができております。
今後も患者様により質の高い画像検査が提供できるように業務に取り組んでいきたいと思います。