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 核医学検査装置 お客様の声
 速報3! CZT半導体検出機搭載全身用SPECT/CT装置 臨床画像紹介 ~頭部・心臓編~

 

埼玉医科大学病院 中央放射線部
高橋 将史 様

 

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過去2回にわたって、Discovery NM/CT 670 CZT(以下D670 CZT)の魅力についてお伝えしてまいりましたが、第3回目となる今回は、頭部と心臓領域の臨床画像をご紹介したいと思います。

当院は、主に神経内科の依頼による脳血流SPECTの依頼が多く、昨年度の実績で年間 800件ほどの検査を施行しています。近年は認知症患者の増加に伴って脳血流SPECTの重要性も高まっており、局所脳血流の評価を行う上でSPECTの画質は重要な要素であると考えます。
第1回目のCZT速報記事(http://landing1.gehealthcare.com/201708_voice_img_mi_01.html)でもご紹介したように、D670 CZTの大きな特徴の1つに、ブレインリーチの短さが挙げられます。Detector frameと呼ばれる、検出器外周部のデッドスペース(特に寝台側)が従来のNaIタイプの装置に比べて7.5㎝から2.5cmへと大幅に小さくなっており、頭部の撮像を行う際に肩まで入れる必要がなくなったため、回転半径を小さくすることが可能です。(図1:頭部撮像の様子)当院で施行した頭部領域の撮像67例で回転半径を集計してみたところ、最小値で11.9cm、平均値で13.4cmという結果でした。(図2:ブレインリーチ集計結果グラフ)

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図1:頭部撮像の様子   図2:ブレインリーチ集計結果グラフ

当院従来機種にて小脳まで十分含めて撮像しようとすると回転半径は17~18cmがほぼ限界であり、その差は歴然です。この回転半径の小ささが空間分解能の向上に大きく貢献し、約6%というエネルギー分解能の高さと相まって、コントラストの高い良好な画質が得られています。(図3:脳血流SPECTの画像3断面)

図3:脳血流SPECTの画像3断  ※各画像クリックで拡大します
Axial Coronal Sagittal

さらに、99mTcラインソースを使用した実験によっても、回転半径が分解能に寄与することがよくわかります。回転半径10~15cmにおけるFWHMで3~4mm程度(Evolution使用、post-filterなし)と非常に高い空間分解能が得られています。(図4:FWHMのグラフ)

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また、当院では線条体ドーパミントランスポータの撮像も多く行っています。線条体イメージングにおいては、評価対象となる領域が小さいため、空間分解能の高さが重要と考えます。臨床画像を示します。(図5:Datscanの画像3断面)高分解能な画像が得られており、また線条体解析ソフトウェアDatQUANTを併用することで、VOI設定のばらつきも抑えられるため、より診断精度の向上に繋がると思われます。(図6:DatQUANTの解析結果)

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図5:Datscan Transaxial画像
※画像クリックで拡大します
  図6:DatQUANTの解析結果

つまり、この装置は頭部領域の撮像において、大きなアドバンテージがあると言えます。今後は、リストモードによる解析を行い、撮像時間がどこまで短縮可能であるか検討を進めていきたいと考えています。また、D670 CZTの高いエネルギー分解能を活かし、従来の装置では不可能であった「脳血流+線条体」のような99mTcと123Iの2核種同時収集が実現できるか現在検討を進めています。これが実現すれば、1度の来院で2種類の検査が可能となり、患者サービスの向上に資するものと期待されます。
続いて、心臓領域についてご紹介します。当院における心筋シンチは、主に神経内科の依頼によるパーキンソン病などの診断を目的とした交感神経シンチが約8割を占めています。血流シンチについては、近隣の関連病院である国際医療センターに心臓病センターが設置されている関係で、当院ではあまり行われていません。
交感神経シンチの現在のプロトコールを以下に示します。(図7:交感神経シンチの現在のプロトコール)Planar像は現在5分間の撮像ですが、これをどこまで短縮してもH/M比が担保されるか現在検討を進めています。

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図7:心筋交感神経シンチの現在のプロトコールと今後の可能性

またSPECTに関しては10分の撮像時間ですが、血流シンチに匹敵する良好な画質が得られています。(図9:心筋交感神経のSPECT画像)心臓専用の半導体カメラにおいてはPlanar像の撮像は不可能なため、D670 CZTは半導体搭載機でPlanar像を撮像してH/M比を算出できる唯一の装置であると言えます。

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図8:心筋交感神経のSPECT画像 ※画像クリックで拡大します

また、血流シンチについては、以下のようなプロトコールで行っています。(図10:血流シンチの現在のプロトコール)

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図9:血流シンチの現在のプロトコール

安静時の臨床画像を以下に示します。(図11、図12:血流シンチの画像)リストモードによる解析を行い撮像時間を変化させて検証しました。この画像では分かりづらいかもしれませんが、nonGATEの定性画像を見る限りでは、現在の撮像時間の1/4(2分)程度まで短縮しても、見え方に大きな違いはありませんでした。詳細な検討はまだこれからですが、2~3分まで短縮可能との文献がある心臓専用機[1]に匹敵する短時間撮像の可能性を示唆するものであります。心臓領域の検査は両手挙上の状態で撮像を行うため、患者さんの苦痛を軽減させるためにも撮像時間の短縮は大きな意義があると思います。先に記したような理由から症例数はあまり多く集めることはできませんが、今後も更なる検討を進めて行きたいと考えています。

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図10:収集時間別心筋血流シンチの画像 ※画像クリックで拡大します
 
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図11:収集時間別心筋血流シンチ Polar Map画像 ※画像クリックで拡大します

半導体装置における心筋SPECTはDiscovery NM530cのような心臓専用機が先行しており、専用機ならではの有用性が多数報告されていますが、汎用性がないというのが弱点です。それに対してD670 CZTは全身の撮像に対応していますので、心臓専用機とほぼ同等の画質が得られる上、他の検査も行うことができます。当院のような比較的心筋血流シンチの少ない施設においても装置をフルに稼動させることで、より高効率な運用を図ることが可能です。
また、頭部の項でも触れたように、99mTcと123Iの2核種同時収集が実現すれば、201Tlの代わりに99mTcを使用した「血流+脂肪酸代謝」のような検査も実現可能となり、当院において今後検討を進めていく予定となっています。

以上、今回は頭部と心臓領域の臨床画像をご紹介しました。D670 CZTの魅力が皆様に伝われば幸いです。
連載としては今回で終了となりますが、また機会があれば情報をお届けしたいと思っています。最後までご覧頂き、ありがとうございました。

 

 

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参考文献

  • [1] Bernhard A. Herzog , et al. J Nucl Med. 2010 Jan;51(1):46-51