埼玉医科大学病院 中央放射線部 高橋 将史 様 |
過去2回にわたって、Discovery NM/CT 670 CZT(以下D670 CZT)の魅力についてお伝えしてまいりましたが、第3回目となる今回は、頭部と心臓領域の臨床画像をご紹介したいと思います。 当院は、主に神経内科の依頼による脳血流SPECTの依頼が多く、昨年度の実績で年間 800件ほどの検査を施行しています。近年は認知症患者の増加に伴って脳血流SPECTの重要性も高まっており、局所脳血流の評価を行う上でSPECTの画質は重要な要素であると考えます。
当院従来機種にて小脳まで十分含めて撮像しようとすると回転半径は17~18cmがほぼ限界であり、その差は歴然です。この回転半径の小ささが空間分解能の向上に大きく貢献し、約6%というエネルギー分解能の高さと相まって、コントラストの高い良好な画質が得られています。(図3:脳血流SPECTの画像3断面)
さらに、99mTcラインソースを使用した実験によっても、回転半径が分解能に寄与することがよくわかります。回転半径10~15cmにおけるFWHMで3~4mm程度(Evolution使用、post-filterなし)と非常に高い空間分解能が得られています。(図4:FWHMのグラフ) また、当院では線条体ドーパミントランスポータの撮像も多く行っています。線条体イメージングにおいては、評価対象となる領域が小さいため、空間分解能の高さが重要と考えます。臨床画像を示します。(図5:Datscanの画像3断面)高分解能な画像が得られており、また線条体解析ソフトウェアDatQUANTを併用することで、VOI設定のばらつきも抑えられるため、より診断精度の向上に繋がると思われます。(図6:DatQUANTの解析結果)
つまり、この装置は頭部領域の撮像において、大きなアドバンテージがあると言えます。今後は、リストモードによる解析を行い、撮像時間がどこまで短縮可能であるか検討を進めていきたいと考えています。また、D670 CZTの高いエネルギー分解能を活かし、従来の装置では不可能であった「脳血流+線条体」のような99mTcと123Iの2核種同時収集が実現できるか現在検討を進めています。これが実現すれば、1度の来院で2種類の検査が可能となり、患者サービスの向上に資するものと期待されます。
またSPECTに関しては10分の撮像時間ですが、血流シンチに匹敵する良好な画質が得られています。(図9:心筋交感神経のSPECT画像)心臓専用の半導体カメラにおいてはPlanar像の撮像は不可能なため、D670 CZTは半導体搭載機でPlanar像を撮像してH/M比を算出できる唯一の装置であると言えます。
また、血流シンチについては、以下のようなプロトコールで行っています。(図10:血流シンチの現在のプロトコール)
安静時の臨床画像を以下に示します。(図11、図12:血流シンチの画像)リストモードによる解析を行い撮像時間を変化させて検証しました。この画像では分かりづらいかもしれませんが、nonGATEの定性画像を見る限りでは、現在の撮像時間の1/4(2分)程度まで短縮しても、見え方に大きな違いはありませんでした。詳細な検討はまだこれからですが、2~3分まで短縮可能との文献がある心臓専用機[1]に匹敵する短時間撮像の可能性を示唆するものであります。心臓領域の検査は両手挙上の状態で撮像を行うため、患者さんの苦痛を軽減させるためにも撮像時間の短縮は大きな意義があると思います。先に記したような理由から症例数はあまり多く集めることはできませんが、今後も更なる検討を進めて行きたいと考えています。
半導体装置における心筋SPECTはDiscovery NM530cのような心臓専用機が先行しており、専用機ならではの有用性が多数報告されていますが、汎用性がないというのが弱点です。それに対してD670 CZTは全身の撮像に対応していますので、心臓専用機とほぼ同等の画質が得られる上、他の検査も行うことができます。当院のような比較的心筋血流シンチの少ない施設においても装置をフルに稼動させることで、より高効率な運用を図ることが可能です。 以上、今回は頭部と心臓領域の臨床画像をご紹介しました。D670 CZTの魅力が皆様に伝われば幸いです。
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